9月1日で関東大震災から100年。堅山南風《大震災実写図巻》を紹介【半蔵門ミュージアム】

公開日:2023年8月31日 
最終更新日:2023年9月8日

堅山南風《大震災実写図巻》と 近代の画家 大観・玉堂・青邨・蓬春/半蔵門ミュージアム

半蔵門ミュージアムにて、堅山南風《大震災実写図巻》を紹介する展覧会が開催中です。

2023年は、関東大震災から100年にあたる年です。

そこで、半蔵門ミュージアムでは堅山南風が描きとめた《大震災実写図巻》を展示。2018年に開館以来、2度目の展示となります。

震災のようすを克明に描いた全3巻の《大震災実写図巻》

関東大震災が起こったのは、今から100年前、1923年9月1日昼頃のこと。

南風は、震災当時は巣鴨にある自宅にいたそうです。師匠である横山大観の身を案じた南風は、地震が落ち着くと、大観の自宅がある池之端(上野)に向かいます。

被害の大きかった都内下町地域を中心に、南風が道中で見たこと、聞いたことなどを元に本作は制作されました。


堅山南風《大震災実写図巻》 上巻 大地震 大正14(1925)年 ©Hisako Katayama 2023/JAA2300072 半蔵門ミュージアム蔵

上中下の全3巻はそれぞれ「震災直後のようす」「人びとが助け合うようす」「街が復興していくようす」といった大枠で描かれています。

1923年が震災発生年、本作の完成はその2年後でした。

震災直後に建物や道が壊れ人びとが混乱するようすからは、当時の被害や危機迫る状況がうかがえます。

図巻をじっくり見ると、洋服と和服を着ている人がいます。当時の人びとの生活・風俗などにも注目してみてくださいね。

逃げ惑う人や食べるものを探す人、別れを惜しむ人など・・・本作からは、こうした緊急時に助け合う人もいれば、争う人もいる、という事実を感じ取ることができます。

今でも親しみのあるあの方も描かれています

図巻を見ていくと・・・現在でも上野公園に建つ、西郷隆盛像が!


堅山南風《大震災実写図巻》中巻 貼札ヲ着タ銅像 大正14(1925)年 ©Hisako Katayama 2023/JAA2300072 半蔵門ミュージアム蔵

携帯電話などが無く、また小学校への避難などのインフラも整っていなかった時代、はぐれた人びとが集う場所だったのでしょうか。

像の下部分には尋ね人の貼り紙や看板を見ることができます。


堅山南風《大震災実写図巻》下巻 大悲乃力 大正14(1925)年 ©Hisako Katayama 2023/JAA2300072 半蔵門ミュージアム蔵

下巻の最後には、観音菩薩が描かれています。

被害の大きかった上野・浅草エリアですが、浅草寺だけは無事だったそう。煙に巻かれながらも堂々と建つ浅草寺も本作に描かれています。こちらはパネル展示で観ることができます。

南風は、本作に「この震災を描くにあたり、なかなか筆は進まなかったが、観音菩薩のおかげで完成させることができた。」という旨の序文を残しています。

ありがたい観音菩薩もじっくり鑑賞してみてくださいね。

関連展示では同時代を生きた画家の作品を展示

本展では、関連展示として同時代を生きた画家の作品を6作品紹介。

9月10日まで、南風の師匠である横山大観の《霊峰不二》も鑑賞できます。


横山大観《霊峰不二》昭和14(1939)年 半蔵門ミュージアム蔵

後期の入れ替えも含めて、関連展示は全て初公開だそう。

ガラスケースに入っていないので、日本画の岩絵具独特のきらめきを肉眼で、近くで見ることができます。保存状態も大変良いので、この機会を是非お見逃しなく。

常設展示では、もちろん半蔵門ミュージアムを象徴する《大日如来像》も展示中。


大日如来坐像 重要文化財 鎌倉時代 建久4(1193)年か 運慶作と推定されている金剛界大日如来像

今年は「関東大震災」に関するテーマをさまざまな美術館で見かけます。

こうした日本画や、史料、写真、版画などいたる分野の人びとがこの震災のようすを残していることを知ると、関東大震災の被害の大きさ、そして教訓を感じられます。

静かな空間で、震災という苦しいテーマではありますが、当時のようすに少しでも関心を寄せてみてはいかがでしょうか。

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