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2024年11月1日
第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)/川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館エントランスホール
絵画、立体、パブリック・アートから生活用品まで、強烈なインパクトのある作品を次々と生み出した岡本太郎(1911〜96)。彼が43歳のときに出版された『今日の芸術』の本には、「時代を創造する者は誰か」というサブタイトルがつけられていました。
彼の精神を継承する「岡本太郎現代芸術賞」(通称「TARO賞」)は、まさに「時代を創造する者は誰か」を問うための賞で、日本の主要な美術賞のひとつとして知られています。
第27回目の今年は、621点の応募のなかから22組が入選。
昨年は該当作品なしとなった岡本太郎賞・敏子賞ですが、 今回は岡本太郎賞(1点) 岡本敏子賞(1点) が選ばれ、通常は2名程度が受賞するという特別賞は、過去最多の10名のアーティストが受賞しました。
入選作品は、川崎市岡本太郎美術館にて開催中の「第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」展にて4月14日まで公開されています。
会場風景より
今回の審査員は、椹木野衣(美術批評家/多摩美術大学教授)、土方明司(川崎市岡本太郎美術館館長)、平野暁臣(空間メディアプロデューサー/岡本太郎記念館館長)、山下裕二(美術史家/明治学院大学教授)、和多利浩一(ワタリウム美術館キュレーター)の5名。
授賞式のあいさつで、平野暁臣氏は表彰作品の選定について次のように語りました。
「会場には、600点以上の応募作品の中から残った文句なしの作品が並んでいる。この賞の評価ポイントは”新しい芸術の可能性を切り拓こうという気概をもっているか”というその一点。バックグラウンドではなく作品だけを見て審査している。今年は岡本太郎賞、岡本敏子賞はもちろん、特別賞も例年以上の作家が選ばれた」。
授賞式後の記念撮影
今年の応募作品のレベルの高さについては、他の審査員からもコメントが寄せられました。
「他の公募展にはないような新鮮で、破壊力のある作品が見られ、これほど充実した作品が今回集まったことを喜びたい」(土方明司氏)
「今年は一次審査から充実していて、最終審査でもエネルギーに満ちあふれた作品が多かった。 作品全体のレベルが高く、特別賞が10名という大豊作の年といえる」(山下裕二氏)
「会場に入ってエネルギーが”バン”と入ってくるような、とてもいい展覧会」(和多利浩一氏)
会場のようすを審査員や作者のコメントも交えて紹介します。
岡本太郎賞を受賞したのは、つんさんの《今日も「あなぐまち」で生きていく》。
会場風景より、つん《今日も「あなぐまち」で生きていく》
「あなぐまち」とは 「頭の中の具体的なまち」を略したもの。
物心ついた頃から頭の中にあったイメージを具体化したという受賞作は、作者によると「自分らしく生きられなかった私が、自分を救うために生み出したもうひとつの世界」。
段ボールでつくられた団地の各部屋を除くと、さまざまな”住人”がいることがわかります。
つん《今日も「あなぐまち」で生きていく》
高さ4mを超える巨大な作品は、下から、幼少期、青年期を経て現在に至り、さらに上の部分は骨組みだけの状態です。
つんさんは「今回の受賞で自分の半生を肯定してもらえたようで嬉しい」と語り、「生きている限りこの世界は今後も広がっていく。残された人生の時間の中で(上層部の)真っ白な団地にも色が加えられる」とコメントしています。
椹木野衣氏は「芸術というのは、生きている間無限に触れることのできる世界。受賞作は、限られた生の中で人が生きていることの意義を、個人の力でどれだけ掘り下げることができるかが伝わってくる展示」と感想を語りました。
岡本敏子賞の受賞作《This is a life. This is our life.》は、多様な人種、年代の人の顔を、ポリエステルの布に刺しゅうで表した作品。
作者の三角さんは、「遺伝子に束ねられた存在であり、与えられた設計図から成り立つ人間の姿を、布に絡みつく糸で表現し、生命について客観視してみた」と作品についてコメントしています。
会場風景より、(右)三角 瞳《This is a life. This is our life.》
100羽以上のカラスが圧倒的な存在感を放つZENG HUIRUさんの《BACK TO ME》。羽音や鳴き声が聞こえてきそうなリアルなカラスの群れは、実は陶磁器で制作されたものです。
作者は「普段、 固定概念によって距離を置いているものでも、ふとした瞬間、 同じ空間の中で共存しているのだということを再認識するきっかけになれば」と語っています。
ZENG HUIRU《BACK TO ME》
現在多摩美術大学在籍中のタツルハタヤマさんは、遠くの国で起きている凄惨な現実と日常生活が実は地続きであるということを、抽象性を借りながら巨大な画面の中に表現しました。
タツルハタヤマ《小鳥のさえずりを聞くとき、遠くで銃声が鳴り響いた》
さまざまな年代、性別の像が周りに配された塔が、バベルの塔のように見える村上力さんの《學校》。
実は完成されぬまま放棄された廃墟をモチーフにした作品だそうです。
村上 力 《學校》
作者の過去作品を解体し、再構築してアップデートしたという長雪恵さんの《きょうこのごろ》は、近くでじっくり見ると、牛や虎、ふくろう、ヤギなどさまざまな動物が描かれており、バラエティに富んだ動物表現が楽しめます。
長 雪恵《きょうこのごろ》
自身が生み出したオリジナルキャラクター「ハッピーモンスター」の絵を壁全面に飾った横岑竜之さんの《ハッピーモンスター》。
骨董品や鹿のはく製などにもハッピーモンスターを描き込み、 新しい命を吹き込んだ本作。 「アートを通して皆を元気に笑顔にしたい。パワーをもらって欲しい」と語っていたのが印象的でした。
横岑 竜之《ハッピーモンスター》
サザエには「小さな家」という意味があるそうです。
主に石川県珠洲市で集めたというサザエの貝殻をもとに制作した村尾かずこさんの《サザエハウスーVillageー》は 、小さな家が集まった集落のイメージでもあります。
実際に中に入ってみると、また違った景色が体験できますので、ぜひ試してみてください。
会場風景より、(中央)村尾 かずこ《サザエハウスーVillage-》
ユニークなのが、「遅い」ことの美学に着目した「遅イズム」を提唱する「遅四グランプリ実行委員」のメンバーたち。
会場では遅イズムによって生まれた文化・芸術を一堂に集めた博覧会が開催中です。
《遅博2024一人類の進歩と遅延一》 遅四グランプリ実行委員会
入選作品の中から、来館者がお気に入り作品を投票する「お気に入りを選ぼう!」などの関連イベントも開催しています。
受賞作品や入選者の詳しい情報、関連イベントの詳細は、美術館公式サイトをご覧ください。
また、会場内は自由に撮影可能(※動画撮影、 フラッシュ撮影、三脚、自撮り棒等の器材の使用は不可)。
会場のようすやお気に入りの作品をSNSなどでどんどんシェアしてみましょう。
圧倒的なパワーとエネルギーが感じられる作品が、会場には所せましと並んでいます。
この熱い雰囲気をぜひ直接体感してみてください。
岡本太郎が描いたさまざまな人物表現に着目した常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」も同時開催中です。
“人物を描く”という印象があまりない岡本太郎ですが、作品のテーマや中心的なモチーフの多くは、顔、眼、内面をも含めた人間の姿です。
絵画では、《傷ましき腕》《夜》《重工業》などの代表作とともに、消失したパリ時代の作品も原寸大パネルで展示され、時代とともに変化していく岡本太郎の画風が、人物の描き方に焦点をあてて紹介されています。
常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」会場風景より、(右)《傷ましき腕》1936/1949 川崎市岡本太郎美術館
常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」会場風景より、(中央)《重工業》1949 川崎市岡本太郎美術館
前衛芸術運動をけん引した戦後の壮年期の作品が並ぶコーナーには、赤・黄色・黒などの原色で描かれた “岡本太郎”らしい力強い、色彩豊かな作品が並んでいます。
常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」会場風景より
絵画だけではなく、人の姿をモチーフにした立体作品やモニュメントなど、幅広いジャンルの作品が会場には展示されています。
常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」会場風景より
《坐ることを拒否する椅子》など、独自の感性とユーモアあふれる体験型の展示もあります。
常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」会場風景より
多磨霊園に眠る彼の墓碑のモチーフにもなっている《午後の日》は、にっこりと笑う子どものようにも、人間の多面性を表しているようにも見える不思議な像。笑顔の下にはさらに別の顔が隠れていそうにも思えます。
《午後の日》1967 川崎市岡本太郎美術館
食器やスカーフなど生活を彩る作品から独創的な大型の彫刻作品まで、強烈な個性とエネルギッシュな作品の数々に圧倒されました。
展示はどこから観てもいいので、自由に動き回って岡本太郎ワールドにどっぷりと浸ることができます。
常設展「人のかたち:岡本太郎の人体表現」会場風景より
生田緑地の美しい自然の中に建つ川崎市岡本太郎美術館は、いつでも岡本太郎のパワーやエネルギーを体感できる空間です。
芸術の新しい可能性を探る、 意欲的なTARO賞受賞作品とともに、岡本太郎のジャンルを越えたさまざまな造形表現を通して、彼の芸術活動や人生にも触れてみてください。