【特別展】桜 さくら SAKURA 2025/山種美術館

桜舞い散る美術館でお花見を【読者レビュー】

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2025年3月31日

こんにちは!
美術館巡りが趣味のかおりです。

暖かかったり寒かったりを繰り返している今日このごろ。
桜の季節までもう少しというところで、山種美術館で開催の「桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!―」展へうかがって、ひと足先に美術館で桜のお花見をしてきました。

外でのお花見も最高ですが、美術作品を通してのお花見もまた楽しいものでした。

美術館でのお花見のいいところは、いろんな場所の、いろんな時間帯の桜が、さまざまな画家の視点を通して一度に観られることです。

ではいってみましょう〜!

美術館でお花見を

入り口を入ってまず最初に現れるのはこちらの絵。

松岡 映丘《春光春衣》山種美術館

なんとも華やかなお花見の光景!気持ちがパッと明るくなります。

咲き誇る桜と、花見をたのしむ平安時代の貴族の女性たち。
あたたかい空気感や風に舞う花びらが目に浮かび、箏や笛などの音楽も聞こえてきそうです。

桜の花を愛でる気持ちは、平安時代から現代に続く、共通するもののようです。
これからの作品鑑賞への気持ちがぐんと高まります!

身近にある桜の光景

お花見会場で見る桜も綺麗。でも、家の近所でも、普段は意識しなかったのに、春になって花が咲いたときに、桜の木があったことに気づくなんてこともありませんか?

日常生活に溶け込む桜も素敵ですよね。続く作品は、そんな生活の中にある桜を描いた作品です。

川合 玉堂《渡所晩晴》山種美術館

こちらは山の渡場に花の咲いた桜の木がある光景です。緑の中にぱっとピンクの花がアクセントとなっていて目を惹きます。

この絵を見て、以前、田舎を走っている電車の車窓から、ぽっと咲いている桜の木を見つけたときのことを思い出しました。

公園などとちがい、山にある桜は何本もまとまっているのではなく、ぽつぽつと生えていることが多い気がします。

思いがけず桜に出会うと、なんだかうれしくなりますよね。

全国各地の桜の名所

もちろん、名所でみる桜も格別です。
京都は嵐山や醍醐、奈良の吉野、そして箱根など。

今回の美術展でも、全国各地の名所をもとにした作品が展示されていました。
私が惹かれたのは、次の作品。

(左から)奥田元宋《湖畔春耀》、橋本明治《桜(スケッチ)》、橋本明治《朝陽桜》 いずれも山種美術館

左の奥田元宋《湖畔春耀》は、青森の十和田、奥入瀬の山桜を取材した作品です。木々の葉や花のさまざまな色調が、ふわふわとした筆致で描かれています。

山全体の、冬から春に変わる木々のグラデーションが美しく幻想的に表現されており、間近で見てみるときらきらしていて、輝く空気感が感じられます。

右の橋本明治《朝陽桜》は、福島の三春の桜を写生して描かれた作品です。

絵のサイズが大きく、画面いっぱいに桜の花が描かれ、地も金泥で描かれているので、とても華やかで迫力があります。

この作品もぜひ会場で間近で見てほしいのですが、花びらに凹凸があるのがおもしろいです。満開に咲き誇る桜の美しさがドンと迫ってきます。

いずれもそれぞれの画家が惹かれた場所の桜が描かれており、いっそう魅力的に見えるのかもしれません。

画家の視点を通してさまざまに描かれる桜

ここまでの作品は、比較的風景の絵が多かったのですが、他にもさまざまな桜の絵を見ることができます。

ずらりと並ぶ桜が主題の作品の数々

なかでも個人的に好きな作品をいくつか紹介します。
日本画では、花といえば鳥、ということで、桜と雀の絵です。

渡辺 省亭《桜に雀》山種美術館

桜の細い枝に、小さな雀が3羽、ちゅんちゅんと集まっているのがかわいいです。

すずめが跳ねるのにあわせて、枝が揺れたりしている情景が思い浮かびます。

枝の伸びているようす、3羽のすずめの向きや、木の枝のグレーと雀の茶色、桜の濃いピンクと白の色合いが、落ち着いたなかにも気持ちを浮き立たせる桜の魅力を描き出しています。

菊池 芳文《花鳥十二ヶ月》山種美術館

同じく花と鳥が並んだ作品がこちら。
菊池芳文による花鳥十二ヶ月というシリーズのなかの、3月と4月の作品です。

3月が桜の花、4月にはキジが描かれています。
ひとつの作品に花と鳥がいる作品ではないのですが、花鳥が並ぶとやはりかわいくて華やかですよね。

物語のなかの桜

桜は、詩歌や物語に描かれることもあり、その題材を描いた作品もあります。

小林 古径《清姫 のうち「入相桜」》山種美術館

有名な「道成寺」の伝説にゆかりの桜「入相桜」を描いたものです。
作者の小林古径は、この「道成寺」の物語に着想を得て、自由に描いた作品のようです。

根元に花びらを散らしながら、白く咲き誇る満開の桜。
壮絶な悲恋を描いた道成寺の物語のラストを飾る入相桜に、小林古径はどのような想いをのせたのでしょうか。

夜桜見物も

最後に、夜桜をみることもできます。雰囲気があってよかったのが、こちら。

速水 御舟《あけぼの・春の宵 のうち「春の宵」》山種美術館

黒い背景に浮かび上がる白い桜の木がとても美しい作品です。

会場の、少し奥まった展示室で見ることができるので、より作品世界に没頭できます。

暗い夜に360度包まれるような、空間の広がりを感じながら、目の前の白く輝く桜に視線が吸い寄せられるような感覚になります。

ぜひしっとりと、幻想的な夜桜の景色を堪能してください。

桜鑑賞のあとも余韻に浸る

桜の作品鑑賞を終えた後に、忘れてはならないのが、お茶とお菓子。

山種美術館のミュージアムカフェ「Cafe椿」では、今回も「桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!―」展にあわせたオリジナル特製和菓子が販売されています。

展示されている作品をイメージした練り切りや羊羹は、やさしい味わい。

ふわりと口の中から鼻に抜ける香りを楽しみながら、まろやかなお茶とあわせて、美術展鑑賞の余韻に浸ってはいかがでしょうか。

美術館でゆっくりとお花見を

山種美術館「桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!―」展でのお花見、いかがだったでしょうか?

美術作品を通しての桜のお花見ということで、画家の思い入れや心象風景が反映された、情感たっぷりの鑑賞体験になったのではないでしょうか。

また、これだけ想いの込められた桜の作品が勢揃いすると、日本人にとっての桜への思い入れの強さを、改めて感じたりします。

そして、鑑賞するあなた自身の視点や気持ちの揺れ動きも大事にしながら、ぜひ山種美術館での桜鑑賞を楽しんでいただきたいです。

締めにお茶菓子もいただくと、お花見気分もいっそう盛り上がることまちがいなしです。

それでは愉しいアートライフを!

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