
東山魁夷を中心に日本の風景画をたどる展覧会【福田美術館】
2025年2月10日
カナレットとヴェネツィアの輝き/京都文化博物館
景観画「ヴェドゥータ」の巨匠・カナレットの全貌を紹介する展覧会が、4月13日まで京都文化博物館で開催中です。
カナレット作品がここまで揃うのは日本で初めて。
本展は、カナレットのヴェドゥータはもちろん、19世紀にモネやホイッスラーなどが描いたヴェネツィアの風景など、ヴェドゥータの変遷を観ることができます。
本名ジョヴァンニ・アントニオ・カナル、通称カナレットは、1697年にイタリアの都市、ヴェネツィアで生まれました。
カナレットがヴェドゥータを描き始めたのは20代前半、1719年ごろとされています。
カナレット《カナル・グランデのレガッタ》1730-1739年頃 ボウズ美術館、ダラム
「ヴェドゥータ」とは、都市の景観や古代の遺跡などを精密な透視図法に基づいて描き出した、風景画の中の1ジャンルのこと。
イタリア語では、“崇められたもの”という意味もあります。
カナレット《モーロ河岸、聖テオドルスの柱を右に西を望む》1738年頃 スフォルツァ城絵画館、ミラノ
当初、カナレットのヴェドゥータは、光と影の効果を追求した作風でした。しかし次第に、澄み渡る空や輝く水面、整然した建物などの描写へと変化していきます。
カナレットは、ヴェネツィアの都市景観を壮麗かつ緻密に描いたことで、ヴェドゥータというジャンルを確立させていったのです。
本展は、ヴェドゥータの巨匠・カナレットの全貌を紹介する、日本初の展覧会です。
さらに、さまざまな画家が描くヴェネツィアの景観画を通して、ヴェドゥータの成立過程も楽しむことができます。
17世紀末から18世紀ごろ、支配階級や貴族の間でグランド・ツアーと呼ばれる周遊旅行が最盛期を迎えます。
その旅行でヴェネツィアを訪れたイギリスの貴族たちが、旅の記念にと争うように買い求めたのが、カナレットのヴェドゥータなのです。
本展で展示される作品59点のうち、35点が英国コレクションであることからも、カナレットの人気ぶりをうかがえます。
カナレットは、ヴェネツィアの都市景観を壮麗かつ緻密に描きます。本来はヴェドゥータの主役ではない、細やかな人物描写も魅力の一つです。
京都文化博物館の清水智代学芸員は「景観画の主役は人ではないのですが、カナレットが描くヴェドゥータからは、人がいきいきとしている、人の息吹を感じることができるかと思います」と言います。
カナレット《昇天祭、モーロ河岸に戻るブチントーロ》1738-1742年頃 レスター伯爵及びホウカム・エステート管理委員会、ノーフォーク
さらにもう一つ、目に見える風景をそのまま描かないのもカナレットならではの表現です。
ありえない建物の組み合わせや、景観を描く視点の高さを工夫して描くことで、人びとが「観たいと思っている風景」を表現していきました。
展示後半ではカナレットの死後、ヴェネツィアがどのように描かれたのか、19世紀に活躍したモネやホイッスラーなどの作品にも焦点を当てています。
カナレットが壮麗かつ緻密に描いたのに対して、アメリカ人画家のホイッスラーは、影のような黒いシルエットで表現しました。
クロード・モネ《パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア》1908年 ウェールズ国立美術館、カーディフ
さらに、印象派の巨匠クロード・モネは曖昧な輪郭線と大胆なトリミングで、また新印象派の画家ポール・シニャックは、点描画法を用いて描いています。
さまざまな画家の視点で描かれた都市・ヴェネツィアの景観を本展では楽しむことができます。
東京展に引き続き、「ハンギョドン」や「コンテナくん」とのコラボグッズが販売されています。
定番のポストカードやトートバッグなども揃い、グッズショップは充実。
グッズショップのようす
注目は、京都展オリジナルグッズとして販売されるイタリアの伝統菓子です。
世界三大カーニバルの一つ、イタリアのカーニバル時期に食べられるガラニは、サクサクとした食感と素朴な味わいの菓子です。
さらに、胡椒がたっぷり入ったはちみつクッキーのペヴァリーニは、ヴェネツィアの郷土菓子なのだそう。
兵庫県にあるイタリアの焼き菓子とジェラート店が手作りした京都展限定の特別なお菓子、この機会にぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
右がガラニ、左がペヴァリーニ(各750円)
会場はカナレットの全貌を紹介するとだけあって、2フロアに渡ります。
さらに、京都展からは、5作品が追加展示。
会場内には撮影可能エリアもあるので、ヴェネツィアに行った気分になって、ごゆっくりとお楽しみください。