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2024年11月21日
ノスタルジア─記憶のなかの景色/東京都美術館
東京都美術館で、2025年1月8日まで「上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア―記憶のなかの景色」が開催されています。
このプロジェクトは、2017年から毎年異なるテーマで開催されており、今年で8回目を迎えます。
今回のテーマは「ノスタルジア」。8人の個性豊かな作家が描いた、懐かしい風景や思い出の情景を描いた作品が展示されています。
第1章「街と風景」では、日常の風景を独自の表現で描いた南澤愛美、阿部達也の作品が紹介されています。
南澤は、カラー・リトグラフという技法を用いて、擬人化された動物たちが登場する不思議な日常風景を描き出しています。
阿部は、東日本大震災前後から、人の気配のない海や川や空、そして遠景に見える街や道が主役の作品を制作するようになりました。
多摩川など身近な風景を題材に、光、空気、水、色彩の微妙な変化を丁寧に描いた彼の作品は、ふだん何気なく見ている風景の中に、実は心をゆさぶるような美しさがあることを教えてくれます。
第2章「子ども」では、子どもの姿を通して懐かしさを表現した、芝康弘、宮いつきの作品が紹介されています。
芝は、子どもと馬を主なモチーフとして描く作家です。
彼の作品は、写実的でありながら、細やかな光の表現によって、見る人の心を温かく包み込む独特の魅力を持っています。
宮は《双子座》など、身近な人物をモデルとした作品を多く手がけています。
彼女の作品は、美しい色彩のハーモニーと、物語性豊かな世界が特徴です。
不思議な構図の《Beyond the Glass》など、それぞれの作品のストーリーを想像しながら鑑賞すると、よりいっそう楽しめるかもしれません。
第3章「道」では、独自の視点で多様なノスタルジアを表現した、玉虫良次、近藤オリガ、入江一子、久野和洋の作品が紹介されています。
ギャラリーAの中央に、8畳ほどの休憩スペースが設けられ、その周りを囲むように4人の絵画が並んでいます。
ここに座って全体を眺めながらながら鑑賞することで、新たな気づきや発見もありそうです。
絵画の連作10点で構成された玉虫の《epoch》は、昭和30年代頃の都市風景を題材にした約16メートルの大パノラマです。
作品には、薄暗い街角や、路面電車など、どこか懐かしさを感じさせる風景が広がっています。しかし、玉虫は単に過去を再現したのではありません。
登場する人物の表情はほとんどなく、寂しさや孤独を感じさせる要素も含まれています。
背景にはヨーロッパの街並みを思わせる風景も描かれ、作品のつなぎ目には、ブリューゲルやボスの絵画から着想を得たモチーフが取り入れられています。
玉虫は、失われた時代への懐かしさと現代社会への違和感が入り混じった、実際には存在しない街を創り出したのです。
この連作が全体を連結した姿で展示されるのは今回が初めて。懐かしくも不思議な街をこの機会に旅してみてください。
近藤はベラルーシ出身の作家で、現在は日本を拠点に活動しています。
柔らかな光に包まれた空間の中に、幻想的なモチーフが散りばめられた彼女の絵画は、現実と記憶、幻想が混じり合う、夢の中の世界のような雰囲気が感じられます。
ほかにもシルクロードの風景や人びとの暮らしを主題にした入江一子、イタリアの古代遺跡のある街を「懐かしの地」として描き続けた久野和洋など、幅広い世代の作家による、多様なノスタルジアの表現を見ることができます。
「ノスタルジアは過去の振り返りだけではない。新しく作っていく、自分の底にある記憶を実現していくということもあるのではないか」(本展企画担当の東京都美術館学芸員・山村仁志)
ギャラリーBでは「懐かしさの系譜―大正から現代まで 東京都コレクションより」(無料)も開催中です。
この展覧会では、川瀬巴水の版画や1960~70年代の映画のポスター、現代の都市風景を捉えた写真など、多様なメディアの作品を通して、近現代の懐かしさの変遷をたどります。
ノスタルジアは、ギリシャ語に由来することばで、現代では2度と戻ることができない過去の記憶を、現在の風景や情景に重ね合わせて味わう、せつなくも複雑な感情のことをいいます。
展示を通して、8人の作家たちが描く「記憶のなかの景色」をたどりながら、自分自身のノスタルジアに思いを巡らせてみてはどうでしょうか。