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2024年11月1日
特別展「線表現の可能性」/国立国際美術館
大阪の国立国際美術館にて、特別展「線表現の可能性」が開催中です。
「芸術とは何か」を問うのと同じくらいに、線表現を理解するのは難しいもの。でも、だからこそ、「鑑賞する方の感覚で見てもらえたら」と本展を担当した安来正博研究員は語ります。
油彩画、版画、写真、彫刻など、幅広いジャンルの作品を通して、あなたは何を感じますか?
現代美術における線表現の多様性を紹介する本展。国立国際美術館のコレクションのなかから、版画・素描を中心に、絵画、彫刻、写真を加えた約150点の作品が展示されています。
直線、曲線、点線、波線と、線にはいろいろな種類があり、描く材料によってもその表現は変化します。
線描画は、かつては完成作のための習作や下絵として描かれていたそう。対象の形態を明確に「輪郭づける」ためのデッサンとしての役割を担ってきました。
その後、近代に入ると、線表現そのものに独立した価値が見いだされ、20世紀以降に誕生した抽象絵画では、線そのものが有している「造形性」に注目が集まるように。
1枚の絵が線を引くところからはじまるように、線は絵画の原点であると同時に、表現領域を拡大し続ける、古くて新しいテーマなのです。
そんな線表現の可能性を国立国際美術館の地下3階のフロア全体をつかって、コレクションましましで届けている本展。
線の用い方を、その性質ごとに4つの章に分けて紹介しています。
第1章は「線の動き、またはその痕跡」。
太い線、細い線、力強い線、繊細な線など、画家たちが線を引くときの手の動きに着目しています。「一体どんなふうに手を動かしてこの作品をつくり上げていったんだろう」と想像しながら鑑賞するおもしろさがあります!
第2章は「物語る線たち」。
かつてはデッサンとしての役割を果たしてきた線画が物語る、イメージの世界を見ていくのが本章。現実にはない「輪郭線」という存在に、描く対象がまだ現実に定着していない、なんだか不思議な気持ちを抱きました。
第3章は「直線による構成」。
直線によって構成された作品たちがずらり。1、2章で展示されていた人がフリーハンドで描いた作品とは違い、数学的、幾何学的な性格を持った線たちが集まっています。
第4章は「線と立体」。
二次元上の線は三次元へ。ここでは3人の彫刻家の「平面」と「立体」の仕事を対比的に紹介しながら、線表現のもうひとつの可能性について考えます。
「線表現」と聞くとなかなかイメージがつきにくいですが、幅広いジャンルの作品のぞれぞれにおける線表現を比較しながら鑑賞できるのが本展の最大の特徴です。
本展では、「線表現の可能性」としては全4章で完結しているのですが、実は最後にもうひとつ「2020年代の物故作家」の作品たちが展示されています。
コロナ禍からのこの5年間は、国立国際美術館が所蔵する中でも特に代表的な作品をつくり上げた作家たちがこの世を去った時期でもありました。
このタイミングで特集を組むことで、現代美術を振り返るいい機会になるのではと、本展の最後にコーナーを設けることを決めたそうです。
「線表現の可能性」とは独立したものだそうですが、1〜4章の線描画の鑑賞を経てから見ると、どの作品にも必ず線が存在していて、どこか本展とのつながりを感じられる最後でした。
日常生活の中では、あまり意識しない「線」という存在。
「絵の始まりである線を持って、この作家は何を描こうとしたのか?」「同じ“線”という切り口でも、時代や人によってこれほどまで違うのか」と、国立国際美術館の約150点にも及ぶコレクション作品を通して、じっくり線と向き合うことで、ここでしか得られない体験ができました。
最新の動向を知るのではなく、現在の視点から過去の作品を見る。国内外のさまざまな傾向の作品を「線」を通して経験できるめったいない機会を、ぜひお見逃しなく!