
ハプスブルク家/10分でわかるアート
2024年12月18日
帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち/泉屋博古館
虎卣 殷後期 泉屋博古館
泉屋博古館(京都市左京区)は開館65年目を迎えた2025年春、1年の改修工事を経て、リニューアルオープンしました。
4月26日からリニューアル記念名品展I「帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち」と、館内にある青銅器館で「中国青銅器の時代」が開催中です。
古くなった設備を刷新し、今まで以上に見やすく、美しさを感じる空間となっています。
青銅器館の入口。リニューアルを機に、サイネージも設置(写真右)
泉屋博古館の建物は、1970年の大阪で開催された日本万国博覧会で、世界各国の来賓をもてなす「迎賓館」として誕生しました。
建設から50余年が経ち、現代にふさわしい鑑賞空間にしようと改修工事を実施。大阪で万博が再び開催される2025年春、約1年ぶりに開館しました。
注目は青銅器館、通称ブロンズギャラリーで開催中の「中国青銅器の時代」です。
昭和モダン建築の魅力はそのままに、展示ケースや内装を新調。
世界最高峰の中国青銅器コレクションが並びますが、青銅器初心者でもその世界観にすっと入り込めるような展示構成になっています。
展示ケースの新調はもちろんのこと、写真手前のケースが一番高く、そこから広がるようにケースを配置。見せ方にもこだわりを感じます。
夔神鼓 殷後期 泉屋博古館
最初のエリアに展示されている「夔神鼓(きじんこ)」は、一本足の妖怪・夔(き)の皮を張った太鼓の青銅器。
中国ではワニ皮を張った太鼓の実物が出土しているそうですが、青銅器で作られたものはとても珍しいとのこと。
世界にたった2点のみという貴重な作品です。
青銅器は具体的な用途を持つものがある一方で、複雑で怪奇な造形をしたものが存在します。
そんな文様やモチーフに焦点を集めたエリアで展示されているのが、「虎卣(こゆう)」です。
虎卣 殷後期 泉屋博古館
一見大きな口を開けた虎が人を丸呑みするようですが、見方によっては人が自分から抱きついているようにも見えます。
この器が表す意味については諸説あるそうで、明確な答えはまだ得られていないそうです。
もちろん、中国青銅器について深く知りたい中級〜上級者も納得の充実した解説も掲示され、青銅器の世界にどっぷりと浸れる空間にもなっています。
泉屋博古館は住友家が集めた美術品を保存、研究、公開する美術館として1960年に設立しました。
京都と東京の2都市で住友コレクションの魅力を発信しています。
今回のリニューアルを記念して、前述の「中国青銅器の時代」と同時開催されているのが、リニューアル記念名品展Ⅰ「帰ってきた泉屋博古館いにしえの至宝たち」です。
日本・中国・朝鮮の美術工芸品を5つのキーワードに分けながら、重要文化財や今後注目を集めるかもしれない珍品なども展示されます。
木彫毘沙門天立像 鎌倉時代・13世紀 泉屋博古館
正面を見据えた静かな怒りの表情と、引き締まった体の量感表現で注目を集めた「毘沙門天立像」。
また、花鳥画家・沈銓(しんせん)の大作「雪中遊兎図」など、展示される作品のジャンルもさまざまです。
二条城行幸図屏風 江戸時代・17世紀 泉屋博古館
また、京都市指定文化財の「二条城行幸図屏風」も展示しています。
本作は全国の大名が集まり、天皇一家や公家を城まで導いた歴史的なパレードを描いたものです。
沿道で浮かれ騒ぐ民衆の姿も観ることができます。
さまざまな材質のハンコも並びます
さらに、手のひらに乗るような「小さきものたち」のエリアでは、喫煙具として使われた「鼻煙壺(びえんこ)」や判子の「翡翠印材」など、かわいいサイズ感の名品がずらり。
思わず展示ケースに顔を近づけて観たくなりますよ。
泉屋博古館入ってすぐの場所に新設されたミュージアムショップ
泉屋博古館待望のミュージアムショップがオープンしました。
大容量で二重底の「虎卣トートバッグ」(3,300円)や「金文エコバッグ」(1,500円)など、美術館オリジナルグッズの新作も登場しています。
作品それぞれの特徴を掴んだコラボグッズ
注目は、株式会社フェリシモのミュージアム部とのコラボグッズです。
「古代中国から立ちあがる戈卣(かゆう)クッション」(5,500円)や「キョロキョロ見回す姿が愛らしい鴟鴞尊ポーチ」(4,400円)など全4アイテム。
厳かな雰囲気漂う青銅器が、なんとも愛くるしい姿に!そのかわいらしい姿は、ぜひ実物で確かめてみてください。
世界の来賓を迎えるために建設されたというだけあって、館内外にはくつろぎの空間や日常を忘れさせるような景観がたくさん!
展示はもちろん、時間を忘れてうっとりとしてしまう風景も。
鑑賞の合間に休憩ができるスポット「饕餮(とうてつ)の間」。新緑の季節は美しい緑の風景、紅葉の季節には赤く色づいた景色を楽しめます。
そんな風景を余すことなく楽しめるのが「泉屋八景」。
館員おすすめ景観スポット8箇所を巡り、各スポットにあるカードを集めるという企画なのですが、これが想像以上に楽しい!
集めたカードは持ち帰ることもできるので、来館の記念にもおすすめです。
リニューアル記念名品展Iは6月8日まで。同時開催の「中国青銅器の時代」は8月17日まで。会期中、一部の作品は展示替えや場面替えが行われます。