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東山魁夷を中心に日本の風景画をたどる展覧会【福田美術館】
2025年2月10日
生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った/東京ステーションギャラリー
東京ステーションギャラリーにて、「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」が開催中です。
宮脇綾子(1905-1995)は、身近なモノを対象に、布と紙で美しく親しみやすい作品を生み出してきました。
本展では、アプリケ、コラージュ、手芸などに分類される宮脇綾子の作品を、美術史のことばを使って分析します。
ここでは、約150点の作品と資料を造形的な特徴に基づいて8章に分類・構成される本展の見どころを、ピックアップして紹介していきます。
今から80年前の1945年8月15日、第二次世界大戦が終戦しました。
日本中の人が玉音放送に耳を傾け、終戦に対してさまざまな感情を持っていたころ。
宮脇綾子は、このようなことを考えていたそうです。
昭和20年8月15日、戦争は終わった。やり切れなくて、どうしようもない日々を送っていた私の胸に、ふと浮かんだこと。それは防空壕に出たり入ったりの時間が空いたことだ。この時間で何かやろう、そう思った途端涙がとめどもなくこぼれた。
宮脇綾子「布と遊ぶ」『布切れの芸術 宮脇綾子自選展』図録より
宮脇綾子はこのとき40歳。
何かを作ることで自分らしさを取り戻すために目をつけたのは、姑が残した大量の布切れでした。
創作アプリケ作家の宮脇綾子の誕生です。
アプリケと聞いて思いつくのは、子どものころに持っていたキルト地のカバンなどではないでしょうか。
布を素材に切り抜き、土台となる布にぬい付ける技法であるアプリケ。
しかし、宮脇綾子が始めた「創作アプリケ」は、文字どおり自分で図案を考えて、創意工夫して制作されたものです。
そのモティーフは、野菜や魚など主婦として毎日目にしてきたものばかり。
どれも美しく親しみやすい宮脇綾子の作品を、近づいて鑑賞してみましょう。
宮脇綾子は日ごろから、モノをよく観察することを大切にしていました。
対象のかたちや色はもちろん、個々のパーツを分解したり、構造の細かい部分まで徹底的に観察していたのだそう!
果実や野菜などの断面をモティーフにすることを特に好んでいました。
宮脇綾子「はりえ日記」第9巻より 1974年 豊田市美術館
トマトの断面図。種のまわりのトロリとしたところまで、見事に表現されています。
採れたてのみずみずしさすら感じますね!
宮脇綾子《しゃけ》1973年 豊田市美術館
この作品では吊るされた鮭を表現しています。
重要文化財に指定されている高橋由一の《鮭》と並べて鑑賞してみたい気持ちになります。
アプリケと思えないほどの写実性を有した宮脇綾子の作品。
それは、宮脇綾子の鋭い観察眼によって生み出されたものなのです。
ぜひ会場へ足を運び、間近でご覧ください。
宮脇綾子《フィルターのするめ》1985年 豊田市美術館
布以外にもさまざまな素材を使って、ユニークな作品を制作しています。
例えば、こちらの干されたするめ。この独特な色合いの素材はなんだと思いますか?
こちらの作品は、なんと布製のコーヒーフィルターで作られています。
確かに紙のコーヒーフィルターも、パタンと畳んでみたらするめっぽいかも・・・?
(左から)宮脇綾子《アネモネ》1969年/宮脇綾子《ひなげし》1969年 いずれも、豊田市美術館
鑑賞者の観察眼も試されるような宮脇綾子の作品。
すぐにキャプションを確認しないで、どんな素材が使われているか考えてみるのもオススメです。
美術の視点で改めてアプリケ作家・宮脇綾子を見つめ直す「宮脇綾子の芸術」展。
作品の中に「あ」とひらがなのサインがあることに気が付きましたか?
宮脇綾子《さしみを取ったあとのかれい》1970年豊田市美術館蔵(左下に「あ」とサインが入っている)
宮脇綾子の「あ(綾子の「あ」)」であるのとは別に、もうひとつ意味があります。
作品を前にして「あ」とひと息つき、リラックスして鑑賞してほしい。そういう願いも込めれているのだとか。
温かみのある作品ばかりです。肩の力を抜いて鑑賞してみてくださいね。
公式図録 3,300円(税込)
宮脇綾子について、もっと詳しく知りたい方は公式図録の購入をおすすめします。
出品作品のほかに、宮脇綾子の生涯のまとめも記載されたボリューム満点の公式図録。
とくに宮脇綾子と夫・宮脇晴のなれ初めエピソードは、ドラマチックでおすすめです♪
公式図録は、館内ミュージアムショップで販売中。
本展オリジナルグッズも充実しています。こちらもお見逃しなく。
※都合により開催内容が変更になる場合があります。最新情報は美術館公式サイトをご確認ください。