泉屋博古館東京がリニューアルオープン!気になる見どころとは?

2022年1月21日

リニューアルオープンに先駆けて、泉屋博古館東京の新たな見どころをご紹介

閑静で落ち着いた六本木一丁目エリアにある、泉屋博古館東京。「アークヒルズ」周辺のにぎやかな界隈から離れた環境で、「泉ガーデン」の美しい緑に心癒やされながら美術鑑賞を楽しめるコンパクトな美術館です。

泉屋博古館東京

長年にわたり京都の本館と東京分館の2拠点でさまざまな展覧会を開催する同館ですが、東京での開館は2022年に20周年を迎えます。改修工事のため約2年間の長期休館を経て、いよいよ節目の年にリニューアルオープン! これに先がけて、1月にリニューアル・プレオープン『木島櫻谷と近代の花鳥画』が開催されました。

本記事では特別公開の内容をレポートしつつ、新しくなった泉屋博古館東京の見どころや今後の展示についてご紹介します。

泉屋博古館東京のこれまで

「泉屋博古館」の本館は京都にあり、東京にある館はかつて「泉屋博古館分館」として親しまれていました。
2020年1月より改修工事のため長期休館期間に入り、2022年のリニューアルオープンに向けたタイミングで、館のシンボルマークやロゴタイプも一新されました。住友の屋号である「泉屋」の泉の字をモチーフとして掲げ、湧き出す泉のように新鮮なものを生み出し、新しいことを求めて改革していきたいという思いが込められています。

泉屋博古館東京および京都本館のはじまりは、世界的な青銅器コレクションをはじめ、中国絵画、日本の古画や工芸のほか西洋絵画に至るまで、幅広いジャンルの美術品が含まれる「住友コレクション」です。住友家の歴代当主が収集したコレクションには、実際に邸宅内で飾られていた作品も。伝統を意識した格調高い作風が基調となる作品群は、個人を超えて社会的な役割を担ったコレクションと言えます。
なお、所蔵品の総数は約3,500点。重要文化財の板谷波山《葆光彩磁珍果文花瓶》や2点の国宝など、貴重な美術品も保有しています。

リニューアルした展示空間にも注目

泉屋博古館東京は、新たに展示室が増えて4室となりました。LED照明やグレートーンの天井、コレクションが映える明るい壁色を選定し、より快適な展示空間となるよう工夫が施されています。鑑賞空間が広がってゆとりが生まれたこともポイントです。新設の第4展示室は、大正6年に住友家の別邸としてこの地に建てられた「麻布別邸」を想起できる作りになっているところにもこだわりが感じられます。

外観も明るく入りやすい設計に変わり、庭園の緑が映り込むガラスはまるで周囲の自然と一体化するようです。エントランスをくぐれば中世のロマネスク教会を思わせる静かなホールがあり、美術館らしい居心地の良さを演出しています。

ショップとカフェも見逃せません。ショップでは定番の絵はがきや各種グッズのほか、東京館の所蔵作品をモチーフとした多様なグッズを取りそろえています。展示や季節に合わせた商品も取り扱い予定のため、今後のラインナップにも注目です。

庭園の景色を一望できる「HARIO CAFE」は、ガラス製品メーカーのHARIOが直営するカフェで、HARIOの器具で淹れたコーヒーや紅茶を楽しむことができます。店内で販売しているガラス製のグッズやオリジナルブランドのアクセサリーは、来館のお土産やプレゼントにもぴったり。

カフェは館のリニューアルオープンに先がけて2021年10月にオープンしているため、気軽に立ち寄って憩いつつ、春の開館を待ち望むのも良いでしょう。

特別公開『木島櫻谷と近代の花鳥画』を紹介!

リニューアル・プレオープン『木島櫻谷と近代の花鳥画』の中心となった木島櫻谷(このしま おうこく、1877-1938)は、近年再評価されている京都画壇の巨匠です。彼の作品は庶民から広く愛され、没後80年以上たった今も「おうこくさん」と親しみを込めて呼ばれています。

展示風景
本展では櫻谷の日本画とあわせて、泉屋博古館東京が所蔵する「住友コレクション」の中から近代日本画の名品が一堂に集結しました。それぞれの展示室の見どころを少しだけ紹介します。

第1展示室「花鳥画モダン」

第1展示室には、銀地に油彩で描いた《春秋草花図(右隻)》や淡彩のやわらかな雰囲気が特徴的な《草花図屏風》など、モダンな屏風が並びます。

香田勝太《春秋草花図(右隻)》

第2展示室「玉泉 VS 櫻谷」

第2展示室では、縦長の空間に6曲1双の屏風絵を横並びにした迫力のある展示が並べられています。蘆雁図(ろがんず)を得意とした望月玉泉の《雪中蘆雁図》は、瀟洒かつ壮麗で、凛とした冬景色をよく表しています。

望月玉泉《雪中蘆雁図》

競うようにして並べられた櫻谷の《猛鷲波濤図屏風》は荒々しい波と鷲の鋭さが目を引く大作。

金地に墨で描く技法は、筆跡がしっかりと残るため画家の力量が試されますが、勢いのある筆づかいからは、櫻谷の技巧の素晴らしさも感じられます。

第3展示室「四季連作屏風の間」

第3展示室では、櫻谷の描いた花鳥画を中心に展示。

展示風景

住友家の本邸に飾るために依頼されたという《四季連作屏風》は、通常サイズである170cmよりも大きな180cmで、邸宅との調和を考えて制作されたことがわかります。春の桜に始まり、燕子花、菊、梅と四季の移ろいを表現した華麗な屏風絵は、財界を主導した住友にふさわしい格調の高さを備えた名品です。

第4展示室「掛け軸の間」

新設された第4展示室では、櫻谷の手がけた掛け軸絵を4幅展示。他の展示室とは少し違い、邸宅にいるような気分で美術品を鑑賞することができます。

展示風景

櫻谷は、《月下遊狸》のような狸図で「狸の櫻谷」の異名をとるほど動物画が得意で、本物の手触りを感じさせるような細かな毛並みの表現が見事です。

木島櫻谷《月下遊狸(部分)》大正7(1918)年 

バラエティ豊かな今後のラインナップ

2022年は、リニューアルオープン記念展を3つ開催予定です。

リニューアル・オープン記念展I『日本画トライアングル—画家たちの大阪・京都・東京』

(2022年3月19日~5月8日開催)

リニューアル・オープンのこけらおとしとなる本展では、住友コレクションの中心とも言える近代日本画を展示します。泉屋博古館が保有する吉祥画や花鳥画など、住友の風格を備えた名品の数々は、大阪・京都・東京の三都で活躍した画家によるものであることが大きな特徴です。

木島櫻谷《柳桜図》大正 6 年(1917)泉屋博古館東京

過去最大規模のコレクション展で日本画壇を横断的に眺め、地域に根ざした日本画の魅力と多様性を感じていただけるでしょう。
あまり知られていない大阪画壇の作家の作品も取り上げる貴重な展示で、休館期間中に修復した作品もこの機会にお披露目となります。前述した木島櫻谷の作品も、鑑賞することできます!

リニューアル・オープン記念展II『光陰礼讃—モネから始まる住友洋画コレクション』

(2022年5月21日~7月31日開催)

本展は、クロード・モネの印象派絵画と同時代のクラシカルなサロン絵画を一挙に展示する、意欲的な内容です。

クロード・モネ《モンソー公園》1876 年 泉屋博古館東京

住友コレクションではさまざまな画風の西洋絵画を平均的に収集していたこともわかります。印象派と写実派、それぞれの「光陰」表現にクローズアップしながら近代洋画の数々を楽しめる企画です。

リニューアル・オープン記念展III『古美術逍遥—東洋へのまなざし』

(2022年9月10日~10月23日開催)

東洋美術をテーマとした本展では、中世・近世の東アジアから伝わった水墨画など東洋美術の名品が紹介されます。国宝や重要文化財も含めて絵画や茶の湯、仏像など東洋の文化にも多面的に触れられる展示です。

重要文化財 八大山人《安晩帖》叭々鳥図
清時代(康煕 33 年 / 1694 年)泉屋博古館 

日本・西洋・東洋と幅広いジャンルを網羅する住友コレクションで、泉屋博古館東京の魅力を存分に楽しめます。

また、今回新設された講堂では、展覧会関連イベントや連続講座といったラーニングプログラムが実施されるそうです。展示をより親しみやすく、より深い内容で楽しめるような催し物も、ぜひお見逃しなく。

おわりに

虎ノ門や赤坂にも近く、立地に恵まれた六本木一丁目エリアには他にも「大倉集古館」や「菊池寛実記念 智美術館」があり、「泉屋博古館東京」から歩いて行ける距離にあります。今後は3館で連携した企画も予定しているそうなので、これからの展示も楽しみですね。休日のアート巡りや春先のお出かけスポットに選んでみるのも良いかもしれません。

『木島櫻谷と近代の花鳥画』は日経VRアプリコンテンツで配信しているため、スマートフォンから臨場感のある360度画像で展示をご覧いただけます。こちらもぜひチェックしてみてください。

Museum Information

美術館情報
泉屋博古館東京
住所
東京都港区六本木1丁目5番地1号
公式サイト
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