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暮らしの中に潜むアートを発見!身近な素材と手仕事から広がる【東京都美術館】
2025年8月15日
古墳時代から織部、そして現代へ/岐阜県美術館
美術館外観
ふだん私たちが何気なく使っている食器。どこが本場かご存じでしょうか。
全国生産の約半数は、土岐市、可児市、多治見市、瑞浪市など東濃地方で生産されているんです。そう、「美濃焼」です。なかでも土岐市は「陶磁器生産日本一」。
そして土岐市美濃陶磁歴史館が所蔵する古代~現代の美濃焼の名品が揃う展覧会が、岐阜県美術館で開催されています。
会場入口
岐阜県美術館や図書館の建つ一帯は、広々とした「県民文化の森」。緑に囲まれた敷地には小川が流れ、散策にも気持ちよさそう。
伸びやかな空間が広がる立派な館内。高い天井の下を進み、早速展示室へ。
須恵器 鳥鈕蓋(7世紀前半 飛鳥時代)土岐市美濃陶磁歴史館蔵
出迎えてくれたのは、ちょこんと立つ素朴な鳥さん。土岐市の古墳で出土した須恵器の蓋の部分です。
飛鳥時代の古墳の副葬品などに使われたものだそう。7世紀・・・というと1400年も前なのですね。
土岐市美濃陶磁歴史館は、地元で育まれた陶磁器を収蔵し美濃焼の歴史や文化財を研究、公開してきました。今回の展覧会は、建替えのため休館中の美濃陶磁歴史館のコレクションから選び抜いた名品を展示。
あわせて土岐市の神社仏閣に伝わる文化財も集結しています。
展示風景
こちらは16〜17世紀、桃山時代の展示ブース。安土桃山は美濃焼の陶磁史上最も華やかな時代です。
なかでもこの時期の美濃焼は「美濃桃山陶」と称され、「黄瀬戸」「瀬戸黒」「志野」「織部」のやきものが次々に登場します。
志野織部向付(17世紀初頭 桃山時代)土岐市美濃陶磁歴史館蔵
和傘と鷺でしょうか? かわいい現代のイラストみたい。
重要文化財 瀬戸黒茶碗(16世紀後半~末 桃山時代)土岐市美濃陶磁歴史館蔵
土岐市には、国史跡に指定された桃山時代の古窯跡群「元屋敷陶器窯跡」があり、ここから出土した陶器類は重要文化財に指定されています。
これはそのひとつ「瀬戸黒茶碗」。美濃焼なのにどうして「瀬戸」?
美濃桃山陶は、長いあいだ現在の愛知県瀬戸市で焼かれたものとされてきました。
ところが昭和5年、陶芸家の荒川豊蔵が可児市で志野の陶片を発見し、桃山陶の産地は美濃だったことが判明したのです。
重要文化財 鳴海織部向付(17世紀初頭 桃山時代)土岐市美濃陶磁歴史館蔵
こちらは「織部」。緑色の釉薬が特徴です。幾何学的な文様がとてもユニーク。
織部は現在の土岐市周辺で始まったやきもので、元屋敷窯はその代表的な窯でした。
鎧徳利(18世紀 江戸時代)土岐市美濃陶磁歴史館蔵
17世紀後半になると、庶民に向けた日常使いのやきものの量産が始まりました。
この徳利の下半分は、ローラー状のものを押し付けて連続模様をつけています。見た目が鎧に似ているので「鎧徳利」と呼ばれています。
御深井釉水滴(17世紀後半~18世紀初頭 江戸時代) 土岐市美濃陶磁歴史館蔵
布袋さまとお魚とワンちゃんはみんな笑顔。硯に水を注ぐ「水滴」と呼ばれる容器です。
鉄釉足付陶硯(17世紀 江戸時代) 土岐市美濃陶磁歴史館蔵
硯も陶器! 壺型に象られた部分が硯で、右上の梅の枝が筆置きです。
岐阜県重要文化財(左)夢窓疎石墨蹟「果山」(14世紀 南北朝時代) 崇禅寺蔵
(右)此山妙在墨蹟(1362年 南北朝時代) 崇禅寺蔵 ともに前期(8/23~9/15)のみ展示
土岐市の文化財は陶磁器だけではありません。
左は禅僧・夢窓疎石の墨蹟。京都・天龍寺などの枯山水の作園で有名ですね。右は夢窓疎石とともに高峰顕日の弟子だった此山妙在の書。共に土岐市の崇禅寺に伝わります。
市右衛門「神猿」(1860年 江戸時代) 久尻神社蔵
神社に奉納された神の使いのお猿さん。笑っているような表情になごみます。木彫かと思ったらこれも陶製。
果山正位坐像(1386年 南北朝時代) 崇禅寺蔵 前期(8/23~9/15)・中期(9/17~10/5)のみ展示
崇禅寺開山、果山正位の肖像彫刻。令和元年の調査で制作年の墨書が像内で発見され、制作時期が判明しました。胎内から見つかった写経も展示されています。
展示風景
最後の展示室は近現代のコレクション。明治に入りやきもの生産の規制が撤廃され、技術の進歩もあって大量生産されるようになりました。
輸出用の陶磁器も盛んに生産されたそう。現在土岐市の陶磁器生産量は日本一です。
塚本快示 青白磁水鳥文壺(20世紀 昭和~平成時代)土岐市美濃陶磁歴史館蔵
産業以外の美濃焼にも注目。こちらは人間国宝・塚本快示の青白磁。
美濃が美濃桃山陶の発祥地と証明されて以降、陶芸家たちは美濃桃山陶や中国陶磁を再現しようと技術を磨きました。土岐市では現在も多くの陶芸家が活躍しています。
多目的ホール
パイプオルガンや彫刻群に囲まれた異国情緒の空間もある楽しい岐阜県美術館。
展覧会観賞後は、コレクション名品選にもぜひどうぞ。岐阜県美術館は川合玉堂、前田青邨、熊谷守一など岐阜県ゆかりの作家のほか、オディロン・ルドンのコレクションでも知られます。
開催中の「塔本シスコの花鳥苑」と題したシスコ・コレクションも見逃せませんよ。