塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
第26回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)/川崎市岡本太郎美術館
アートはよく分からないという方でも、岡本太郎の存在を知っているという人は多いのではないでしょうか。才能は、芸術にとどまらず多方面で活躍してきた岡本太郎。その魅力は計り知れません。
神奈川県にある川崎市岡本太郎美術館で「第26回 岡本太郎現代芸術賞(TARO 賞)」展と、常設展「岡本太郎とにらめっこ」が開催中です。授賞式での熱い言葉や、岡本太郎がつなぐ感性をレポートしていきます。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 授賞式にて」
26回目を迎えた岡本太郎現代芸術賞ことTARO賞の受賞者が発表されました。今年は太郎賞、敏子賞の受賞者はなし。その事実を、どう受け取るか、審査員それぞれのスピーチは胸に刺さるものばかりでした。
「自由な発想から、新しい可能性を発見したい」「最高賞はあくまで出発点であり、必ずしもその後、飛躍するわけでもない。逆に特別賞の人が飛躍することもある」など、23名の入選者に向けて語られました。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 入選作品:川上 一彦/ちゃいおすてぃっくじぇーぴーぴー」
大正、昭和初期の印刷物を使ったコラージュ作品。昔と今を交差した作品に、さまざまな思惑が思い浮かびます。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 入選作品:牛尾 篤/黒と赤」
遠目で感じるインパクトから、近づくほどに感じる繊細さ、1枚の絵を隅々まで目で追いたくなる興味深い作品。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 入選作品:西 除闇/MANgaDARA」
「目まぐるしい感受性に対して、人は余りにも無邪気です」と公式コメントで語る作者。立ち止まらずにはいられない好奇心をくすぐる作品です。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 入選作品:柴田 英昭/コラージュ川柳」
片っ端から読んでは、ひとりでクスクス笑ってしまったお気に入りの作品。真ん中にはコラージュ川柳を体験できるワークスペースもあります。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 入選作品::Hexagon artist®︎/宇宙儀式」
古い時代を取り入れる作品が多いなか、ひときわ存在感を放っていた作品です。好奇心を抑えきれず、隅々まで念入りに見てしまいました。その新しい印象をぜひ会場で感じてみてほしいです。
「第26回 岡本太郎現代芸術賞 入選作品:川端 健太/そこに見えて居ない」
23作品のなかで最も心惹かれた作品。作者は「作品を通してインターネットなどの多層的な隔たりにより、直接触れたり見たりする体験が希薄化した現代特有な感覚を提示したい」と公式コメントで語っています。そして、その言葉通り、見え隠れする、もやっとした感情が表現されていました。
入選した作品展は2023年4月16日まで楽しむことができます。
特別賞を受賞した4作品や、23名の入選者の詳しい情報は美術館公式サイトをご確認ください。
また、入選者の作品やグッズをショップで買うこともできます。お気に入りの作品を見つけた方は、ぜひ立ち寄ってみてください。
常設展「岡本太郎とにらめっこ」展示風景
メディアや街で、偶然に作品または岡本太郎の言葉に出会うことは少なくありません。その偶然の認識に留まらず、岡本太郎をさらに知ることができる常設展「岡本太郎とにらめっこ」が同時開催中です。
常設展「岡本太郎とにらめっこ」展示風景
初期から多くの人間や生き物が登場してきた岡本太郎の作品。「顔」のモチーフが増えてきたのは、1960年代後半ごろからです。
「世界の美のあらゆる層に何と様々な顔があり、また眼があるのだろう。(中略)ひとつの顔の宇宙の中に、また無限の顔、そして目玉が光っている。言いようのない実在感をもって」と著書『美の世界旅行』(1982)で語っています。
常設展「岡本太郎とにらめっこ」展示風景
顔にインスパイアされ、身の回りの物、椅子やグラス、スピーカーなどに「生命」を与えました。
常設展「岡本太郎とにらめっこ」展示風景
本展では、さまざまな表情をうつしだした作品が見どころです。
川崎市岡本太郎美術館 エントランス 展示風景
多摩区役所に設置されていた「月の顔」が岡本太郎美術館に戻ってきました!大きなシンボルが、エントランスで出迎えてくれます。
テーマ展示室展示風景
岡本太郎の多彩な才能のどこに惹かれるか、人によってポイントはさまざまです。
しかし共通しているのは、なんといっても岡本太郎のエネルギッシュな情熱や魂ではないでしょうか。
テーマ展示室展示品
常設展で、岡本太郎の言葉を読むうちに、とてつもなく感動して、自然と目頭が熱くなってしまいました。そうしているうちに、会場に漂う岡本太郎の人間力のすごさに圧倒されます。
テーマ展示室展示品
パワフルで強いイメージが大きい岡本太郎の言葉は、実はとても純粋でシンプルです。私たちはいろいろな肩書きの前に、ひとりの「人間」。
授賞式で審査員の和多利浩一さんが述べた「文化こそが人を動かす、こんな時代だからこそ」その言葉は、まさに岡本太郎の作品に触れて心を動かされた私にぴったりと当てはまりました。
常設展「岡本太郎とにらめっこ」展示風景
岡本太郎現代芸術賞展の新鮮な情熱と、常設展「岡本太郎とにらめっこ」に漂う圧倒的な魂。芸術が紡ぐ感性をぜひ体感してみてください。