
ハプスブルク家/10分でわかるアート
2024年12月18日
横尾忠則 連画の河/世田谷美術館
世田谷美術館にて、「横尾忠則 連画の河」が2025年6月22日(日)まで開催中です。
多彩な手法と様式、テーマで精力的に制作を続ける画家・横尾忠則(1936-)。
1972年のニューヨーク近代美術館での個展開催など、早くから国際的な知名度を得てきた作家です。
近年では、その息の長い驚異的な創造力が注目を集めています。
彼は、遠い昔に郷里の川辺で同級生たちと撮った記念写真のイメージを起点に、2023年春から「連歌」ならぬ「連画」の制作を始めました。
本展では、150号を中心とする新作油彩画約60点にスケッチ等も加え、88歳の横尾忠則の現在を紹介します。
本展の起点となったイメージは、1枚の記念写真です。
1970年に故郷の兵庫県西脇の川辺で、横尾が同級生たちとともに撮影した記念写真は、写真家の篠山紀信(1940-2024)が撮影したものでした。
横尾忠則《記憶の鎮魂歌》1994年 横尾忠則現代美術館
篠山の写真にインスピレーションを得て、1944年に《記憶の鎮魂歌》を描きました。
本展は、この大作《記憶の鎮魂歌》から約60点の新作で構成された横尾の「連画」をめぐる展覧会です。
絵画を制作するなかで、長らく望んできたことがあります。
それは、「一貫したアイデンティティから解放され、変幻自在な自己と出会い続けたい」ということ。
横尾はその願いを本展で「連画」という遊びのかたちで表現しています。
この「連画」は、横尾による造語。
他者の言葉を引き取りつつ歌を詠み、それをまた別の他者に託すという「連歌」を掛けたものです。
会場にならぶ新作群からは、画家が川の流れに身を任せるように、この問いをゆったりと楽しんだことが伝わってきます。
横尾忠則《ボッスの壺》2024年 作家蔵
驚異的な創造力を発揮し、数多くの大作を世に発表してきた横尾忠則。
古今東西の多様なイメージが見事な構成でコラージュされているところに作品の大きな魅力があります。
そして、それを一貫して支えているのは、自らの眼と手。つまり「肉体」をもって描くというシンプルな行為です。
「見て」「描く」。その行為を、気の遠くなるほどたくさん反復する。
身体のさまざまな能力が衰えるなかでも、横尾の反復は88歳の現在も淡々と続いています。
横尾のその日、その時の肉体からしか生まれてこない作品を、ぜひ間近でご覧ください。
新作油彩画約60点を中心に、横尾忠則の「今」を観る展覧会「横尾忠則 連画の河」。
会期中は、さまざまなイベントやプレゼント企画も楽しめます。
なかでもユニークな企画が「横尾忠則さんの気まぐれプレゼント」。
こちらは会期中、横尾忠則の気まぐれにより、ある日ある時の来場者5名に、「紙カミソリ×横尾忠則アーティストコラボレーションシリーズ(4本入)」をプレゼントするという企画です。
ふらりと思い立ったが吉日。世田谷美術館に行きたくなったら、それは横尾忠則からのお誘いかもしれません。
その他、会期中のイベント情報については、美術館公式サイトをご確認ください。