2022年3月8日

三菱一号館美術館で、上野リチのデザイン・ファンタジーの世界を堪能

上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展/三菱一号館美術館

ウィーン生まれ、京都で活躍したウィーン工房のデザイナー、フェリーツェ・リックス(後の上野リチ・リックス、1893-1967/以下、上野リチ)。

ウィーン工房のデザイナーとして活躍していたころ、京都出身の建築家・上野伊三郎と出会って結婚します。
その後、京都とウィーンを行き来し、テキスタイルを中心に生命力あふれる色彩と温かみのあるデザインの制作を続けました。

スフマート Sfumart 取材レポート 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展 三菱一号館美術館 デザイン テキスタイル

三菱一号館美術館では現在、上野リチのデザイン世界の全容を紹介する展覧会「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」が開催中です。

本展では、上野リチの大規模コレクションを所蔵するウィーン、ニューヨーク、そして京都から作品が集結し、ウィーンでの修業時代から京都での活躍まで、彼女の幅広い創作活動を紹介します。

※展覧会詳細はこちら

ウィーンと京都、2つの都市で活躍!上野リチとは

上野リチは1893年、ウィーンの裕福な実業家であるリックス家の四姉妹の長女として生まれました。

芸術に理解の深いリックス家で育ったリチは、国立のウィーン工芸学校に入学します。そこでは20世紀のデザインに大きな足跡を残した、ウィーン工房の設立者で建築家・デザイナーのヨーゼフ・ホフマンや、当時デザイナーとして活躍していたコロマン・モーザなどが教壇に立っていました。

そんな名だたる教師陣の講義により、リチは才能を開花させます。卒業後はホフマンのウィーン工房に入り、テキスタイルデザインなど手がけました。

草花や鳥などの動物、キャンディーなど身近なものをモチーフとし、それらを自由な線と鮮やかな色彩で組み合わせたデザインを特徴とするリチ。彼女のデザインはたちまち人気を博し、デザイナーとしての頭角を表します。

スフマート Sfumart 取材レポート 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展 三菱一号館美術館 デザイン テキスタイル

1925年、リチはパリで行われた現代産業装飾芸術国際博覧会(通称アール・デコ博覧会)に参加します。そこで彼女は、当時ウィーンに留学中で、ホフマンの下で働いていた京都出身の建築家・上野伊三郎と出会い、結婚しました。

伊三郎と結婚後、京都に生活の拠点を移したリチ。第二次世界大戦前は京都とウィーンを往復しながら活動し、また大戦中も伊三郎の設計した住居や店舗の内装を手がけるなど、幅広い制作を続けていました。

戦後は京都でデザイナーとして活躍するとともに、教育者として後進の指導にあたり、京都におけるデザイン教育に大きな足跡を残しました。

リチが考えるデザインの「ファンタジー」

大戦後の1951年、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)の工芸科図案専攻の講師となり、後進の育成に励んだリチ。その教育のなかで彼女は、デザインには「ファンタジー」が大切だと語っていました。

ファンタジーという言葉を聞くと、多くの人はおとぎ話や空想の世界を思い浮かべるかと思いますが・・・リチの母国語であるドイツ語で「ファンタジー」は、想像力という意味があります。

また、この言葉は古代ギリシャ語由来で「想像力」「出現」などを表し、さらに時代を下ると、「先を見通す」「光をあてる」という意味もあるのだそう!

そうした意味がこもった「ファンタジー」を大切にしたリチは、学生が制作する際、真似をしないようにとくり返し伝えていました。

本展のおすすめ作品を紹介

飴やチョコレートがおしゃべりしているようなデザインに注目!

スフマート Sfumart 取材レポート 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展 三菱一号館美術館 デザイン テキスタイル
上野リチ・リックス プリント服地デザイン:ボンボン(2) 1925-35年頃 京都国立近代美術館

リチのデザインの特徴である自由な描線は、製品化に向けてトレースするのが大変困難だったといいます。

定規を使わないおおらかな曲線と直線で、かわいらしいボンボン(あめやチョコレート)が描かれた本作は、トレースすることが難しいようすをよく伝える一作です。

暗い背景の上に描かれたカラフルなボンボンは、いまにも動き出しそうな明るいエネルギーに満ちています。

戦後の仕事の集大成ともいえる作品

スフマート Sfumart 取材レポート 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展 三菱一号館美術館 デザイン テキスタイル
上野リチ・リックス 日生劇場旧レストラン「アクトレス」壁画(部分) 1963年 京都市立芸術大学芸術資料館

建築家・村野藤吾に依頼され手がけた本壁画。日生劇場(東京・日比谷)の地下にあったレストラン「アクトレス」の室内装飾で、リチの戦後の仕事の集大成ともいわれています。

彼女は100坪の店内のために、壁と天井の壁画のデザイン画を描き、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)の4人の優秀な教え子を選出し、自身の指導のもとで製作させました。

店の改装に伴い2005年に撤去された「アクトレス」壁画。本展では、大切に保存されてきた壁画の一部を紹介します。

リチの“カワイイ”を詰め込んだ、展覧会オリジナルグッズ

ミュージアムショップ「Store 1894」では、上野リチ展のオリジナルグッズが販売中。思わずお財布のひもが緩むかわいらしいグッズが目白押しです。

スフマート Sfumart 取材レポート 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展 三菱一号館美術館 デザイン テキスタイル

なかでも注目の、本展限定のオリジナルトートバッグです。

スフマート Sfumart 取材レポート 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展 三菱一号館美術館 デザイン テキスタイル
オリジナルトートバッグ 5,200円(税込)

厚手のキャンバス生地に、リチがデザインした《ウィーン工房テキスタイル:クリムゾン》の絵柄をフルカラーでプリントされています。

このほかにも、ここでしか手に入らないリチのデザインをあしらったグッズを販売しています。

ミュージアムショップもお見逃しなく。

 

ウィーンと京都の2つの都市で活躍した女性デザイナー、上野リチの仕事の全容を紹介する本展。

リチが生み出した20世紀の新しいデザインは、現代の私たちが観ても心惹かれる新鮮さがあります。

時代を超えてもなお、強い生命力を持つリチの作品世界をぜひ展覧会でお楽しみください。

Exhibition Information

展覧会名
上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展
開催期間
2022年2月18日~5月15日 終了しました
会場
三菱一号館美術館
公式サイト
https://mimt.jp/lizzi/
注意事項

※展示替えあり
前期:2022年2月18日~4月10日
後期:4月13日~5月15日