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2024年11月1日
特別展「帰って来た橋本治展」/神奈川近代文学館
会場風景
神奈川近代文学館(横浜・山手 港の見える丘公園内)にて、特別展「帰って来た橋本治展」が、2024年6月2日まで開催中です。
イラストレーター、小説・評論・戯曲・エッセイなどの文筆業のほか、なんと編み物まで!多彩な創作活動を行ってきた橋本治(1948-2019)。
本展では、2019年以降に遺族友人、編集者から神奈川近代文学館へ寄贈された「橋本治文庫」の資料を中心に、作家の生涯を辿ります。
「本当にひとりの作家がこれらを生み出したの!?」そう思うほど、多種多様な作品が並ぶ本展の見どころを紹介していきます。
橋本治は、終戦間もない1948年、東京・杉並区の商家の家に生まれました。
彼の名を世に広めたのは、「第19回駒場祭ポスター」です。
本展では、その原画を展示しています。
第19回駒場祭ポスター原画 1968年11月23、24日開催 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫資料
東京大学の学園祭のポスターとして20近い応募の中から選ばれたという本作。
制作当時、橋本治は東京大学2年生でした。
当時の東大は「学生闘争」真っ只中。
そんな中で、任侠映画のイメージしたような印象深いデザインが大きな注目を浴び、橋本治の名は一躍全国へと広がりました。
「とめてくれるなおっかさん……」というキャッチコピーを、60代以上の方に聞いてみると「知っている!」となるかもしれません。
(右)母が営んだ喫茶店のメニュー 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫資料
右のポスターに注目。遠目から見ると、幾何学模様が描かれているようですね。
よく見ると模様ではなく、「コーヒー120」や「スパゲッティ200」などの文字が書かれています。
本作は、母が実家の一部を改装して開いた喫茶店のメニュー表なのだとか。
学生時代にイラストの才能を開花させた橋本治。
本展では、イラストレーターとして活躍していた時期の作品も多く展示されています。
会場風景
(左)「桃尻娘」「Gen」1977年12月/(右)編集後記(部分)「Gen」1977年12月 いずれも、神奈川近代文学館蔵
橋本治は、1977年に4人の高校生の日常を描いた小説『桃尻娘』で作家デビューを果たします。
『桃尻娘』シリーズは、女子高生の話し言葉で、若者が日ごろから抱える社会への不満や悩みに切り込み、それまでにないスタイルと内容で世間に衝撃を与えた作品です。
6巻に及ぶシリーズ最終章の舞台は、神奈川近代文学館が建つ横浜・港の見える丘公園なのだそう。
本展では、『桃尻娘』最終章の登場人物が歩いたマップを展示室内で配布しています。
鑑賞後はマップを手に、周辺を散策してみては?作品をより深く知ることができるかもしれませんよ。
『桃尻娘』で作家デビュー以降、橋本治は文筆業に専念します。
もともと、歌舞伎をはじめとする伝統芸能に興味があった橋本治。
「『桃尻娘』の作家」から脱却すべく、試行錯誤を重ねながら、評論や古典などの多様な主題に挑むようになります。
会場風景
原稿は手書きで書き、創作メモはワープロで作成したのだそう。
本展では、驚きの量の手書き原稿を展示しています。
『双調 平家物語』原稿 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫資料
原稿のタイトル文字にも注目。それぞれの作品世界を体現したようなデザインで書かれています。
こうした細かなこだわりから、イラストレーターとしての橋本治の姿が見えてくるようです。
橋本治の創作の軌跡を紹介する、特別展「帰って来た橋本治展」。
展示室内には、橋本治の仕事場のイメージ展示もあります。
橋本治 仕事場 イメージ展示
担当編集者も無断で入室できない空間だったという、橋本治の仕事場。
多趣味な彼らしい、賑やかな空間もぜひ楽しんでみてください。
橋本 文 岡田嘉夫 絵『マルメロ草紙』校正刷
5月25日には、神奈川近代文学館 展示館2階ホールにて、記録映像上映会があります。
上映会では、展示室でも紹介されている豪華本『マルメロ草紙』の誕生の軌跡を紹介。
記念映像のダイジェスト版は、会場ロビーで上映されていますよ。
興味のある方は詳細を、神奈川近代文学館 公式サイトをご確認ください。