かたわらには、いつもネコ展/刈谷市美術館

猫グッズで割引も!?「かたわらには、いつもネコ展」で紐解く猫と人の140年【刈谷市美術館】

2025年10月4日

猫グッズで割引も!?「かたわらには、いつもネコ展」で紐解く猫と人の140年【刈谷市美術館】

2025年9月13日より、刈谷市美術館で「かたわらには、いつもネコ展」が開催中です。

本展では絵本や雑誌に登場した「猫のイラストレーション」に注目。多様な猫表現の世界を、絵本文化の発展の歴史とともに振り返ります。

会場には実に総数500点を越える猫アートが集結。猫まみれの空間で、新たな推し猫作家を発掘してみませんか?

洋書の翻訳なのに和服?日本人の童話解釈の変遷


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

会場は4つの部屋に分かれており、第1部では1880年代から1940年代の絵雑誌とともに、猫表現の移り変わりを見ることができます。

第1部最初の展示は、1860年代の「ちりめん本」。

ちりめん本とは和紙でありながら絹織物のちりめんのような手触りをした昔噺絵本のことで、明治時代には海外の童話がちりめん本として多言語で翻訳出版されました。


ジェイムズ夫人訳述/鈴木宗三郎(華邨)画(出版:長谷川武次郎)《ちりめん本『日本昔噺 竹篦太郎』》1888年 個人蔵

ここで驚かされたのが、ちりめん本は日本を訪れた外国人が土産物として持ち帰ることが多いということ。

海外でのわかりやすさを優先してか、本来化け物として猿が描かれていた部分が尾の長い猫に差し替えられています。


井上寛一訳/山本昇運画(出版:東陽堂)「西洋仙郷奇談」より《猫君(長靴をはいた猫)》1896年 大阪府立中央図書館 国際児童文学館蔵

かの有名な童話「長靴をはいた猫」が日本で初めて翻訳童話集として収録されたこちらの作品。挿絵を担当したのは、日本画家で石版画家の山本昇雲です。

本来は猫が長靴を履くのに、本作で猫が身にまとうのはなんと紋付袴。当時の作家の海外文化の受け止め方が、今と大きく異なることを象徴する作品です。

絵本作家が生み出すあたたかみある世界


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

1945年の終戦を経て、絵本文化の歴史は転換点を迎えます。第2部では、1950年代から現在までの猫絵本を展示。ダミー本や没イラスト、ラフ画などの作家の顔が見える貴重な展示は必見です。

1956年創刊の「こどものとも」は、それまで当たり前だった1冊に複数話を入れる絵雑誌形式を廃止。「月刊物語絵本」と銘打たれたこの画期的な企画は、日本に「絵本」という言葉を浸透させました。


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

村山知義、横内襄といった個性的な絵本画家が続々と現れ、1960年代には日本に空前の「絵本ブーム」が起きました。


朝倉摂《『スイッチョねこ』原画》1971年 大佛次郎記念館蔵

中でも多くの絵本作家により描かれたのが、あくびとともに虫をのみこんだ子猫の成長を描いた「スイッチョねこ」。

本展では二人の朝倉摂・安泰のふたりが描いた同作の挿絵が並んで展示されています。


安泰《『スイッチョねこ』原画》1975年 大佛次郎記念館蔵

朝倉摂の描いた猫はキャラクター感が強いタッチで、どこかおっちょこちょいな印象。一方の安泰は本作を描くために子猫を飼ったそうで、毛並みまでふかふかな写実的な猫を描いています。

どちらが好みかは人それぞれですが、描いた人の猫に持つイメージによりここまで姿が変わるのかと驚かされる展示です。


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

本展開催にあたり、本館の松本学芸員が敢行した作家インタビューも見どころです。

愛猫・チャッピーとの実話をもとにした絵本を出版する大の愛猫家、ささめやゆきが猫を描く際にあえて画材としてオイルパステルを選んだ理由など、ここだけの内容が盛りだくさんです。

自宅の猫が美術館に!?猫グッズ持参で割引も


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

本展では、猫にちなんだ様々なウィットに富んだ企画が多数開催されています。中でも目玉といえるのが、展示室と展示室の間にあるポスト。


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

「わが家の猫自慢」と題された企画のためのもので、来場者の愛猫の写真をその推しポイントとともに募集。

ポストに投函された写真は、にゃんと、すぐそばのアートボードで展示されます。

自慢の飼い猫が美術館に展示される参加型企画は企画を考案した松本学芸員も驚きの人気ぶりです。


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

また猫グッズ持参あるいは猫の絵柄の入った衣類着用で入場料が100円引きとなる「ねこ割引」も大好評。実に来場者の9割が利用しているのだとか。

お気に入りの猫アートを見つけよう


「かたわらには、いつもネコ展」展示風景

本展は、1880年代から現在まで約140年にわたる猫と人間のかかわりをイラストレーションによる猫表現を通じて振り返るものでした。

ちりめん本、絵雑誌、絵本とさまざまな媒体で描かれてきた猫の姿は、当時の社会情勢や環境を色濃く反映しています。

時代とともに移りかっわった自由気ままな猫の世界は、子どもから大人までどなたにも楽しんでいただけるあたたかみにあふれた展覧会でした。

「わが家の猫自慢」「ねこ割引」と猫に関する企画も盛りだくさんの猫まみれの空間は、きっとあなたに癒しを届けてくれるはずです。

Exhibition Information