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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
横尾忠則 原郷の森/横尾忠則現代美術館
画家・イラストレーター、そして文筆家としても活躍し続ける横尾忠則氏。
紫綬褒章、旭日小綬章受章、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞、今年3月には日本芸術院会員にも選出された、いまや日本を代表する現代アートの巨匠です。
大胆な構図、鮮やかな色彩で独自の世界観を表現する横尾作品は、一度見たら忘れられない人も多いのではないでしょうか。
横尾忠則現代美術館外観
横尾忠則現代美術館は、横尾氏自身のゆかりの地・神戸市に開館し、今年で11年目を迎えます。
そして11年目のスタートを切る展覧会「横尾忠則 原郷の森」展が、5月27日より開催されています。
開会式の会場は満席!
開会式には横尾忠則氏本人が来場。
コロナ禍もあって、オープニングに登壇するのは3年ぶりだそう。横尾氏の登場で、満席の会場は熱気に包まれました。
「原郷の森」展について語る横尾忠則氏
本展は、2022年3月に上梓された500頁からなる横尾氏の長編小説『原郷の森』をテーマにした展覧会です。
ある日、森の中で目覚めた横尾氏の分身「Y」。森で出逢った三島由紀夫と「宇宙霊人」と名乗る宇宙人に導かれ、すでにこの世を去った著名人たちに出会います。
ピカソ、キリコ、デュシャン、ダ・ヴィンチらの芸術家や黒澤明、谷崎潤一郎ら文化人、親鸞、ブッダと来て飼い猫のタマに至るまで、登場人物はなんと280名。
入れ替わり立ち替わり「Y」の前に現われ、芸術論や哲学、雑談まで、さまざまな言葉を残して去っていくという横尾忠則ならではのシュールな物語です。
横尾忠則の文筆家としての活動に焦点を当て、「原郷の森」の世界観を視覚化した「横尾忠則 原郷の森」展。
さて、小説の中のシュールな世界が、どのように表現されているのでしょう。
「原郷の森」展 入口
いよいよ「原郷の森」の中へ。
展示室には、まるで木々が生えているように壁が立て並べられ、鑑賞者は作品の合間を縫うように歩んでいきます。
暗く落とされた照明の中に樹木の影の揺らめきが再現され、まるで森の中をさまよっている感覚にとらわれます。
2F展示室「原郷の森への誘い」展示風景1
展示会場には順路がありません。
「原郷の森」の主人公「Y」のように、さまよい歩きながら作品と出逢い、登場人物の言葉を追っていきます。
2F展示室「原郷の森への誘い」展示風景2
巨大なフォントで書かれたセリフのインパクト。
登場人物が語る言葉は芸術論だったり哲学的であったり、謎かけのようでもあります。
横には、その言葉に関連する絵が掲げられています。
横尾氏は「文章を観て、絵を読む感覚」と語っていました。
2F展示室「原郷の森への誘い」展示風景3
鑑賞者は森の中で思い思いの場所で立ち止まり、絵を鑑賞したり、コトバに見入ったり。
横尾氏:「絵に描かれたモチーフをあまり気にせず、意味を考えたりせず、そのまま無心に見て欲しい」
森の中に次々と現れる言葉と作品を観ていくうちに、作家の頭の中を覗いているような不思議な気分になってきました。まるで横尾氏の夢の中に迷い込んでしまったみたい。
「原郷の森」で出会った「Y」こと横尾忠則氏
森の中をふらふらとさまよっていると、「Y」こと横尾氏ご本人にバッタリ遭遇!
「原郷の森」とは、まさに「横尾忠則ワンダーランド」だったのでした。
3F展示室「異界からのメッセージ」展示風景
森をさまよい抜けて、上の階へ昇ります。
「異界からのメッセージ」と名付けられたこの展示室のテーマは、「声」。
室内の中央には、円を描くように並べられたパネル。そこには小説「原郷の森」の登場人物に関連した絵が掛けられていて、絵の前に立つと、その人物の声が鳴り聞こえてきました。
「耳から聴いて目で観る」仕掛けは、地元劇団の役者さんたちの熱演とのことです。
(左から)《燃える空》2008年/《そして薔薇》2005年 いずれも、作家蔵
展示室の壁面には、小説「原郷の森」の中で語られるキーワードに関する作品がぐるりと展示されています。
横尾芸術のアイコンとなっている、ちょっぴりグロテスクに笑う「ピンクガール」シリーズ。
『Y君、赤い女『ピンクガール』シリーズの不思議を描いていけばいい』(小説『原郷の森』より)
(左)《「工事中」》2009年
(中央)《LIE LIE LIE》2009年
(右)《暗夜光路 N市Ⅰ-B》 横尾忠則現代美術館蔵
『一番最初に発見した僕のY字路は少年相手の模型屋だった』(小説『原郷の森』より)
2000年、かつて模型屋だった故郷の建物を撮影したことをきっかけに制作が始まった「Y字路」シリーズ。無数のバリエーションが生み出され、横尾作品の重要なテーマとなっています。
4階コレクションギャラリーでは「YOKOO TADANORI COLLECTION GALLERY 2023 Part1」が同時開催されています。
残念ながら撮影不可のため作品の紹介はできませんが、横尾忠則が敬愛し小説『原郷の森』にも登場するピカビアやキリコ、ウォーホルなどの作品をはじめ、作者名すらわからないけれども横尾氏が惹かれて収集した作品を見ることができます。
コレクションギャラリー横の廊下は、人気の撮影スポット「目玉廊下」。
短い通路なのですが、それにしても強烈なエナジーを放つ空間だこと!
4F「目玉廊下」
コレクションルーム奥には「キュミラズム・トゥ・アオタニ」と呼ばれる部屋が。
「キュビズム」と「ミラー」を組み合わせた、横尾氏命名の不思議な空間です。
窓外の風景がさまざまな形の鏡に映り、万華鏡の中に入り込んだよう。
横尾忠則現代美術館には、遊び心満載の「横尾忠則の世界」が広がっています。
4F「キュミラズム・トゥ・アオタニ」
『横尾忠則 原郷の森』展は、言葉と絵画の森を思い思いにさまよいながら、視覚と聴覚で「原郷の森」の世界を体感するちょっと不思議な展覧会。
従来の「鑑賞する」展覧会とはひと味もふた味も違った、臨場感あふれる体験が得られます。
森の中をさまよっているつもりが、いつのまにか「アーティスト・横尾忠則」の頭の中を覗いているような不思議な感覚に。
現代アート好きの人はもちろん、あまり得意じゃない方でも、横尾氏の言葉どおり「考えすぎず無心に」シュールな横尾ワールドをぜひ体感してみてください。
兵庫県立美術館との相互割引も用意されていますので、アート三昧の一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【相互割引対象の特別展はこちら】