ウィリアム・ターナー/10分でわかるアート
2022年2月2日

唐門 [重要文化財]
冬の京都 元離宮二条城 国宝 二の丸御殿〈白書院〉四の間が初公開されます。
二条城は慶長8年(1603)、江戸幕府初代将軍徳川家康が、天皇の住む京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所とするため築城しました。
寛永3年(1626)には、後水尾天皇を二条城にお迎えする「寛永行幸」のために大規模な改修が行われました。
「寛永行幸」から400年目にあたる来年2026年には「寛永行幸四百年祭」が開催されます。
(寛永行幸四百年祭特設サイト ⇒◆)
12月24日から公開が始まる〈白書院〉は、二の丸御殿の最も奥に位置する、将軍のプライベート空間です。
(12/26~1/3は、休城日及び観覧休止日のため観覧できません!)
豪華絢爛な極彩色の唐門を見上げながらくぐり、車寄せから二の丸御殿へ足を踏み入れます。
来殿者が控える虎が描かれた「遠待」⇒松が描かれた将軍への用件や献上物を取次ぐ「式台」⇒狩野探幽筆の障壁画の大政奉還の舞台となった「大広間」⇒探幽の弟・尚信が襖絵を描いた「黒書院」とキュキュッとなる鴬張りの廊下を通ってようやく〈白書院〉へたどり着きます。
(二の丸御殿の配置図 ⇒◆)

〈白書院〉一の間 正面
〈白書院〉は、江戸時代には「御座の間」と呼ばれており、将軍の居間と寝室であったと考えられています。
一の間、二の間、三の間、四の間、帳台の間、部屋の周囲の入側(いりかわ*)と入側に接続する付属の間の7部屋から構成されています。
*入側:座敷と外部の間に設けられた通路状の空間のこと。
〈白書院〉の障壁画は、部屋ごとに画題が異なっており、一の間と二の間は、浙江省・西湖の山水画が描かれています。

〈白書院〉一の間 帳台の間へ襖
〈白書院〉は将軍の居間として使われ、心安らかに過ごせるようにと、障壁画は、ここまで目にしてきた金地に濃彩ではなく、水墨淡彩で描かれています。これは狩野長信(おさのぶ 1577-1654)が描いたとされています。

〈白書院〉一の間 角の蚊帳吊用の輪
一の間(上段)の四隅には蚊帳を吊る輪が残っており、将軍の寝室として使われていたかもしれないことの痕跡が残っています。

〈白書院〉引手金具
〈白書院〉は、明治時代に皇室の別邸「二条離宮」となったため、天皇の御在所である白書院の飾り金具が葵紋から菊紋に変えられました。

〈白書院〉三の間 障壁画に描かれた「四睡図(しすいず)」(豊干、寒山及び拾得が虎と共に睡る姿が描かれた禅画)
三の間には、山水人物画が描かれています。

〈白書院〉三の間 障壁画に描かれた「林和靖」(梅と鶴をこよなく愛した中国北宋時代の詩人)
〈白書院〉四の間は今回初公開となります。

〈白書院〉四の間
四の間には、鳥たちが息づく冬景色が描かれています。
狩野永納が編纂した『本朝画史』には、山水→人物→花鳥という障壁画の格付けが記載されており、〈白書院〉の各部屋の画題もこの格式に沿って描かれています。

〈白書院〉四の間 障壁画に描かれた水辺にすむ「鷭(ばん)」を描いた部分
四の間には、大広間に描かれた孔雀や錦鶏鳥(きんけい)などの珍しい鳥や鷲や鷹などの勇壮な鳥ではなく、日頃身近で目にする素朴な鳥が描かれています。

〈白書院〉四の間 障壁画に描かれた竹の上で寄り添う雀
〈白書院〉四の間は、北東の部屋つまり鬼門に当たります。
主人と身の回りの世話をする者しか入ることができなかった静かで穏やかなプライベート空間です。

二条城二の丸御殿の障壁画の大半は、徳川家三代将軍、徳川家光の時代、寛永3年の大規模改修の際に、狩野派の絵師たちによって描かれました。
「二条城障壁画 展示収蔵館」では、3600件ある二条城の障壁画のうち、重要文化財に指定された二の丸御殿障壁画1016件の原画を順次公開しています。
二の丸御殿障壁画は、模写が完成したものに嵌め替えられています。
昨年〈白書院〉四の間が模写画に嵌め替えが終了してこの度の初公開となりました。
「二条城障壁画 展示収蔵館」では、令和7年12月23日から令和8年2月23日まで「御殿の奥の花鳥~〈白書院〉四の間・帳台の間~」として〈白書院〉四の間と帳台の間の原画が展示されています。
※展示収蔵館は、一般来館者も撮影可

〈白書院〉四の間 障壁画原画
帳台の間の障壁画は、濃彩や金箔も用いられて秋の情景が表現されています。

〈白書院〉帳台の間 障壁画原画
清流園にある「香雲亭(こううんてい)」は、旧角倉了以屋敷から移築されたものです。

清流園にある「香雲亭」
令和8年1月10日から2月28日まで、通常非公開の香雲亭で特別昼食「早春の二の丸御膳」が頂けます(完全予約制)


何度も訪れている二条城にまだ非公開の間がありました。お庭も巡ってみるとやはりとても広かったです。
(元離宮二条城 全体図⇒◆)
年末年始は、休城日、本丸御殿・二の丸御殿観覧休止日がありますので、ご注意ください!
詳しくは、「元離宮二条城 公式サイト」をご確認ください。

東南隅櫓 [重要文化財]