かながわへのまなざし/神奈川県立歴史博物館

鎖国と開国から“かながわ”を知るユニークな展覧会【神奈川県立歴史博物館】

2024年8月22日

神奈川県立歴史博物館にて、「特別展 かながわへのまなざし」が開催中です。

西洋の目線から、かながわの原風景や人びとの暮らしぶりを紹介する本展。
絵画や写真、滞在記などから、当時のかながわの魅力に迫ります。

*この展覧会では、神奈川県が成立する以前の江戸時代も対象とすることから、現在の神奈川県域周辺地域を含め「かながわ」と表記しています。 

「鎖国」から開国へ 外国人の目に映る日本

「鎖国」をしていた約170年前の日本。

この政策により、国内では安定した社会が生まれ、独自の文化を発展させてきましたが、ペリー来航、いわゆる「開国」をきっかけに近代化が始まりました。

「鎖国」以前の外国との関わり「南蛮貿易」

16世紀半ば以降、「鎖国」が始まる前までは、九州を中心とする西日本で、スペインやポルトガルとの南蛮貿易が行われていました。

《南蛮屏風》では、「鎖国」以前におこなわれていたスペイン人やポルトガル人との貿易や、彼らの日本でのキリスト教布教のようすを知ることができます。

現代を生きる私たちは「黒船」と聞くとペリー来航を想像しますが、当時の黒船は「貿易船」を指していたのだとか。

また、日本を侵略するイメージも持たれておらず、財宝を外国から持ってきた宝船のように考えられていたそうです。

外国が知る当時の日本

江戸時代以前の日本の中心と言えば京都。外国との貿易は、関東など東の地域にまでは及びませんでした。

なので外国人が知る日本は京都から西の地域のみで、日本列島の形も正確に知らなかったといいます。

世界地図などで日本がより詳しく描かれるようになったのは、18世紀以降のこと。

だんだん本州の形が分かってきた頃には、かながわの主要地域「相模国」「武蔵国」という地名が登場しています。

ペリーの日本滞在の記録で日本を知る

開国後、かながわのようすを本格的に描いた『ペリー提督日本遠征記』の挿絵は、本展のメイン展示です。

これらはペリー使節団として一緒に来日した、画家のヴィルヘルム・ハイネやエリファレット・ブラウン.Jr.が制作しました。

特に、久里浜や横浜への上陸などの歴史的瞬間の場面は、大型の画像として別途制作されました。

この遠征記では、ペリー使節団の活動を紹介するのはもちろん、日本の風景や住民の姿なども盛り込み、それまで謎に包まれていた異国の地のようすを伝えています。

繰り返し描かれるモチーフや、現在も残る場所から推測すると、ハイネは少々脚色も入れて制作していたようです。

しかしよく見ていくと、現代の横浜の面影が感じられるような場面もあります。

また、『日本遠征画集』も展示。

ハイネとブラウン.Jr.がペリーや士官へ贈ったものです。遠征隊の活動の主要6場面が大型石版画として描かれています。

この展示では、3人の研究者による独自の説明がおこなわれています。


横浜の風景だそうです

さらに、『日本遠征石版画集』も展示。

こちらは遠征隊の活動を紹介した『日本遠征画集』とちがい、ペリーの肖像画と中国、琉球、横浜、下田の街並みやそこに暮らす人びとが描かれています。

どれも西洋にはない建物や街並みが描かれています。

開国後の“かながわ”を知る

1859年に横浜が開港すると、外国の商人や、グローブトロッターと呼ばれる世界一周旅行をする人びとも日本を訪れるようになります。

もちろん日本のどこでも訪れていいわけではなく、西洋人が自由に移動できる「遊歩区域」が決められていました。

大体、横浜から約40km四方を移動することができたそうですが、圏内にある江戸府内は除外されていたそう。

多くの外国人がこの地図を頼りに、旅行をしたのでしょうか。

地図内に示された旅行ルートや景色の良い場所は人気を博し、写真撮影なども楽しまれたそうです。

日本の名所は外国人も大好き!

日本人が愛した観光名所は、外国人も興味を持っていたようです。

例えば、江の島、大山、箱根などの観光名所など。歌川広重や国芳による浮世絵も展示されていますよ。

旅行客のおみやげの品

日本について紹介した資料が多数展示されている中でも、旅行客の思い出の品は印象に残りました。

世界旅行家のアメリカ人であるルイーズ・M・ウィリアムスは、世界一周の途中約半年のあいだ日本に滞在したそうです。

現在でいうパスポートのようなものや、ガイドブック、地図、写真アルバムなどの品が残されています。


日本で買った品の領収書まで残っています

水彩絵具で彩色した写真も観光客に人気だったそうです。

写真の大部分が横浜で制作されたことから「横浜写真」とも呼ばれるそうです。

また、漆が表紙に施された写真アルバムも展示。

デザインも富士山と帆掛け船など、外国人が好みそうな日本らしいモチーフが描かれていますね。

これを自国へ持ち帰り、たまに横浜写真をながめながら日本を思い出したのでしょうか。

 

「鎖国」から開国までを辿りつつ、外国からの「かながわへのまなざし」を読み解く本展。

会期中はお子さんが楽しめる「子ども向けワークブック」の配布や、関連イベントも多数開催されますよ。

まだまだ暑い日が続きますが、神奈川県立歴史博物館は、みなとみらい線の馬車道駅からすぐです。是非行かれてみてはいかがでしょうか。

Exhibition Information

展覧会名
かながわへのまなざし
開催期間
2024年8月10日~10月6日
会場
神奈川県立歴史博物館
公式サイト
https://ch.kanagawa-museum.jp/