終了
ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展
本展は、戦後ドイツ美術の第一人者、ヨーゼフ・ボイス(1921~1986)の作品や活動を、現代日本の視点で検証します。従って、戦後日本の現代作家によるダイアローグ形式の作品構成によって「いまなぜヨーゼフ・ボイスなのか」という問い掛けを行う展覧会となります。
マルセル・デュシャン、アンディ・ウォーホールと並び、20世紀を代表するアーティストであるボイスは、亡くなる2年前の1984年に来日しました。西洋の思想や芸術の長い歴史の土壌で培われたボイスの芸術は、日本人が理解するには難解だと言われますが、8日間の滞在中に、ボイスはインスタレーションやアクション(パフォーマンス)、レクチャーや学生との討論会などの幅広い表現方法を通じて「拡張された芸術概念」を提唱しました。ここでの「芸術」とは、教育活動、政治活動、環境保護活動、宗教なども含めた拡張された意味での芸術活動と芸術作品になります。また、この「拡張された芸術概念」とともに展開したのが、「社会彫刻」という概念です。これは、ボイスの思想と活動の原理と言えます。
つまり、提唱されたこれらの概念は、「すべての人間は芸術家である」というボイスの言葉に代表されます。ボイスの没後38年を過ぎた現在、国際的な美術界において今なお影響力を与えて続けております。
本展では、カスヤの森現代美術館の貴重な所蔵品の中から美術館がヴィトリーヌ(ガラスケース)を任意に配置したヨーゼフ・ボイスの作品となります。因みにヴィトリーヌとは、科学標本と聖遺物の展示ケースや民俗学的・自然史的遺物を収納するガラスケースのフランス語による名称です。ボイスの「ヴィトリーヌ」シリーズは、作家自身によるアクションなどで用いられた遺物を展示する装置として作品化したものです。また、これらのヴィトリーヌ・シリーズの作品は、アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館におけるガラスケースによって展示された遺品と反響するものです。
現代の世界的情勢においても、戦争が絶えません。ボイスにとってドイツが背負うホロコーストの闇はあまりにも深く、これをどう贖い、傷をいかに癒すかに苦闘し続け、それを社会的問題として芸術活動によって投げかけたのです。当時、デュッセルドルフ芸樹アカデミーの学生だったゲルハルト・リヒターは、教師としてのヨーゼフ・ボイスに憧れと反発心を抱きながら大きな影響力をもたらされました。
ヨーゼフ・ボイスとの対話相手となる出品作家は、ボイスと深い交流のあったコンセプチュアルアーティストで、さらに「カスヤの森現代美術館」の設立者の若江漢字、また、自然・都市・写真の関わり合いに主眼をおいた一連の写真作品の制作と来日した当時のボイスのポートレートを撮影した畠山直哉、認識論に基づいて統合的な時間感覚を再考する磯谷博史、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現われるような絵画作品を制作している加茂昂、人間とは異なる視点やふるまいを持つ動物たちとの共作を通して、人と生き物の関係性を再考するAki Inomata、そして都市における「風景」の在り方や、それを取り巻く人々の意識の移ろいを表象する武田萌花の6人の
日本人作家によって、ボイスの現代性を問い掛け、現代におけるアポリアを浮かび上がらせます。
展覧会出展作家:ヨーゼフ・ボイス、若江漢字、畠山直哉、磯谷博史、加茂昂、AKI INOMATA、武田萌花
Event Information
- 展覧会名
- ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展
- 開催期間
- 2024年7月17日~9月24日 終了しました
- 開館時間
- 11:00~20:00
- 入館料
無料
- お問い合わせ