東京富⼠美術館コレクション ヨーロッパ絵画 美の400年/東京富士美術館

これから美術鑑賞を趣味にしたい人にオススメの展覧会♪【東京富士美術館】

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2025年11月5日

東京富士美術館にて、「東京富土美術館コレクション ヨーロッパ絵画 美の400年」が開催中です。

東京富士美術館の西洋絵画のコレクションは、16世紀のイタリア・ルネサンスから20世紀の近現代美術までを網羅しています。

本展では、日本でも人気の高いモネやルノワール、ゴッホといった画家のほか、古典的巨匠など約80点の名画を通して西洋絵画400年の歴史をたどります。

「美術の教科書」みたいな展覧会!

国内でも珍しいオールドマスターと呼ばれる18世紀以前の作品を所蔵する東京富士美術館。

本展では、同館コレクションから、西洋美術400年の歴史を紐解きます。

通常、西洋美術の歴史を紹介する展覧会だと年代順に作品を展示することが多いです。

しかし、今回の展覧会は「絵画のジャンル」ごとに並べて展示しています。

西洋絵画のジャンルを知る

ルネサンスから19世紀前半までの西洋絵画の世界では、絵画が扱う主題=「ジャンル」による格付けが大きな影響力を持っていました。

当時のランクはこんな感じ。
1位:歴史画
2位:肖像画
3位:風俗画
4位:静物画

それぞれのジャンルについて、かんたんに説明していきます。

ランク最上位!歴史画

ジャック=ルイ・ダヴィッドの工房《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》1805年 東京富士美術館蔵

文字通り歴史上の出来事を題材にしたものはもちろん、聖書などにもとづく宗教画や神話の物語を描いたものなどを「歴史画」といいます。

そもそも、なぜ歴史画が格付けのトップとされるようになったのでしょうか。

それは、イタリアの初期ルネサンスの人文主義者レオン・バッティスタ・アルベルティという人物が、「歴史画こそ画家の最高の仕事である」と記したことが由来なのだそう。

以降、19世紀半ばに至るまで美術界のヒエラルキーの頂点に輝き続けました。

権威の象徴である肖像画

アントニー・ヴァン・ダイク《ベッドフォード伯爵夫人 アン・カーの肖像》1639年 東京富士美術館蔵

現存する肖像画の最古の例は、古代エジプトにさかのぼり、他のジャンルと比較しても群を抜いて古い歴史を持つ肖像画。
ランク付けでは第2位となっています。

主にフランドル*で花開き、支配者層を中心に肖像画が普及していきました。
*フランドル:現在のベルギー西部を中心として、オランダ南西部、フランス北東部を含む地方。ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲルなどの画家の出身地。

主君がお抱えの画家に肖像画を描かせるとき、その肖像画は威厳ある主君としての姿(理想)と本来の主君の姿(現実)の間にギャップが生まれます。

画家たちは、そうしたモデルの理想と現実のバランスを上手く描き表しています。

人びとの生活を描いた風俗画

西洋絵画における風俗画は、日常生活の情景を描いた絵画のことを指します。

本格的な風景画は、17世紀のオランダで盛んに描かれていました。

1609年にオランダはスペインから実質的に独立を果たし、共和制の下で市民社会が成立しました。

そうした社会背景から、一般庶民の現実的な感覚に合った絵画の受容が高く、盛んに描かれるようになったといいます。

これまで紹介したジャンルの中では、一番親しみやすい絵画が多いかと。
ぜひ、お気に入りを見つけてみてくださいね。

静物画はなぜ、ランクが最下位?

静物画は、構成や構図を考え抜いた画家が、動かない物を自分の思うように並べて、正確に描写する絵画を指します。

特徴は、果実や野菜、皿、楽器や書物など、日常生活に密着したものが多く描かれていること。

なかでも、花の絵はそれだけで一大ジャンルを築くほど人気が高かったといいます。

どうして、静物画はランク最下位なのでしょうか。

野菜や皿などのモチーフは、歴史画・肖像画では登場人物やモデルの行いや性格などを分かりやすく伝えるための「添え物」という立場でした。

そのため、人物画の「背景」としての意味合いが強かったために、ランクが最下位だったのです。

印象派の作品も展示

19世紀後半になると、今までのジャンルによる序列が無くなり、西洋絵画がより自由なものとなります。

そんな中で生まれたのが、日本でも人気の高い「印象派」の画家たちによる作品です。

本展の最後では、歴史画や肖像画と言った格付けから解放され、「新しさ」や「最先端」を求めるようになった近代美術を紹介します。

お気に入りの絵画を見つけよう

約80点の西洋絵画が並ぶ「東京富土美術館コレクション ヨーロッパ絵画 美の400年」。

本展を担当した西野正恵学芸員に、オススメの展示作品をお聞きしました。

フランソワ・ブーシェ
《田園の奏楽》

フランソワ・ブーシェ《田園の奏楽》1743年 東京富士美術館蔵

フランソワ・ブーシェは、18世紀フランスのロココ絵画を代表する画家です。

ブーシェの画業は多岐に渡りますが、その才能をもっとも開花させたのは、宮廷や邸宅のための装飾絵画の分野と言われています。

本作は、注文主のベリンゲン侯爵の館を飾るために描かれた作品だと考えられ、同館所蔵の《田園の気晴らし》と対をなす作品とされています。

《田園の気晴らし》は、常設展示室に展示されているので、あわせて鑑賞してみてくださいね。

フランソワ・ブーシェ《田園の気晴らし》1743年 東京富士美術館蔵

ウィリアム・ターナー
《ヘレヴィーツリュイスから出向するユトレヒトシティ64号》

ジョセフ・マラード・ウィリアム・ターナー《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》1832年 東京富士美術館蔵

次に紹介するターナーの作品は、ユニークなエピソードとともに見どころポイントを教えてもらいました。

本作は、1832年のロイヤル・アカデミー展に出品された6点のうちの1点で、出品当初から高い評価を得ていました。

ジョセフ・マラード・ウィリアム・ターナー《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》(部分)1832年 東京富士美術館蔵

作品の右手前に浮かんでいる赤いブイに注目。
実は、このブイは最初は描かれていなかったのだそう。

展覧会で本作と並べて展示されていた、ライバル画家のジョン・コンスタンブルの作品を見て、ターナーがその場で赤いブイを描いたというエピソードがあります。

展示会場で即興的に描くターナーのカッコよさと、その才能。
西野学芸員は「絵画のエピソード込みで作品を楽しんでほしい」と話していました。

クロード・モネ《睡蓮》1908年 東京富士美術館蔵

本展は、一部作品を除き撮影OKです。

自分のお気に入りの作品を見つけて、SNSで感想を発信してみては?

スフマート編集部のお気に入りの作品は、クロード・モネ《睡蓮》です。

国立西洋美術館でしか観られないイメージですが、実は日本各地の美術館に所蔵されています。

東京富士美術館もその一つ。国立西洋美術館との違いも見比べてみると、新しい発見があるかもしれません。

あわせて観たい
常設展示も見ごたえばっちり!

「東京富土美術館コレクション ヨーロッパ絵画 美の400年」の後に常設展示室を鑑賞すると、より作品のバックグラウンドが分かるかも!?

見ごたえばつぐんな常設展示もオススメです。

(左)クロード・モネ《プールヴィルの断崖》1882年/(右)クロード・モネ《海辺の船》1881年 いずれも東京富士美術館蔵

鮮やかな青色が目を引く、モネの作品も展示。
右の《海辺の船》は、フランス・ノルマンディーのフェカンという場所で描かれた作品です。

本作を手がけた頃のモネは、1897年に最愛の妻を亡くし、翌80年にはサロン出品をめぐってエドガー・ドガと対立して印象派展への出品をとりやめるなど、転換期を迎えていました。

心の暗雲を吹き払うかのような鮮やかに描かれた空と海。
こうしたノルマンディーの景色は、モネの創作意欲を奮い立たせて、左に展示されている《プールヴィルの断崖》の制作へと続きました。

まるっと楽しめる美術館!

企画展から常設展示まで、1日丸ごと楽しめる東京富士美術館。

これから美術鑑賞を趣味にしたい!という方にぴったりな美術館です。

これまで日本全国13会場を巡ってきた「東京富土美術館コレクション ヨーロッパ絵画 美の400年」は、この後、京都と鹿児島に巡回が予定されています。

Exhibition Information

展覧会名
東京富⼠美術館コレクション ヨーロッパ絵画 美の400年
開催期間
2025年10月4日~2026年1月18日
会場
東京富士美術館
公式サイト
https://www.fujibi.or.jp/