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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
今回のアートな街歩きは、原宿から表参道、そして外苑前あたりまでを巡るコースです。
イギリスのターナー賞の受賞現代芸術家・アニッシュ・カプーアの個展、ピカソのセラミックを集めたミュージアム、岡本太郎のアトリエだった建物、そして、ワタリウム美術館の建物を使ったインスタレーションなど、道のりだけで1時間弱のコースとなってます。
表参道沿いにある黒い箱を重ねたような外観のGYRE(ジャイル)ビルは、ファッション、アート、食など多様なコンテンツを提供する複合施設です。
3階にある「GYRE GALLERY」で現在、開催されているのは、アニッシュ・カプーアの個展。カプーアは1954年インド生まれの彫刻家で、1970年代に英国へ渡り、美術を学びました。彼は国際的に高い評価を受けており、1990年のヴェニス・ビエンナーレ英国館での個展やターナー賞受賞など、多数の重要な展覧会に参加しています。
ホワイトキューブなきれいな展示スペース
会場では、赤を基調にした絵画や断片化されたオブジェが特徴的。主なメッセージは、監視社会がいかに私たちの日常生活に浸透し、個人の自由と感情に影響を与えているかを探ること。カプーアの作品は、私たちが目に見えない「監獄」のような状況に置かれ、日々の監視によって統制された人間像が形成されている現実を映し出します。
作品とともに点在しているオブジェも印象的
表参道のような多様で喧騒に満ちた都市環境の中で、カプーアの作品に対峙することによって、自己と社会、そして内なる感情との関係を再発見するよい機会になるかもしれません。
展覧会名:アニッシュ・カプーア_奪われた自由への眼差し_監視社会の未来
開催期間:2023年11月23日〜2024年1月28日
会場:GYRE GALLERY
公式サイト:https://gyre-omotesando.com/artandgallery/anish-kapoor/
「GYRE GALLERY」と同じフロアにある「MoMA Design Store 表参道」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が展開する世界中から選りすぐられたグッドデザインのアイテムを集めたミュージアムショップ。2007年に初の海外出店となる「MoMA Design Store 表参道」がオープンしました。
約2,000点に及ぶ商品群は、MoMAのキュレーターたちが厳選したものばかり。インテリア、キッチン用具、文房具、ファッション小物など、Design Storeの名前の通り、デザインを意識した品揃えが特徴です。
オススメするアイテムを3点ピックアップしてみました。一つ目は、「奈良美智 Cloud Shrouded アートトレイ」(大8,800円、小6,600円)で、実用的なアイテムで、これで毎日のご飯も少しテンションあがりそう。
普段づかいできる「奈良美智 Cloud Shrouded アートトレイ」
二つ目は、「レゴ(R) アイデア ゴッホ 「星月夜」」(20,281円)。本家のMoMAの所蔵で、ゴッホの人気作品である「星月夜」をレゴで再現、しかも3D化しています。
3つ目は、現在、六本木で回顧展も開かれているキース・ヘリングのキャラクターを使ったバランスゲーム。ゲームとしてだけでなく、インテリアでも楽しめるグッズ(5,500円)。これらの商品を初め、お店をブラブラするだけでもワクワクする空間となっていますし、個性的なギフト選びとしても最適なお店です。
インテリアとしても使える「キース・ヘリング:バランスゲーム」
ショップ:MoMA Design Store 表参道
公式サイト:https://www.momastore.jp/shop/pages/about_locations_jp.aspx
かつて原宿の表参道にあった「同潤会青山アパート」は、大正時代の末期に完成し、2003年に取り壊されました。その後、この場所は「表参道ヒルズ」として新たな命を吹き込まれましたが、元の同潤会青山アパートの外観を継承した3階建ての建物「表参道ヒルズ同潤館」も再建されました。
外観は、同潤会青山アパートの佇まいを継承
この建物内には「ギャラリー同潤会」と「ギャルリー412」があり、ここでは頻繁に様々な展覧会が開催されており、偶然素晴らしい展示に出会えるかもしれません。窓からは表参道のケヤキの並木道が見え、季節ごとの景色を楽しむことができます。
ギャラリー:ギャラリー同潤会
公式サイト:http://www.gallerydojunkai.com/
ギャラリー:ギャルリー412
公式サイト:http://www.galerie412.com/
日本の洋菓子メーカー「ヨックモック」の現会長である藤縄利康が、2020年に「ヨックモックミュージアム」を開設しました。
このプライベートミュージアムの目玉は、同社の取締役会長であり館長の藤縄利康が30年以上かけて精選した、約500点に及ぶピカソのセラミック作品。
瓦屋根だけでなく、壁も床材もセラミックで統一されたミュージアム外観
ピカソが本格的にセラミック制作を始めたのは64歳の時で、南仏ヴァロリスのマドゥーラ工房での体験がきっかけでした。このミュージアムでは、ピカソが直接手掛けた唯一無二のオリジナル作品や、彼の監修のもとマドゥーラ工房の職人と協働して制作したエディション作品が展示されています。
個性溢れるフクロウをモチーフにした作品
ⓒ2023-Succession Pablo Picasso-BCF(JAPAN)
現在、ミュージアムでは「Picasso: Odes to Nature – ピカソ いのちの讃歌」と題した企画展を開催中です。この展覧会では、ピカソのセラミック作品に込められた生命力と、彼が描いたさまざまなモチーフを通じて、生命への深い愛情と共感を探求しています。特に、闘牛や鳩などピカソの代表的なモチーフも取り上げられています。また、2階フロアの南仏を思わせる自然光溢れる白を基調とした展示空間や、壁一面に展示された常設展示の絵皿も見どころです。
彼のセラミック作品における独特の色彩や制作の技術とセラミック造形の融合を楽しむことができ、ピカソの魅力を再発見できるミュージアムです。
展覧会名:企画展「ピカソ いのちの讃歌」
開催期間:2023年10月24日~2024年10月14日
会場:ヨックモックミュージアム
公式サイト:https://yokumokumuseum.com/2790/
1998年、岡本太郎が亡くなって2年後、彼が42年間住んだ建物が「岡本太郎記念館」として公開されました。この建物は彼のアトリエでもありました。敷地内の最初に目にする庭は、自然な植物と彫刻が融合し、古代遺跡のような雰囲気を作り出しています。この庭と調和する応接・打ち合わせ用のサロンは、岡本のデザインによるアイテムで満たされ、サロンの奥には、1954年以降の岡本の作品が生まれた、当時の状態を保ったアトリエがあり、来館者に本物の臨場感を提供します。
展示室は、上階の第1展示室と、ブリッジを渡った第2展示室で、企画展ごとに変わるデザインが新しい雰囲気を生み出しています。
岡本太郎のデザインによるアイテムで満たされるサロン
現在開催されている企画展「《明日の神話》と《太陽の塔》」。
2023年10月から11月にかけて、15年前に渋谷駅に設置された岡本太郎の《明日の神話》の初の大規模改修が始まりました。これは数年にわたる計画の第一段階で、右側の4枚が修復されました。この壁画と《太陽の塔》は、1967年の中南米旅行中に構想され、1969年から1970年にかけて完成しました。これらの作品は、岡本太郎のプロデューサーとしての能力を示す社会的プロジェクトであり、「双子」として併走していました。
改修プロジェクトの展示では、これらの作品と、新たに制作された1962年の《メリーポール》のモデルが紹介されます。
第一展示室に展示されている1/8モデルの《メリーポール》(写真左)
展覧会名:《明日の神話》と《太陽の塔》
開催期間:2023年11月29日~2024年3月10日
会場:岡本太郎 記念館
公式サイト:https://taro-okamoto.or.jp/exhibition/《明日の神話》と《太陽の塔》/
ワタリウム美術館は1990年に開館したプライベート美術館で、初代館長の和多利志津子が1972年から1988年まで運営したギャルリー・ワタリの活動を基に、アンディー・ウォーホルやキース・ヘリングなどの現代美術を紹介していました。
現在の建物はマリオ・ボッタが設計し、御影石とコンクリートの外壁が特徴。ハラルド・ゼーマンやヤン・フートをゲストキュレーターに迎えた国際的な展示を行い、1990年以降は日本の若手現代アーティストの紹介に注力し、現代アートのファン層を広げています。
現在、開催されている梅田哲也の展覧会『wait this is my favorite part / 待ってここ好きなとこなんだ』は、美術館を主役にしたツアー型展示。梅田哲也は、現地の素材や日常的な物を使ったインスタレーションで知られています。パフォーマンスの分野では、観客を普段行かない場所へ連れて行くツアー作品や、劇場の機能に焦点を当てた舞台作品などを展開しています。
彼の作品は、観客に新しい視点や体験を提供し、日常の環境や物質を異なる角度から見る機会を与えてくれます。
本展では、通常非公開の部屋も含め、美術館の建築的特徴に焦点を当てたツアーが開催されます。鑑賞者はキャストの案内で美術館内を巡り、1公演6名限定、20分ごとにスタートし、約50分間のツアーで美術館の歴史や建物の痕跡を体験します。さらに、美術館の日常風景を変化させるパフォーマンス公演の要素も含んでいます。
1期と2期で公演内容も違ってくるようなので、もし気に入ったら2公演とも参加されてみては。
展覧会名:梅田哲也展 wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ
開催期間:
1期:2023年12月1日~2024年1月14日
2期:2024年1月16日~2024年1月28日
会場:ワタリウム美術館
公式サイト:http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202312/
表参道エリアは、今回紹介した以外にも、太田記念美術館や根津美術館、山種美術館など、日本美術に特化した美術館が多く存在し、さらに多様な現代アートを扱うギャラリーも点在しています。
散策しながらふらっと入れるギャラリーで、新しいお気に入りのアート作品を見つけることができるのは、アート愛好家にとっては魅力的な体験になりそうです。