椅子とめぐる20世紀のデザイン展/日本橋髙島屋 S.C.

椅子とめぐる20世紀のデザイン展 名作椅子100脚を展示【日本橋髙島屋S.C.】

2024年3月6日


オリヴィエ・ムルグ《ブルーム》1968年 織田コレクション
作者(ムルグ)の友人「ブルーム(愛称)」の体をかたどった椅子。

コレクションで20世紀のインテリアデザイン史を振り返る「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」が東京・日本橋高島屋S.C.で2月29日から3月18日まで開催中です。

椅子研究家・東海大学名誉教授の織田憲嗣(おだ・のりつぐ)氏が所有する1,400点を超える貴重なコレクションから100脚を厳選。

時代別に展示、食器や家電製品なども交え、暮らしとデザインについてひもときます。

2月29日に開催された内覧会と織田氏による解説メディアツアー、座り比べができる体験コーナー、名作椅子のある暮らしを紹介するミニシアターのようすをレポートします。

アール・ヌーヴォーからポストモダンまで。
デザインの進化を牽引した椅子たち100脚がずらり


第1章 20世紀の始まり アール・ヌーヴォー」コーナー展示風景より

日本橋髙島屋S.C.本館8階ホールの会場です。

椅子研究家の織田憲嗣(おだ・のりつぐ)氏が所有する膨大なコレクションから厳選された名作椅子100脚が展示されています。織田氏のコメントと併せて、順番にご紹介します。


アントニ・ガウディ《カーザ・カルベットのアームチェア》c.1900年 織田コレクション
会場入り口近くに展示されていて、最初に目に飛び込んできます。

「サグラダ・ファミリア大聖堂」でおなじみのアントニ・ガウディ《カーザ・カルベットのアームチェア》です。展示はこの作品を皮切りに1900年代からスタートします。


チャールズ・イームズ/レイ・イームズ《ロッキング・チェアRAR》1950年 織田コレクション
1950年代のコーナーに展示されています。

イームズ夫妻によるロッキング・チェアです。展示品は、日本に入ってきた最初期の物だそう。

前出のアール・ヌーヴォーコーナーにあった椅子は座面がフラットでしたが、この作品は座面が丸くカーブしています。

当時は世界中のデザイナーが3次元の座面を作ることに挑戦した時代でした。


「時代を象徴する部屋Ⅲ アメリカン・ミッド・センチュリーのくつろぎ」コーナー展示風景より

座面を人間の体にフィットさせるため、木やプラスチック、スチールワイヤーなどさまざまな素材を使用して掛け心地の良い椅子を作る試みが盛んに行われました。

「優れた生活デザインが、いかに人びとを幸せにしてきたかということに思いをはせてご覧いただければ」と織田氏。

左奥にある黒い椅子、チャールズ・イームズ/レイ・イームズの《ラウンジ・チェア(オットマン付き)》は、同じデザインの現行品が体験コーナーに展示されています。


前列左マルコ・ザヌーゾ《キッチン・スケール BA2000》1969年、前列右ゼーンレ(インハウス・デザイン)《キッチン・スケール》1970年、後列左マルコ・ザヌーゾ《キッチン・スケールBA22》1976年、後列右ムリネックス(インハウス・デザイン)《フード・プロセッサー 32002》1976年 以上、全て織田コレクション

展示は椅子の他に食器やキッチン用品、家電などもあります。

「第4章 斬新なデザイン ポストモダンへ 1969-2000」コーナーに展示されている調理器具は、ポップなビタミンカラーが70年代の勢いを感じさせます。


ガエターノ・ペッシェ《チェアUP5+UP6》1969年 織田コレクション
ドンナ(女性)の愛称で呼ばれる、ポリウレタンフォーム製の椅子。すっぽりと包まれるようなフォルムで、座り心地が良さそう。

「時代を象徴する部屋Ⅳ イタリアン・モダンの輝き」コーナーです。

写真は真空パックして輸送し、開封すると膨らんで椅子の形になるというユニークな椅子。

当時は飛行機で空輸する途中に貨物室の中で膨らんでしまい、航空会社が取り扱いを禁止。やむなく製造中止となってしまったそうですが、現在は再び復刻されています。

「デザインミュージアムを造る夢は、まだ捨てていません」


写真8:内覧会であいさつをする織田氏

今回展示されている作品は、織田氏が20代の頃から買い集めた膨大なコレクションのごく一部にすぎません。

織田コレクションは20世紀の家具や生活雑貨、おもちゃなどを始め、写真や書籍などの資料が系統立てて収集された貴重なもので、世界から学術的な価値を評価されています。

若い人たちに本物の持つ力を伝えたい~デザインミュージアム構想

「20代の頃から子どもをおんぶして、椅子のミュージアムを造る場所選びをしていました。もう半世紀以上、夢を追い続けているわけです」と織田氏。

約30年前、北海道旭川市にコレクションとともに移住してミュージアム建設を試みたものの計画は頓挫。現在は隣町の東川町がコレクションを公有化し、ミュージアム建設を進めているものの、資金不足でまだ実現していません。

「物はある、文献類の資料もある、土地もある。でも、お金がない。クラウドファンディングや企業版のふるさと納税など、皆さんの浄財を得て何とか実現できないかと願っています。将来の若い世代に本物、オリジナルを見せる場所を提供したい。パソコンやスマートフォンで観ることもできますが、それではオリジナルの持つ力は伝わらないです。」と熱い思いを語ってくださいました。

名作椅子の体験コーナーとミニシアター


名作椅子の体験コーナー

作品展示の奥に、名作椅子の座り比べができる体験コーナーがありました。

スタッフに「試しに座ってみませんか」と促され、イームズのラウンジチェア&オットマンを体験。アメリカン・ミッド・センチュリーコーナーに展示されている作品と同じデザインの椅子です。


体験コーナーのチャールズ・イームズ/レイ・イームズ《ラウンジチェア&オットマン》現行品 ハーマン・ミラー(ミラーノル)
半世紀近いロングセラー商品で、修理しながら親子代々で使っている人もいるそう。

柔らかさの中にも、しっかりと支えられている感覚が心地いい。

オットマンに足を乗せ、もう立ちたくないと思いながら「価格はおいくらですか」と聞いてみると「約100万円です」とのお返事。壊しては大変と、慌てて飛び起きました。


ミニシアター

展示最後のミニシアターでは、日本と北欧の作品で名作椅子のある暮らしを映像で紹介しています。

織田コレクションは、作家本人も既に所持していないような希少な椅子も含まれる、価値の高い資料です。織田氏の悲願であるミュージアム建設ですが、実現まであと一歩のところまで来ているにも関わらず、資金不足でまだ実現していません。

世界で唯一無二の観光資源になり得る貴重なコレクションが万が一にも海外に雲散霧消してしまうことのないよう、全国に支援を呼びかけたいところです。

「夢だけは、ずっと失わずに追い続けます」と語る織田氏。半世紀越しのロマンと情熱のコレクションを、ぜひご覧になってみてください。

Exhibition Information