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2024年11月21日
凱旋!岡本太郎/川崎市岡本太郎美術館
こんにちは。
趣味で美術館巡りを楽しんでいる、Sfumart読者レビュアーのかおりです。
岡本太郎。
彼の名前を知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。
名前を知らなくても、彼の作品である大阪の万博公園にある《太陽の塔》は知っている人が大半だと思います。
また、この記事をご覧いただいている方は、昨年夏から今年の春にかけて全国3つの美術館を巡回して大きな話題となった「岡本太郎展」を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
実はこの「岡本太郎展」の展示作品の多くが川崎市岡本太郎美術館の収蔵品でした。
今回、この作品の数々が川崎市岡本太郎美術館に戻ってきたということで、企画されたのが、本展「凱旋!岡本太郎展」です。
入り口で等身大の岡本太郎さんがお出迎え
「岡本太郎展」の熱気冷めやらぬまま、惜しくも見逃してしまった方も、もう一度岡本太郎作品を見たいという方も。
はたまた初めて岡本太郎作品に触れるという方も、大人もこどももどんな方にも楽しんでいただける、ボリューミーで多面的な岡本太郎が見られる展覧会です。
奇抜な言動と作品が印象的な岡本太郎ですが、私自身、今回の展示で岡本太郎をさまざまな角度から見ることができ、「芸術」というものをより身近に感じられるようになりました。
赤の部屋を通り抜けると、展示はパリ時代から始まります。
岡本太郎は18歳の頃に父一平の仕事の都合で家族とともに渡仏、約10年間をパリで過ごしました。
その間に制作された作品は残念ながら戦火により消失してしまいましたが、ここではパリで刊行された岡本太郎初めての画集『OKAMOTO』の図版をもとに、実寸大の写真パネルが展示されていて、当時の作品をみることができます。
実寸大写真パネルで蘇る、失われた作品の数々
それとともに、再制作された代表作のひとつである《傷ましい腕》も展示されています。
《傷ましい腕》
ぐっと拳を握ったたくましい腕はストライプ状に表面が切り取られており、顔の代わりに大きな赤いリボンが配されています。背景は青、濃紺、黒といった色で不穏な空気がただよっています。
インパクトのあるモチーフの配置にはっきりした色使い、力強い筆致に、この時期からすでに「岡本太郎らしさ」が感じられます。
実際、パリ時代にはすでに才能を発揮しており、モンドリアンやカンディンスキーと同じ芸術団体に所属していたというから驚きです。
隣の小部屋には岡本太郎の両親、一平・かの子についてや、幼少期から渡欧前の資料や制作物が展示されているので、こちらものぞいてみるとたのしいですよ。
パリからの帰国後、出兵と終戦を経て、制作を再開し、戦後の前衛芸術家として活動を本格化します。
岡本太郎も一員として活動した前衛芸術の研究会「夜の会」の名称の元となった作品《夜》がこちら。
中央作品が《夜》。岡本太郎作の椅子に座って鑑賞できる
刃物を後ろ手に持ち、凛と佇む少女の姿。
深い夜のとばりの奥へ立ち向かうかのような静けさと荒々しさを同時に感じさせる作品です。
この《夜》の前には背もたれと座面が紐で編まれた椅子が置かれていますが、これも岡本太郎の作品です。
岡本太郎の制作した椅子に座って、《夜》をじっくり鑑賞してみるのもおすすめです。
本作の着想と元となったドローイングも展示されているので、ぜひ見比べてみてください。
以降、絵画だけでない、岡本太郎の幅広い芸術作品が次々と展開されます。
陶磁のオブジェ、モザイクタイルの壁画、もちろん絵画も。
岡本太郎の父・一平の墓にも置かれている《顔》
1958年、東京・神田駅に飾られたモザイク壁画《花ひらく》
《駄々っ子》
キャラクターっぽい愛嬌あるモチーフが増えてきました。
岡本太郎のスクラップブックやアトリエの再現もあって、岡本太郎をより立体的に感じることができます。
再現された岡本太郎のアトリエ
きちんとまとめられたスクラップブックがなんだか意外です。
その後、続々とオブジェが続きます。かわいい。
《午後の日》
私が密かに気に入っているのがこちら、《スモーキングセット》。
私も何か日用品を自分で作ってみたい! と創作意欲がむくむく湧いてくる作品です。
部屋のすみっこにあるので探してみてくださいね!
《スモーキングセット》
続いて人気の2作品の登場です!
《重工業》
工場のような場所で目を引く大きな赤い歯車。その歯車に巻かれるように周りをぐるぐる回る人びと。
右下の大きな人型は火花のようなものを放出しています。
そして画面の中央に横たわる、ネギ。
・・・え?ネギ?!
なんだか根っこがとても写実的。
社会風刺をしていると言われる作品ですが、それだけでは終わらないおかしさを併せ持つため、妙に視線が逸らせません。
《森の掟》
続いて《森の掟》。特に子どもたちに大人気だそう。
鋭く大きな牙を持つ、サメのような獰猛な魚のように見える赤い生き物。
けれど足は動物のようで、真ん中の大きなチャックは開くとどうなるのか。
食べられている人は嘆き絶望しているのか怒っているのか。
逃げ惑うものたちの中には、一目散に逃げるもの、背後の様子を振り返っているもの、余裕しゃくしゃくと離れるものがいたり、遠くから我関せずと見つめるものがいたりとさまざまです。
そしてどことなくただよう、かわいさ。
それが大人だけでなく子どもたちをも惹きつけるのかもしれません。
岡本太郎の作品は、テーブルや椅子といったインテリアデザインにも広がります。
そして、スカーフ、ネクタイといった日常遣いする小物の制作も。
さらには、建築にも携わります。
《マミ会館》
どことなくサメみたいな建物の建築も。現存しないのが残念です。見たかった。
そして少し前にも紹介した、神田駅のモザイク壁画《花ひらく》をはじめ、たくさんのパブリックアートも残しており、その最たるものが今も大阪の万博公園にある《太陽の塔》です。
かねてから旧東京都庁舎の壁画制作などで協業していた丹下健三とのコラボレーションにより、1970年の大阪万博のシンボルゾーンの中央にあるお祭り広場の大屋根を貫くかたちで建てられました。
塔の内部は、「生命の樹」を軸として「地下」「地上」「空中」の3部門が立体的に展示され、観客に強い印象を与えたといいます。
その後も岡本太郎はテレビ番組への出演やCM出演を通してその苛烈な印象を多くの人に与えました。
これはただ目立ちたかったということもあるかもしれませんが、自分がテレビの中から一般の人びとに鮮烈な印象を与えることで、芸術を普段の生活の中に芸術を根付かせるための活動の一環だったのではないでしょうか。
展示の最後には、「描く」コーナーがあります。
これまでの岡本太郎の作品を見て、そして同じ展示会場で岡本太郎の作品に囲まれながら、あなたはどんな作品を描きますか?
ぜひスケッチしたりしながらあなた自身が描いて、岡本太郎の芸術を感じてみてください。
普段とは違った感覚があるかもしれませんよ。
展示の中盤では、「探る」「語る」「見る」「遊ぶ」「ひらく」の5つのテーマで、制作作品以外から岡本太郎を知ることができるコーナーが設けられていました。
積極的なフィールド・ワーク、文筆活動、写真、空間デザイン、パフォーマンス。
著作の文章の抜粋やプライベートのスキー写真、出演したCMの映像なども展示されています。
岡本太郎は作品制作以外でもたくさんの姿を残してきました。
今日でも国内外で熱烈なファンを多数もつ岡本太郎は、とどまるところを知らない彼の情熱に突き動かされた多彩な活動が魅力のひとつとなっているに違いありません。
私個人的には、「苛烈で破天荒な人」という印象のあった岡本太郎。
今回の展示で岡本太郎の作品とその生涯を知ることができてだいぶ印象が変わりました。
ただ破天荒で奇抜なだけでなく、非常に賢く、思考が深く、フットワーク軽く、バイタリティがあり、自分の信念を貫いている人。そしてかわいげのある人。
岡本太郎を好きな人はもちろん、「よく知らないな」と思っている人にこそ行っていただきたい展覧会でした。
おっと、忘れてはいけない。「凱旋 岡本太郎」展では、あの「タローマン」も帰ってきます!!
NHK横浜放送局の全面協力のもと、伝説の番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇 タローマンヒストリア」の上映はもちろん、懐かしの(?)グッズ類の展示や、タローマンとのフォトスポットが!
グッズ販売もあるのでお見逃しなく!
タローマンの隣に座って写真撮影もできます!
2023年8月5日には特集番組「帰ってくれタローマン」も放送予定。こちらも要チェックです!
「帰ってくれタローマン」のネーミングセンスが秀逸・・・!
それでは愉しいアートライフを♪