岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク/目黒区美術館

パリ、目黒、NYで活躍した岡田謙三の画業を紹介【目黒区美術館】

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2026年3月25日

パリ、目黒、NYで活躍した岡田謙三の画業を紹介【目黒区美術館】

目黒区美術館にて「岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク」が開催中です。

本展では、3つの街で自身の創作を模索し続けた画家・岡田謙三の道のりを、時代順に紐解きます。

目黒にゆかりのある画家・岡田謙三

岡田謙三は横浜出身の画家。東京美術学校を卒業して、1920年代にパリに留学した後、目黒・自由が丘にアトリエを構えて制作をしました。

その後、さらなる表現を求めてニューヨークへ渡りますが、本帰国したあとも晩年まで目黒で過ごしました。

展覧会では、岡田の最初期から晩年までの作品を時代順に展示。

パリ、目黒、ニューヨークそれぞれの街で変化していく画風も見どころとなっています。


岡田謙三《静物 No.1》1922年 油彩・キャンバス 秋田市立千秋美術館蔵

こちらは最初期の岡田の静物画。東京美術学校に在籍していた頃の作品と言われています。

展示では見られませんが、作品裏には、描きかけの肖像画が残されており、物が無かった時代背景が伺えます。

印象派を手本としたような技法が光る本作ですが、晩年とは全く違う作風なんです。では、展示室を見ていきましょう。

パリ留学へ行った1920年代

1920年代、岡田は仲間と共にパリへ留学します。そこで新しい表現、芸術家同士の熱い議論と出会い、改めて「絵を作り上げる」ことについて考えます。

パリ時代の作品については、残念ながらほとんど残されておらず、資料や写真からのみその雰囲気が分かります。

3年ほどの留学を経て、岡田は帰国。1935年に目黒・自由が丘にアトリエを構えます。


「岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク」展示風景より

この頃は、パリの文化・生活・風景を反映させた女性像が多く見られます。

日本も丁度洋装化が進んでいた頃。「新しい時代」にふさわしい、活発で自由な女性の表現を好んでいたようです。

人物の配置と色彩に注目「群像図」


岡田謙三《高原》1939年 油彩・キャンバス 秋田県立近代美術館蔵

また、この頃の岡田は群像を多く描きました。

人間模様・心情を描くというより、複数人を納得のいくように構図し、細かな色彩で埋め尽くしていくことに関心があったようです。

《高原》では、遠近感や肌の光の当たり方などが計算されていることが分かり、どこか現実世界のような雰囲気があります。


岡田謙三《シルク》1947年 油彩・キャンバス 横浜美術館蔵(岡田きみ氏寄贈)

《シルク》からは、別の時間の人間同士を集めて構成したような、空想世界のような印象を受けます。

人間も最小限の線のみで構成。岡田の到達点のひとつとも言えそうです。

新しい表現を求めてーNY時代

さらに新しい表現を求めた岡田は、ニューヨークへ行くことを決めます。

再度パリへ渡ることも考えたそうですが、戦後、新しい文化・街・考え方が集まっていたアメリカを選んだのだとか。

この考えはばっちり当たります。岡田はNYで抽象表現と出会います。


(左)岡田謙三《竹》1952年 油彩・キャンバス 秋田市立千秋美術館蔵
(右)岡田謙三《葉 No.1》1951-52年 油彩・キャンバス 秋田市立千秋美術館蔵

何を描いているか、表現しているか、正解のない抽象画に岡田は苦戦します。

ニューヨーク最初期に岡田が挑戦した抽象表現。作風が全く違うので、突然違う作家を見ているようで驚きます。

それでも岡田は自身の表現を見つけます。


岡田謙三《花》1954年頃 油彩・キャンバス 秋田市立千秋美術館蔵

《花》は、色彩を愛した岡田らしい作品。

抽象表現に出会って以降、岡田の描くモチーフに人間は登場しなくなりました。

3つの街を経て到達した岡田の表現

ニューヨーク時代以降の岡田の作品は、どこか静かで、でも大胆。ずっと見ていられるような魅力があります。


岡田謙三《間隔》1958年 油彩・キャンバス 目黒区美術館蔵

目黒区美術館・誉田学芸員お気に入りのこちらの作品。

見る人によって見え方が違う。丸い石のように見える人もいれば、岡田の出身である横浜の港に見える人もいる。

白いシンプルな作品に見えますが、実物を見てみると同じ白でも全く違う色味・質感を楽しむことができます。

この作品は本展のチラシなどにも採用されており、印刷に苦労したというエピソードも聞くことができました。

コラージュで生まれた偶発的な表現

岡田は下絵の際に、コラージュを好んで行っていたそう。

やり方としては、色紙などを破ってみる。破って偶然生まれた形や質感を組み合わせ作品にしていく、といったイメージです。実際の下絵も残されています。


「岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク」展示風景より (右)岡田謙三《垂直》1964年 油彩・キャンバス 横浜美術館蔵


岡田謙三《垂直のためのエスキース》1964年頃 鉛筆、紙、セロハンテープ 横浜美術館蔵(岡田恵子氏寄贈)

偶然生まれる形の面白さ、そして得意の色彩表現をあわせて唯一無二の作品を残しました。


「岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク」展示風景より

見ていると、やまと絵のような曲線も感じられるし、屏風絵のような色彩も感じられる。

異国でさまざまな表現に出会った岡田だからこそ到達した表現です。是非間近で見てみてはいかがでしょうか。


岡田謙三《エスキース4》制作年不詳 コラージュ 目黒区美術館蔵(岡田きみ氏寄贈)

1階では岡田のコラージュを展示。
破ったまま残された色紙や、お気に入りのコレクションなども展示されます。

展示は時代ごとの順路になっているものの、目黒区美術館の曲線的な空間を活かして、行ったり来たりできるようになっています。

時代ごとに作風は変わりますが、共通点も見つかるかも?豊かな色彩に囲まれた空間をお楽しみください。

Exhibition Information

展覧会名
岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク
開催期間
2026年2月21日~5月10日
会場
目黒区美術館
公式サイト
https://mmat.jp/