これから開催
おさんぽ展
空也上人から谷口ジローまで
日本で「散歩」という語が初めて使われたのは、鎌倉時代から南北朝時代の禅僧、虎関師錬(こかんしれん)の漢詩文集『濟北集(さいほくしゅう)』だと考えられています。「梅花」「春遊」と題した漢詩で、虎関師錬は、野辺をそぞろ歩きつつ春の訪れを感じる喜びを謳っています。伝馬遠《高士探梅図》(岡山県立美術館蔵、前期展示)に月夜に梅を探して歩く様子が、浦上玉堂《幽渓散歩図》(岡山県立美術館蔵、後期展示)に山河の中を歩む様子が描かれるように、虎関師錬が謳ったそぞろ歩きは、絵画の中にも表されてきました。
明治時代以降、西洋に学んだ画家たちもまた、散歩を様々な方法でモチーフとしました。菊池契月《散策》(京都市美術館蔵、前期展示)が描くのは、新緑の森の中を2匹の犬を連れて歩く少女の姿。金島桂華の《画室の客》(京都市美術館蔵、後期展示)は、女性が犬の散歩の途中で画家を訪ねたひとときを表そうとした意欲作です。また、いつもの散歩の中でふと立ち止まったり、風景が違って見えたりする一瞬をとらえる作品も生まれました。小倉遊亀は《春日》(滋賀県立美術館蔵)で、散歩の途中に知り合いと話し込んでしまう穏やかな光景を、漫画家・谷口ジローは《歩くひと》(一般財団法人パピエ蔵)で、自らが長年暮らした場所の風景を細やかに描いています。
一方、散歩に類する行為をたどると、そこここを歩くことでは散歩と似ていながら、散歩とは異なる歩行の歴史を見出すこともできます。虎関師錬より前の時代には、空也、一遍、一向俊聖(いっこうしゅんじょう)といった僧侶が、人々の救済を祈って諸国を巡り、その姿はたとえば《空也上人立像》(滋賀・荘厳寺蔵/滋賀県立琵琶湖文化館寄託)のような肖像として表されました。また西行は、武士の身分を捨てて僧侶となり諸国を行脚して、その感興を多くの和歌に残しています(《西行物語絵詞》(国/文化庁保管))。与謝蕪村《松尾芭蕉経行像》(逸翁美術館蔵)に描かれるのは、経行(きんひん)という、ただ歩くことに専念し一歩一歩をゆっくりと踏みしめ身心を整える、禅の修行の姿です。
「おさんぽ展」では、散歩や歩くことをめぐって生まれた、重要文化財2件を含む約70 作品を、一部展示替えをしながら紹介します。
※会期中、展示替えあり
前期:9月20日~10月19日
後期:10月21日~11月16日
Event Information
- 展覧会名
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おさんぽ展
空也上人から谷口ジローまで
- 開催期間
- 2025年9月20日~11月16日
- 開館時間
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09:30~17:00
(最終入場時間 16:30)
- 休館日
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月曜日 (ただし祝日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
- 入館料
一般 1,200円(1,000円)、高校生・大学生 800円(600円)、小学生・中学生 600円(450円)
※( )内は20名以上の団体料金
※企画展のチケットで展示室1・2で同時開催している常設展も無料で観覧可
※未就学児は無料
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳をお持ちの方とその介助者は無料
- お問い合わせ
Venue Information
- 会場
- 滋賀県立美術館
- 主催
- 滋賀県立美術館、京都新聞
Ticket Present
本展のチケットを「5組10名様」にプレゼント!
〆切は2025年9月28日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。