風刺画/10分でわかるアート
2023年3月29日
蜷川実花展 with EiM:彼岸の光、此岸の影/京都市京セラ美術館
京都市京セラ美術館にて、「蜷川実花展 with EiM:彼岸の光、此岸の影」が3月30日(日)まで開催中です。
蜷川実花が、クリエイティブチームEiMとともに手がける、関西では過去最大規模の全10話におよぶ没入型”絵巻体験”の展覧会。
京都の歴史を感じながら、鑑賞者が作品の中に入り込み、自分自身を見つめる旅へと誘います。
EiMとは、写真家・映画監督の蜷川実花、データサイエンティストの宮⽥裕章、セットデザイナーのENZO、クリエイティブディレクターの桑名功、照明監督の上野甲子朗らで結成されたクリエイティブチームのこと。
プロジェクトごとに多様なチームを編成しながら活動しています。
蜷川実花はEiMというチームで展覧会を手がけることに対して「1人の時と違い色んな視点が入ってくる。今までと違うものが生まれてくるし、チームで作る面白さを感じている」と語っていました。
京都市京セラ美術館は、公立美術館建築としては日本に現存する最古の美術館です。
本展開催にあたって、蜷川実花は同館ではどういうことができるか?京都で開催する意味などを考え開催に挑んだそう。
蜷川実花withEiMと同館キュレーターの高橋さんは、夏の暑い時期に京都をぐるっと回ったのだとか。
京都にきて感じたこと、京都の歴史、京都のどこか異界につながるような感覚、それらの相反するものがゆらめきながら重なる瞬間が、今回の京都展で表現されています。
入口入ってすぐの展示は”Breathing of Lives”。
この展示では、現実世界から異世界に入っていく感覚が味わえます。
部屋の中心部にかかる赤いネオンライトに”Breathing of Lives”の文字が光り、その前方に広がる水槽には花や蝶、京都特有の風景などが投影されています。
揺らめく水面が生み出す幻想的な光景と、日常の風景が重なりあい、どこか懐かしさや儚さを感じる空間です。
続いての展示は先ほどの空間から一変します。
壁一面にコラージュされた彼岸花の写真に、4000本以上の彼岸花が咲き乱れる”真っ赤に染まった空間”が広がります。
刻一刻と変わるライトに照らされた彼岸花の中を進み、ここから一気に異世界に没入していきます。
5作品目の”Liberation and Obsession”では、モノクロで撮影された写真がコラージュされた壁に、派手なデコレーションで装飾された蜷川実花の色鮮やかな写真のアートが展示されています。
このインスタレーションは、アーティスト蜷川実花の内面から滲み出る感情の痕跡から生み出されたもの。
近づいて見ると、デザインの細部にまで蜷川実花のこだわりと熱い情熱を感じます。
ぜひ、一つひとつ、ゆっくりと鑑賞することをオススメします!
蜷川実花の情熱を感じる空間は他にもあります。
”Whispers of Light, Dreams of Color”は1,500本に及ぶクリスタルガーランドが織りなす光と色彩の空間。
子どもの頃に集めていたようなハートや星の形のクリスタル、目玉グミのようなパーツを使ったガーランドは、一つひとつ手作業で展示したといいます。
クリスタルを照らすライトの明暗で、同じ空間でも感じ方が変わってきます。
本展のハイライトとなる深淵を象った”深淵に宿る、彼岸の夢 Dreams of the Beyond in the Abyss”。
こちらは天地が抜ける空間と、その空間を内包する造花が咲き乱れる空間で構成されています。
さまざまな種類の花が咲き乱れている空間は、まるで天国や楽園といった第一印象を受けます。
ですがその時々によってかわるライトアップで、天国なのか地獄なのか、はたまた黄泉の国なのか・・・その時、その瞬間で鑑賞者によっても感じ方が変わる空間です。
花々の奥に見える奈落は4面がLEDディスプレイ、上下が鏡で構成されています。
高所恐怖症の私は、この奈落に入るのに思わず足がすくんだほど・・・。
天地が抜ける異空間の中で鑑賞者は落ちていくのか、登っていくのか、天国でも地獄でもないまさに黄泉の世界。ある種の臨死体験をしている気分になる空間です。
展覧会の最初と最後に通る”Liminal Pathway”は、現実と幻想の境界を体験するインスタレーションで、始まりは異界への序章を示し、終わりはそこで得た体験を再び現実へと紡ぎ直すための余韻の場です。
東山キューブのガラスに写された美しい花々のフィルムと、ガラス越しに見える普段と変わらぬ京都の街並み。終わりにLiminal Pathwayを通っていると、異世界から現実に帰ってきたように実感します。
本展を体感する前と後ではLiminal Pathwayは感じ方が変わる展示です。
本展では、蜷川実花による色鮮やかなオリジナリティ溢れるグッズの数々も見どころです。
ポストカードや靴下、ヘアアクセサリー、華やかで持ち運びやすいサーモボトル、BIGサイズのKIMOKUMA 3Dキーホルダーや、MIKA NINAGAWA チョコクランチなどさまざまな商品が販売されています。
蜷川実花展オリジナルグッズコーナー中でもオススメなのが、「御朱印帳」と「ネイルシール」。
京都市京セラ美術館のすぐ近くには「平安神宮」があります。京都の神社仏閣巡りのお供に、蜷川実花デザインの華やかな御朱印帳はいかがでしょうか。
オリジナルデザイン御朱印帳そしてネイルシールは他にはない蜷川実花のデザインを爪にまとい、日常のお洒落を楽しむことができます。
オリジナルデザインネイルシールさらにお土産には京都の老舗メーカーとコラボした京都ならではの商品も。
京都の人気土産、300 年以上続く八ッ橋の老舗「聖護院八ッ橋総本店」の京銘菓「聖護院 生八ツ橋」も展覧会オリジナルパッケージで販売されています。
本展と京都のお土産にぴったりの品で、とても美味しかったです。
本展を体験して、同じ京都の清水寺で「胎内めぐり」をした時のような、なんだか”生まれ変わったようなすっきりとした気持ち”になりました。
日々忙しく、いろいろな事がある昨今。異世界を感じる京都で、ゆっくりと10話の絵巻体験に没入し、自分自身の感情と向き合うことができる展覧会です。
何度足を運んでも、感じることは違うのではないでしょうか。皆さんもぜひ体験してみてください♪