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2024年11月1日
広重おじさん図譜/太田記念美術館
浮世絵師、歌川広重(1797-1858)が描いた風景画に登場する「おじさん」に注目したユニークな展覧会が、太田記念美術館で3月26日まで開催中です。
歌川広重《東海道五拾三次之内 鞠子》天保13年(1842)頃 前期展示
本展は、広重が描いた味わい深い人物に親しみと愛着を込めて「おじさん」と呼び、その魅力に迫るものです。
よく知られている広重の風景画をおじさんたちを通して鑑賞することで、今までとは違うイメージを持つことができるかも?そんな本展の見どころをご紹介していきます。
歌川広重の作品にはたびたび、ユーモアたっぷりに描かれたおじさんが多く登場します。彼らは、風景の脇役として画面に描かれることが多いおじさん。しかし、よく見てみると顔や表情、服装などもしっかりと描き分けられていることが分かります。
(左から)歌川広重《東海道五拾三次之内 藤枝 瀬戸川歩行渡》天保13年(1842)頃
歌川広重《東海道五拾三次之内 奥津 興津川》天保4~7年(1833~36)頃
いずれも、前期展示
「風景」をメインとした作品にも関わらず、登場人物のちょっとしたドラマも想像することもできます。
本展では、前後期合わせて146点の作品を出品。風景画としてではなく、その絵に描かれた名脇役であるおじさんたちが主役という、とてもユニークな展覧会です。
本展で出品される作品の中には、保永堂版「東海道五拾三次之内」や「木曽海道六拾九次之内」といった広重の代表作が展示されています。
そのほかにも、主人公をおじさんとすることで選ばれた普段展示されることの少ないレアな作品も多数紹介!広重の風景画の新しい魅力もたっぷりと紹介します。
歌川広重《伊勢参宮宮川の渡し》安政2年(1855)4月 前期展示
こちらは編集部のお気に入りの作品である《伊勢参宮宮川の渡し》です。
本作は、江戸時代の庶民たちにとって特別な行事である「お伊勢参り」のようすを描いたものです。この宮川は伊勢神宮のそばを流れる川で、多くの参詣者たちが禊(みそぎ*)を行ったり、船で川を渡ったりしています。
*禊:身に罪や穢(けがれ)のある者、また神事に従事しようとする者が、川や海の水でからだを洗い清めること。
歌川広重《伊勢参宮宮川の渡し》(部分)安政2年(1855)4月 前期展示
この賑やかな画面に描かれたおじさんたちに注目。とくにこちらの団子を頬張る自然体なおじさんは、とても可愛らしいです。
奥に描かれている船の上や、画面右のやぐらにいるおじさんの表情なども、すべて描き分けられています。優れた観察眼を持つ広重ならではの表現だと言えます◎
味わい深いおじさんを描いたのは、広重だけではありません。天才浮世絵師の葛飾北斎や、コミカルな戯画を得意とした歌川国芳などが描いたおじさんもあわせて紹介しています。
小林清親《新版三十三相(ちかめ他)》明治15年(1882) 前期展示
また、明治を代表する浮世絵師である小林清親が描いたおじさんも!「光線画」と呼ばれる光と影を情感豊かに捉えた技法で数多くの風景画を残した清親。本作のような戯画も多く手がけていたといいます。
本作は、庶民のさまざまな表情を題材にしたシリーズの1枚で、人物の表情がユーモアたっぷりに描かれています。
こうした当時の人気絵師が描いたおじさんと、広重のおじさんを比べて鑑賞してみるのもおすすめです◎
広重の風景画の中に登場するさまざま「おじさん」たちから、その魅力を再確認する本展。
笑顔のおじさんや仕事を頑張るおじさん、ちょっぴりコミカルな動きをするおじさんなど、普段はじっくりと観ることのない風景画の中に描かれたユニークな人物たちを知ることができる展覧会でした。
お気に入りのおじさんたちを見つけてみるのも楽しいかもしれません◎
歌川広重《魚売》天保前期(1839~35)頃 前期展示