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2024年11月1日
横尾忠則 ワーイ!★Y字路/横尾忠則現代美術館
横尾忠則現代美術館にて、「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」が、2024年1月27日から開催されています。
横尾忠則といえば、グラフィックデザイナー、美術家、画家、作家と多くの肩書きを持って多彩な表現活動を繰り広げている事で有名ですが、2000年以降はY字路の魅力に魅せられてさまざまなY字路作品を描いています。
そんな横尾忠則のY字路作品を見ることができる展覧会に、早速行って来ました!
Towada Roman 2017 作家蔵
横尾忠則は1936年、兵庫県西脇市に生まれました。
1956年から4年間神戸新聞社にてグラフィックデザイナーとして活動後に独立。グラフィックデザイナーやイラストレーターとして活躍します。
1969年にパリ青年ビエンナーレ版画部門グランプリを受賞。1981年に画家宣言した後は多くの絵画を精力的に描き続けてきました。
2000年以降からY字路作品を描き続け、その数150点以上に上ります。
今回の展覧会では、そのうち69点により、Y字路作品をたっぷり楽しめます。
暗夜光路 N市‐Ⅰ 2000 横尾忠則現代美術蔵
横尾忠則とY字路の出会いは、2000年10月「横尾忠則西脇・記憶の光景展」のために西脇に滞在していた時のことでした。
横尾忠則は、この展覧会で西脇の夜の風景を描くつもりだったのです。
そこで、夜な夜な、カメラ片手に西脇の街に繰り出しては、あちこち撮影して回っていました。
その時、1枚のとても面白い写真を撮ることに成功します。
Y字路の写真です。中央の建物は白く浮き上がり、そこから別れた2本の道は夜の闇に溶けて消えていきます。
これは良いなと思って描いたのが、最初のY字路作品「暗夜光路 N市-Ⅰ」。
思わず背筋がゾクッとしつつも、見入らずにはいられない、不思議な力のある作品です。
1枚目のY字路の絵を描いてから、横尾忠則は憑りつかれたかのようにY字路作品を描き続けます。
「暗夜光路N市‐Ⅰ」、「暗夜光路N市‐Ⅱ」、「暗夜光路N市‐Ⅲ」、「暗夜光路N市‐Ⅳ」は、最初に描いた4枚のY字路です。
どれも西脇の夜のY字路を描いたものですが、この4枚をそろって見ることが出来るのは同館では初だそうで、これも今回の展覧会の見どころの一つとなっています。
ここから、横尾忠則のY字路作品群がスタートしたのですね。この4枚の中に、横尾忠則のY字路作品群の原点を見ることができるような気がします。
朱い水蒸気 2002 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託
2002年に開催された「横尾忠則 森羅万象」(東京都現代美術館)のために、横尾忠則は17点の新作Y字路を描きました。
これらは、Y字路としては異例のカラフルな作品群です。
カラフルなY字路は、その世界そのものが異質な雰囲気を漂わせています。
中央の建物から伸びる2本の道の向こうには、どんな摩訶不思議な世界が待っているのか得体が知れません。
そんな異空間なY字路の世界の前に立ったら、しばらく、この前から動けなくなるような錯覚に陥ります。
とりとめのない彷徨 2002 作家蔵
回転する家 2018 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託)
2018年に描かれた「回転する家」は、「暗夜光路N市‐Ⅰ」と同じ西脇のY字路がモチーフとなっていますが、世界は全く変わっています。
境界線のはっきりしないぼやけた線で描かれており、建物はありえない角度で歪んでいます。
真っ赤なおどろおどろしい空に飛んでいるのは、B29。不吉な予感をいっぱいはらませた1枚に仕上がっています。
この頃には朦朧(もうろう)としたぼやけたタッチの絵画となっていて、これが新たなシリーズ「寒山拾得シリーズ」へとつながっていきます。
頭で考えて描くのではなく、ただ身体が動く通りに描いていくという「寒山拾得シリーズ」。
その片鱗を、2018年頃のÝ字路作品で垣間見ることができます。
横尾忠則は実は、カラフルなY字路を自分ではあまり評価していないようだと、スタッフの方からお伺いしました。
Y字路はやっぱり闇が良いと本人は思っているというのです。
カラフルな異世界のY字路作品も、強く人を惹きつける力とエネルギーに溢れていると私は思います。
ですが、闇をテーマにしたY字路の作品の前に立つと、Y字路は闇だと言った作家本人の気持ちも、分かるような気がしてくるのです。
Y字路を包む夜の闇。昔は当たり前のようにあった闇。妖怪や幽霊が潜んでいるかもしれないと思わせる闇。手を伸ばせば、何か人間の理解を超えるものが潜んでいるような闇。
それらの闇を見つめていると、ゾクッとすると同時に、どこか不思議な懐かしさを感じます。
その懐かしさは、この異質な闇というものは、どの人間の中にも必ずあるものだからではないでしょうか。
そんなことを思いながら、「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」展を後にしました。