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2025年9月29日
闇市と都市/高島屋史料館TOKYO
「2章 新宿の闇市」展示風景
高島屋史料館TOKYO(東京・日本橋)で、企画展「闇市と都市」が2026年2月23日まで開催されています。
本展のテーマは、戦後の混乱期に生まれた「闇市」。
戦後80年を迎えた今、その誕生から現在の東京へとつながる姿までを、地図や写真、資料を手がかりに紹介する注目の展覧会です。
戦時中、空襲による延焼を防ぐために、家屋を強制的に解体して空き地をつくる「建物疎開」という政策が実施されました。
戦後、その空き地や焼け跡、路上などには、物資を売買する仮設の市場が生まれました。これが、いわゆる「闇市」です。
闇市には、大きく分けて2つの形態がありました。
ひとつは主に路上に並ぶ移動可能な露店。もうひとつは建物を建てて営業するマーケットです。
本展では、闇市の姿を伝える貴重な地図や資料が数多く展示されています。
戦後のマーケットの分布を記した地図からは、約半数が戦時中の建物疎開跡地に建てられたことがわかります。
「1章 東京の闇市」展示風景
特に新宿や渋谷など、戦前から交通の要所だったエリアには、戦後も人と物資が集まり、多くの闇市が立ち並ぶ経済活動の拠点となりました。
米軍関係者が、戦後の東京を撮影したカラー写真には、闇市に集う人びとの表情や街の活気が生き生きと写し出されています。
闇市の運営の実態は、1947年に新橋駅近くに建設された新生商店街(通称「狸小路」)に関する展示から詳細に知ることができます。
これは運営母体であった不動産業者が記録・保管していたもので、戦後のマーケットがどのように運営されていたかを知る上で、とても貴重な資料です。
「1章 東京の闇市」展示風景
本展が特に注目しているのが、新宿の劇的な変化です。
終戦直後に撮影された写真には、一部の建物だけが残る焼け跡が広がっています。
終戦からわずか数日後に開設されたマーケットは、食料品や日用品を求める多くの人たちで賑わいました。
1948年4月に同じ場所から撮影された写真では、風景が一変します。
かつての空き地は建物で埋め尽くされ、新宿大通りの両側には無数の露店がひしめき合っています。
闇市の誕生から新たな繁華街への再編まで、一連の変化をとらえた写真からは、都市が再生していく圧倒的なエネルギーが感じられます。
「2章 新宿の闇市」展示風景
やがて役割を終えた闇市は徐々に姿を消しますが、その痕跡は今の東京にも残されています。
新宿駅東口にあったマーケットの一部は、土地区画整理事業で集団移転し、現在の新宿ゴールデン街の原型となりました。
一方、新宿駅西口の闇市の一部は、営業者が地主から土地を買い取ったことで、現在の新宿西口思い出横丁としてその姿をとどめています。
これらは、闇市がどのように現在の都市へつながっていったかを示す、貴重な歴史遺産ともいえるでしょう。
「2章 新宿の闇市」展示風景
さらに、闇市を組織した人物の自伝や、マーケットの営業組織であった組合が発行した機関誌、当時の新宿を舞台にした小説なども展示。
さまざまな視点から闇市の実像を紹介しています。
展示風景
展示を通して、闇市が人びとの暮らしを支え、都市の再生に重要な役割を果たしていたことが見えてきます。
闇市は、今日の東京の原風景であり、都市に刻まれた記憶そのものです。鑑賞後には、いつもの街並みが少し違って見えるかもしれません。
この機会に、戦後から現在へと続く、知られざる東京の歴史をたどってみてはいかがでしょうか。