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2025年8月14日
藤田嗣治 絵画と写真/東京ステーションギャラリー
こんにちは!
美術館巡りが趣味のかおりです。
日本で、パリで、そして世界中に多くのファンをもつ藤田嗣治は、2026年に生誕140周年を迎えます。そのため今年2025年から来年2026年にかけて、日本でも各地で藤田嗣治生誕140周年を記念した展覧会が続々と開催されます。
今回はそのうちのひとつ、東京ステーションギャラリーでの「藤田嗣治 絵画と写真」に伺ってきました。
藤田嗣治といえば、エコール・ド・パリの代表的な画家としてパリ画壇の寵児、乳白色の絵画、戦争画での戦争責任を問われて失意のうちに日本を離れてパリに永住したエピソードなどをイメージする方が多いのではないでしょうか。
本展は、そうした藤田嗣治の芸術を「写真」という切り口で魅力を再発見できる、これまでのファンの方にも、はじめて藤田嗣治を知る方にとっても、新しい発見のある展示となっています。特に、写真に興味がある方におすすめです!
それではさっそく展示を覗いてみましょう!
「藤田嗣治」「写真」というと、何が思い浮かぶでしょうか?
私の場合、真っ先に藤田嗣治自身のポートレート写真!
前髪ぱっつんのマッシュルームヘア
丸メガネ
ちょびひげ
奇抜な服装
猫
藤田嗣治を少しでも知っている人は、これらの特徴を挙げられるとすぐに「藤田嗣治だ!」とわかることでしょう。初めて藤田嗣治を知った人も、一度見ると忘れられない特徴です。
藤田嗣治がパリに渡ったのは1913年。
さまざまな芸術潮流が渦巻く中で目立つには、絵画の腕そのものだけでなく、コネクションや運なども含め、あらゆる手段を講じる必要があります。
その中で藤田嗣治がとったのが、個性を際立たせたセルフブランディングでした。自らのイメージを確立するために、当時発明から半世紀ほど経ち、一般的になってきた写真は欠かせないものでした。
現代のインフルエンサーにも欠かせないセルフブランディングを、100年以上前に確立していたのが藤田嗣治だったのです。
インパクトのある見た目で、言葉にしやすい特徴で、セルフブランディングをバッチリ固めた藤田嗣治を、展示されている絵画や写真からも伺い知ることができます。
もちろん、セルフブランディングのためだけに写真を使っていたわけではありません。
写真が普及した19世紀後半以降、画家たちは、取材したものの写真を撮ることで、絵画を制作するための素材とするようになりました。藤田嗣治もそのひとりで、特に旅の多い藤田嗣治にとって、写真は、日常だけでなく旅先の情景を絵にするにあたって重宝するものだったに違いありません。
今回の展示では、なんと元になった写真と制作された絵画が並べて展示されていて、見比べることができます!
2階展示風景 ©Hayato Wakabayashi
実際に藤田嗣治自身が撮影した、子どもが3人座って揃って何かに視線を向けている様子を写した写真、それぞれの子どもを写した写真。そして、最終的に仕上がった絵画。
並べると、全体の構図の元になったのだな、子どもひとりひとりの表情や体つきはこの写真を参考にしたのだなと、組み合わさってひとつの絵画が制作されているようすがまざまざとわかります。
この作品以外にも展示されているので、ぜひじっくり比べてみてください。私も写真と絵画作品のあいだで何度も視線を往復させてしまいました。
複数枚の写真がとらえた情景を、1枚の絵画に組み立て、さらに情感をのせて完成された絵画作品をみると、絵画に含まれる時間の流れや空気感、子どもたちの声や関係性なども、より強く感じられるようになってきます。
また、藤田嗣治は旅の多い画家でした。
旅先でもスケッチをするように写真を撮り、制作を行っています。
2年ほどかけて巡った中南米をはじめ、日本各地、中国、東南アジアなど、実にさまざまな地域へ旅をし、撮影と絵画制作が行われています。
旅先で撮影された写真が、絵画制作のための記録用のものなのか、あるいは思い出を残すためのスナップなのかは判然としませんが、その地域に住む一般の人々への眼差しの一端を感じることができます。
2階展示風景 ©Hayato Wakabayashi
地域が変わればそこに住む人々の風貌や着ているもの、持ち物、目にするものや風景も変わってきます。
現地での写真やスケッチを元に制作されたであろう絵画作品には、それぞれの地域の人種による顔つきの違いが、非常によく描き分けられており、藤田嗣治の視点の鋭さ、そして表現力が遺憾なく発揮されているのを目の当たりにしました。
そして、私が本展覧会の中でいちばん見入ったのが、藤田嗣治の撮影した写真でした。
個人的に好きだったのが、こちらの2枚です。
鮮やかな赤い色彩が効果的に使われ、日常のふとした何気ないけれどもかけがえのない一瞬の光景が切り取られています。
これまでのモノクロ写真でも、その構図や人々の表情の捉え方には目を見張るものがありますが、時代が下り、カラーフィルムでの撮影が増えてくると、藤田嗣治の写真の魅力がさらに増してきます。
藤田嗣治は画家ですが、彼の写真も高く評価されました。
画家として培った、物事を捉える視点や一瞬を切り取る力、そして表現力が、カラー写真でも存分に発揮されているようです。
2階展示風景 ©Hayato Wakabayashi
ここまでふんだんに藤田嗣治の写真が展示されるのは、またとない機会。会場には世界各地のさまざまな写真が展示されているので、ぜひお気に入りを見つけていただけたらなと思います。
また会場では、スライドフィルムをプロジェクターでスクリーンに投影したかたちで鑑賞を楽しむことのできるコーナーもあります。年配の方は懐かしい、若い方はなかなか見る機会も少ないかと思いますので、その設備も含めて、藤田嗣治の写真を楽しんでいただけます。
ここまで藤田嗣治の写真を元にした絵画作品や、写真作品をみてきました。
すでに見応え十分なのですが、会場ではパリで親交の深かった芸術家、マン・レイやアジェの作品、くつろいだ様子の普段の藤田嗣治をとらえた写真や、コラージュ作品があったり、裁縫男子としての藤田嗣治をみれたりと、盛りだくさんです。
藤田嗣治のことはよく知っているという方にも、新しい一面をみていただける内容でした。
もちろんこれから藤田嗣治に触れる方にも、特に写真が好きという方にはおすすめしたい展覧会です。東京ステーションギャラリーのレンガの建物とともに、ぜひじっくり鑑賞を楽しんでいただきたいです。
それでは愉しいアートライフを!