特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」/大阪市立美術館

ゴッホが遺した傑作を引き継いだ、家族の物語【大阪市立美術館】

2025年7月22日

フィンセント・ファン・ゴッホ 《種まく人》1888年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

大阪市立美術館にて、特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」が開催されています。

ゴッホが残した作品を世に広めることに人生をかけた、ゴッホの家族に焦点を当てた日本初の展覧会です。

ゴッホを支えた弟の献身

現在では世界中で広く知られて愛されているゴッホですが、若きフィンセント・ファン・ゴッホが画家として活動した当時は絵がなかなか売れず、苦労していました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶》1886年8-9月 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

苦しい生活だったゴッホを経済的、精神的に支えたのが弟のテオです。
兄弟は強い絆で結ばれ、離れて暮らしても絶えず手紙を送り合いました。

テオはゴッホが送った600通を超える手紙すべてを、亡くなるまで大切に保管していました。

特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」展示風景

本展では、ゴッホとテオが当時コレクションした貴重な絵画も多数展示しています。
中でもモンティセリの作品からは、色彩の構成や厚い絵の具のタッチなど、若きゴッホが強く影響を受けたことが伺えます。

アドルフ・モンティセリ 《花瓶の花》1875年頃 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

テオが妻ヨーと結婚した年、弟夫婦を祝福するためにゴッホはいくつかの絵を送ります。
そのうち一枚が傑作として後世に知られる《花咲くアーモンドの木の枝》でした。

特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」イマーシブ・コーナー展示風景

会場のイマーシブ・コーナーでは幅14mの巨大なスクリーンで、《花咲くアーモンドの木の枝》をはじめとするゴッホ作品の世界を体感することができます。

兄弟なき後を支えた家族の尽力

1890年、ゴッホは37歳の若さで亡くなります。亡くなる2年ほど前から体調を崩し、入退院を繰り返しました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《木底の革靴》1889年秋 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

こちらの革靴の絵はそんな時期に描かれた作品ですが、芳しくなかった体調と相反して、筆致は明るく軽やかです。

肖像画のように丹念に描かれた革靴には、「早く元気になってまた外を歩きたい」という希望が込められていたようにも思えます。

ゴッホが亡くなった半年後、弟のテオも後を追うように病で息を引き取ります。
以降、ゴッホ作品の保存と普及に尽力したのはテオの妻、ヨーでした。

特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」展示風景

ヨーは教師や翻訳家としても活躍した、聡明な女性でした。

ゴッホの絵を展覧会へ出品したり、ゴッホとテオが遺した手紙を書籍にまとめて出版したりと、義兄ゴッホの作品が近代美術の世界で正当に評価されるよう尽力しました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《画家としての自画像》1887年12月-1888年2月 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

ゴッホが34歳で描いた自画像です。

ゴッホは多くの自画像を残していますが、ヨーはこの絵がゴッホ本人にもっともよく似ていると評していたそうです。
ヨーはこの絵を非売品とし、決して売却しませんでした。

ゴッホの手紙4通を日本初公開

会場では貴重なゴッホ直筆の手紙も4通展示されています。
ゴッホの手紙は質の良い紙ではなかったため、とても傷みやすく、実物の展示は非常に稀なのだそう。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」1882年9月23日頃 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

傘を手にしたおじいさんをスケッチした手紙では、まだ20代、画家を志して数年のゴッホの、飾り気のない素朴な筆致が目を引きます。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《オリーブ園》1889年9月 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

青々と茂るオリーブの木々が美しい、オリーブが実をつける初秋に描かれた作品。朝の澄みわたる空気まで描かれているようです。

オリーブはゴッホが好んだ主題で、本展でもオリーブ園を描いた絵画がいくつか展示されています。

特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」展覧会サポーターを努める松下浩平さん

本展の展覧会サポーターの松下洸平さんのお気に入りもこちらの《オリーブ園》だそう。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《オリーブ園》1889年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

3月に行われた報道発表会では、「この作品に流れている風がすごく穏やかで、荒々しい気持ちが少しスッと収まるよう」と語っていました。

学生時代に美術を学び、ゴッホの作品も勉強したという松下さんは、本展の音声ガイドのナビゲーターも務めています。

会場限定のグッズもお見逃しなく

特設ショップには、ここでしか手に入らないグッズもたくさん。

会場で注目を集めたのは限定販売のひまわり缶でした。手のひらサイズのお菓子缶に、ゴッホの代表作《ひまわり》があしらわれています。

ひまわり缶 1,350円(税込)

ミッフィーグッズも見逃せません。ミッフィーが身につけるワンピースやバッグは、ゴッホ作品をモチーフにしています。

特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」特設ショップ風景

ミッフィーと並んで販売されるゴッホ本人のあみぐるみも胸の小さなひまわりがとてもかわいらしい一品です。
ぜひ会場でお手に取ってみてください。

初めてのゴッホ体験にもピッタリ

大阪市立美術館の特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」では、生のゴッホ作品に触れる感動を味わえるだけでなく、生涯をかけてゴッホ作品の価値向上に努めた家族の物語にも触れられました。

夏休みのお出かけや、万博の前後にもピッタリなこの機会に、ぜひお出かけしてみてください。

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