印象派の世界につつまれる体験をしてみよう!【デザイン・クリエイティブセンター神戸KIITOホール】
2025年1月24日
今回の「10分でわかるアート」では、中世ヨーロッパを長い間支配した大貴族「ハプスブルク家」について詳しくご紹介します。
ハプスブルク家は13世紀から700年にわたりヨーロッパを支配した一族です。
元々はスイスの小貴族でしたが、1273年にルドルフ1世が神聖ローマ帝国の皇帝に選出されたことが始まりとなり、力をつけていきます。
カール5世の在位中、広大な土地を支配しやすくするために「スペイン=ハプスブルク家」と「オーストリア=ハプスブルク家」の2つの系統に分かれました。
ハプスブルク家が栄華を極めた理由の一つが、戦いによるものではなく婚姻政策による勢力拡大です。
しかし、近親婚を繰り返したため、結果として生まれてくる子どもは、病弱で幼くして命を落とすことが多くなりました。
また、突き出た下あごや分厚い唇が身体的な特徴として知られています。
ハプスブルク家の君主国家は、第一次世界大戦後に幕を閉じました。
ハプスブルク家の人物として、マリア・テレジアやマリー・アントワネット、エリザベートなどがよく知られています。
彼女らを描いた作品も多く、親しみのある方も多いのではないでしょうか。
特に、マリア・テレジアは唯一の女帝としてその手腕を発揮し、今でもオーストリア国民から「国の母」として讃えられています。
ベラスケスはスペイン出身の画家で、1623年にフィリペ4世から王室付きの肖像画家に任命されました。
フェリペ4世からの絶大な信頼もあり、宮廷画家だけでなく役人としての重役も担います。
宮廷画家に任命されてからの33年間で、国王や王女をはじめ、王宮を飾るための絵画を描きました。
フェリペ4世が収集した美術品の鑑定なども行っていて、スペインにあるプラド美術館の収蔵作品の多くはベラスケスが選定したものです。
ベラスケスはマルガリータ王女の肖像画を数多く描いています。
この作品はマルガリータ王女が9歳のときのもの。彼女を描いたのはこの作品が最後でした。
マルガリータ王女の肖像画は、今でいうお見合い写真のようなものだったようです。
この作品はベラスケスの代表作として知られており、世界三大名画にも数えられています。
一番左の絵を描いている人物はベラスケス本人です。
マルガリータ王女の周りにいる人物は彼女のお付きの人たちで、鏡にぼんやりと映っているのはフェリペ4世夫妻です。
絶妙な明暗の使い方や空間が広くみえる構図など、この作品にはベラスケスの天才的な技能がつまっています。
アルチンボルドはイタリアのミラノ出身の画家。
フェルディナント1世の時代に宮廷に招かれ、宮廷画家に任命されました。その後マクシミリアン2世、ルドルフ2世の三代にわたって仕えます。
当時は大航海時代だったこともあり、博物学が盛んでした。珍しい動植物のスケッチをすることも、宮廷画家の仕事の一つでした。
こういった時代背景とアルチンボルドのアイディアにより、動植物を組み合わせて描いた奇想天外な絵が誕生したのです。
ルドルフ2世の姿が野菜や果実で描かれたインパクトのある作品です。
野菜や果実で描かれている理由は、ウェルトゥムヌスが古代ローマの豊穣の神だから。偉大な神の存在を通してルドルフ2世を讃えています。
デューラーはマクシミリアン1世によって宮廷画家に任命されました。
宮廷画家として、マクシミリアン1世の祈祷書の装飾や凱旋門の設計、ハプスブルク家の歴代の君主の肖像画を描きました。
本作は、ベネチア在住ドイツ商人の教会である「サン・バルトロメーオ教会」のために制作されました。
聖母の左手にひざまずいているのはマクシミリアン1世、右手が教皇ユリウス2世とされています。
ハプスブルク家の象徴に満ちた作品の一つです。
ハプスブルク家がヨーロッパを支配した長い歴史の中で、芸術や文化においても発展を遂げました。
これを機に、ハプスブルク家にゆかりのある作品に興味を持っていただけたら幸いです。
10分でわかるアートとは?
「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
作家たちのクスっと笑えてしまうエピソードや、なるほど!と、思わず人に話したくなってしまうちょっとした知識など。さまざまな切り口で、有名な作家について分かりやすく簡単に知ってもらうことを目的としています。
「この作品を作った作家についてもう少し知りたい!」「美術用語が難しくてわからない・・・」そんな方のヒントになれば幸いです。
【参考書籍】
横山徳爾 訳『ハプスブルク家と芸術家たち』 朝日新聞社 1995年