わたしたちのびじゅつかん/奈良県立美術館

おしゃべりしながら美術鑑賞⁉「わたしたち」が主役の美術展【奈良県立美術館】

2025年8月4日

おしゃべりしながら美術鑑賞⁉「わたしたち」が主役の美術展【奈良県立美術館】

美術館外観

「体験する美術館」って何?頭上にハテナマークを浮かべながらやってきたのは奈良公園。

奈良県立美術館は、東大寺や興福寺に囲まれた奈良観光スポットのど真ん中にあります。

奈良ゆかりの作家をはじめ、鎌倉時代から江戸、近代〜現代の前衛アートまで網羅する幅広い収蔵と展示を誇ります。

子どもたちが気軽に楽しめる美術館に


会場看板

今回の展覧会は「コレクション展」ですが、ただ収蔵品を展示するだけのコレクション展ではありません。

「わたしたちのびじゅつかん」というひらがなタイトルが表すように、夏休み期間の子どもたちが気軽に美術館を楽しめるように考えられた展覧会なのです。


開会式 籔内佐斗司館長の挨拶

企画のきっかけとなったのは、これからの美術館について考えたこどもたちの意見。

自分たちが「体験できる」「主役になれる」「自分の作品を飾りたい」といった「自分たち」というキーワードから「わたしたちのびじゅつかん」というタイトルが生まれました。どんな体験ができるのか楽しみです。

色や形に注目 共通点を探せ!


展示風景(田中一光制作ポスター)

最初の展示室のテーマは「いろやかたちをみつけよう!」。

色や形に注目しながら二つの作品をじっくり比べて観ながら共通点を探し、それを言葉で表そうという試み。その作品をどう見るか、自分なりの見方・考え方をまとめることにつながります。

そういえば美術館に行っても、作品をぼーっと眺めながらひたすら作品の前を通り過ぎているだけのこともあるなあと反省・・・。


(左)久保晃《Composition 90G.1》1990年 (右)久保晃《Composition H92-7》1992年

先入観を持たずに作品を観てもらうために、この展覧会では作品横に解説文は掲示されていません。展示解説は、手持ちの端末にアプリをダウンロードすれば見ることができます。

ワークシートを活用 対話型鑑賞


対話型鑑賞<共通点を探せ!>ワークシート

考えがまとまったら、展示室の中央に用意されているワークシートに記入します。

気になる2つの作品を選んで共通点を書き出すワークシートにチャレンジ。テーブルの上に置いてある作品のシールから、比較したい作品2枚を選んでワークシートに貼ります。選ぶだけでも結構楽しい!

書き終わったシートは壁面の大きなホワイトボードに掲示されます。他の人がどんな絵を選んでどう見ているのかわかるのは興味深い体験です。

絵のまわりに座って観賞


田中敦子《90E》1985年

絵のまわりを囲むように並べられた座布団。

海外の美術館で、子どもたちが絵を囲んで床に座り、絵の説明を受けたり話し合ったりしているようすを見たことがありませんか?ここでは日本の美術館ではなかなかできない体験ができます。


会場風景

こうした対話型鑑賞のために、奈良県立美術館収蔵品から選び抜かれた見ごたえある作品がズラリ。バラエティ豊かで、コレクション展としても秀逸です。

ものがたりをつくろう!


絹谷幸二《チェスキーニ氏の肖像》1986年

次の展示室のテーマは「ものがたりをつくろう!」。

作品に何が描かれているか、どう感じるかを言葉にして自分なりの物語をつくっていきます。


対話型鑑賞《ものがたりをつくろう!》ワークシート

ここでも活躍するのはワークシート。

美術館で絵の前に立った時、「色がきれい」とか「迫力がある」などと何か考えてはいるのですが、観ているだけだとそれきりで終わってしまうことがほとんど。

でも「書く」という行為が入ると、自分の考えをまとめるために何度も作品を見返し、他の人に伝えようとする。

自分の言葉で書くことで、作品の見方が変わってくることに気づかされます。


(左)六條篤《らんぷの中の家族》1933年 (中央)桂ゆき《大きな木》1946年 (右)古沢岩美《壁》1950年

想像力をくすぐられるような作品が並んでいます。それぞれの作品を観ながら自由に物語を連想していくのは楽しい!

子ども・若者たちとつくる展覧会


トライ式高等学院西大寺キャンパスと共同制作した展覧会紹介動画

県内外の学校と連携して子ども・若者が制作した作品も展示されています。

会場入口の展覧会紹介動画は、トライ式高等学院西大寺キャンパスの生徒たちがワークショップで制作したもの。「自分たち」が主役。子どもたちと一緒に作り上げる展覧会です。


体験型アート展示風景

大阪芸術大学芸術学部アートサイエンス学科との連携展示では、美術館収蔵作品100選の作品や作家にインスピレーションを得てデジタルアートと融合した作品が並びます。

「見る」だけでなく「聴く」「体感する」など、五感を使ったアートの新しい楽しみ方が提示されます。

ワークショップで気軽にアートを楽しもう!


ワークショップ風景

会期中はさまざまな鑑賞プログラムやワークショップが開催されます。

こちらはオリジナルの櫛をデザインするワークショップ。櫛型に切り取られた台紙に色紙や色鉛筆を使って自由にデザイン。お子さんとお母さんが楽しそうに思い思いの「櫛」をつくっていました。

8月2日、3日にはワークショップが大集合するアート夏祭りも開催。

また、「アートの甲子園」に出品した市内の中学生の作品の展示など、子どもたちと一緒につくりあげる美術展。もちろん大人も楽しめます。嬉しいことに18歳未満入館料無料!

この夏、ひと味違った美術鑑賞をぜひお楽しみください。