特別展「帰って来た橋本治展」/神奈川近代文学館

マルチな才能を持った作家・橋本治の生涯を辿る展覧会【神奈川近代文学館】

2024年4月25日


会場風景

神奈川近代文学館(横浜・山手 港の見える丘公園内)にて、特別展「帰って来た橋本治展」が、2024年6月2日まで開催中です。

イラストレーター、小説・評論・戯曲・エッセイなどの文筆業のほか、なんと編み物まで!多彩な創作活動を行ってきた橋本治(1948-2019)

本展では、2019年以降に遺族友人、編集者から神奈川近代文学館へ寄贈された「橋本治文庫」の資料を中心に、作家の生涯を辿ります。

「本当にひとりの作家がこれらを生み出したの!?」そう思うほど、多種多様な作品が並ぶ本展の見どころを紹介していきます。

イラストから文筆業、編み物まで。
多彩な才能を持つ橋本治

橋本治は、終戦間もない1948年、東京・杉並区の商家の家に生まれました。

彼の名を世に広めたのは、「第19回駒場祭ポスター」です。
本展では、その原画を展示しています。


第19回駒場祭ポスター原画 1968年11月23、24日開催 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫資料

東京大学の学園祭のポスターとして20近い応募の中から選ばれたという本作。
制作当時、橋本治は東京大学2年生でした。

当時の東大は「学生闘争」真っ只中。
そんな中で、任侠映画のイメージしたような印象深いデザインが大きな注目を浴び、橋本治の名は一躍全国へと広がりました。

「とめてくれるなおっかさん……」というキャッチコピーを、60代以上の方に聞いてみると「知っている!」となるかもしれません。


(右)母が営んだ喫茶店のメニュー 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫資料

右のポスターに注目。遠目から見ると、幾何学模様が描かれているようですね。
よく見ると模様ではなく、「コーヒー120」や「スパゲッティ200」などの文字が書かれています。

本作は、母が実家の一部を改装して開いた喫茶店のメニュー表なのだとか。

学生時代にイラストの才能を開花させた橋本治。
本展では、イラストレーターとして活躍していた時期の作品も多く展示されています。


会場風景

『桃尻娘』の作品世界を体感!


(左)「桃尻娘」「Gen」1977年12月/(右)編集後記(部分)「Gen」1977年12月 いずれも、神奈川近代文学館蔵

橋本治は、1977年に4人の高校生の日常を描いた小説『桃尻娘』で作家デビューを果たします。

『桃尻娘』シリーズは、女子高生の話し言葉で、若者が日ごろから抱える社会への不満や悩みに切り込み、それまでにないスタイルと内容で世間に衝撃を与えた作品です。

6巻に及ぶシリーズ最終章の舞台は、神奈川近代文学館が建つ横浜・港の見える丘公園なのだそう。
本展では、『桃尻娘』最終章の登場人物が歩いたマップを展示室内で配布しています。

鑑賞後はマップを手に、周辺を散策してみては?作品をより深く知ることができるかもしれませんよ。

「橋本治文庫」から見る
作家としての仕事

『桃尻娘』で作家デビュー以降、橋本治は文筆業に専念します。

もともと、歌舞伎をはじめとする伝統芸能に興味があった橋本治。
「『桃尻娘』の作家」から脱却すべく、試行錯誤を重ねながら、評論や古典などの多様な主題に挑むようになります。


会場風景

原稿は手書きで書き、創作メモはワープロで作成したのだそう。
本展では、驚きの量の手書き原稿を展示しています。


『双調 平家物語』原稿 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫資料

原稿のタイトル文字にも注目。それぞれの作品世界を体現したようなデザインで書かれています。
こうした細かなこだわりから、イラストレーターとしての橋本治の姿が見えてくるようです。

 

橋本治の創作の軌跡を紹介する、特別展「帰って来た橋本治展」。

展示室内には、橋本治の仕事場のイメージ展示もあります。


橋本治 仕事場 イメージ展示

担当編集者も無断で入室できない空間だったという、橋本治の仕事場。
多趣味な彼らしい、賑やかな空間もぜひ楽しんでみてください。


橋本 文 岡田嘉夫 絵『マルメロ草紙』校正刷

5月25日には、神奈川近代文学館 展示館2階ホールにて、記録映像上映会があります。

上映会では、展示室でも紹介されている豪華本『マルメロ草紙』の誕生の軌跡を紹介。
記念映像のダイジェスト版は、会場ロビーで上映されていますよ。

興味のある方は詳細を、神奈川近代文学館 公式サイトをご確認ください。

Exhibition Information

展覧会名
特別展「帰って来た橋本治展」
開催期間
2024年3月30日~6月2日 終了しました
会場
神奈川近代文学館 第2・3展示室
公式サイト
https://www.kanabun.or.jp/