ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術/東京都現代美術館

「かさねあわせ・もつれ・かんそく」でめぐる、宇宙+量子+芸術【東京都現代美術館】

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2026年2月16日

「かさねあわせ・かんそく・もつれ」でめぐる、宇宙+量子+芸術【東京都現代美術館】

上映プログラム「ミッション∞インフィニティ」

東京都現代美術館で企画展「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」が始まりました。宇宙や量子などのサイエンス領域とアートのコラボレーションを通じて、「世界の成り立ち」や「見えない世界」に触れていく展覧会です。

量子とは、原子や電子、光子などとても小さな世界で扱われる物質やエネルギーの単位のこと。少し難しそうですが、展示室入口には鑑賞のヒントとして、『かさねあわせ』『もつれ』『かんそく』という、量子の性質にまつわる3つの言葉が掲げられています。

今回は、この3つのキーワードをヒントに本展を巡ってみましょう。


展覧会を楽しむためのヒント

『かさねあわせ』
ーーそんざいの たしかな ふたしかさ

量子の『かさねあわせ』とは、コインの表と裏のような状態がどちらかに定まらず、「どちらもあり得る」状態でいること。それは、一見相反するような要素が同時に存在するような作品ともつながって感じられます。

たとえば、片岡純也さん+岩竹理恵さんの《KEK曲解模型群》。

紙飛行機が回転する黒板の表と裏をすり抜けて行き来したり、「フレミング左手の法則」をモチーフにした手の骨格模型が電磁石によって動いたりと、ユーモラスな動きが目を引く作品です。


片岡純也+岩竹理恵《KEK曲解模型群》

ふたりは高エネルギー加速器研究機構(KEK)に滞在・取材し、研究者と対話をしながらこれらの作品を制作しました。「曲解」というタイトルの言葉のとおり、物理現象を発想の跳躍で別の姿に変換しています。

岩竹理恵さんは、KEKに滞在した感想として「物理学と美術は似ている」とお話されました。既知のものから未知のものを生み出したり、「まだ分からない」ものと向き合ったりする態度は、共通しているのかもしれません。


片岡純也+岩竹理恵《KEK曲解模型群》

会場の最も広い吹き抜け空間で展開されるのは、落合陽一さんによるインスタレーションです。

《物象化する願い、変換される身体(手長)(足長)》は、日本各地の伝承に登場する「手長」「足長」を約7mもの木彫として表現した作品。3Dのデータと機械加工、高山の木工作家とのコラボレーションによって制作されました。

こうした質量のある「彫刻」と対になるように、中央には質量を持たない「映像」の作品《リキッドユニバース:物化する計算機自然、質量への憧憬の転回》が展示されます。

蝶や水の流れ、ブラックホールなどの自然をモチーフとした映像と音は、ループすることなく生成され続けます。人の手技と機械と生成AI、そして、コンピュータと自然といった要素が同居する作品です。


落合陽一《物象化する願い、変換される身体(足長)(手長)》《リキッドユニバース:物化する計算機自然、質量への憧憬の転回》

『もつれ』
ーーとおく はなれていても まるでひとつ

『もつれ』とは、ペアになった量子は遠く離れても、一方を『観測』すると、もう一方の状態が決まる現象として知られています。

比喩的に考えると、離れて見えるものが実はつながっていたり、影響し合ったりする様子にも例えられそうです。

そうした異なる領域の共創で生まれたのは、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)/天文仮想研究所(VSP)/東京藝術大学《はやぶさ2タッチダウン・チャレンジ(東京藝大ドーム検証版)》。

探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで行った、ピンポイントの接地からのサンプル採取の難しさを、ゲームとして追体験できます。

この作品は、JAXA宇宙科学研究所に加え、VRChatで活動する天文ファンのコミュニティ「天文仮想研究所」、そして東京藝術大学の協働で制作されました。宇宙の研究者、芸術を専門とする大学、匿名の作り手たちと、所属も専門も異なる領域がつながります。


JAXA宇宙科学研究所(ISAS)/天文仮想研究所(VSP)/東京藝術大学《はやぶさ2タッチダウン・チャレンジ(東京藝大ドーム検証版)》

他にも、「宇宙」と「ファッション」をつなげたアンリアレイジ ANREALAGE PLANET 2022-23 AW COLLECTION《PLANET》や、「量子コンピュータ」と「アート」をつなげた久保田晃弘さん+QIQBの《Quantum Computer Art Studies》などの作品も。

新しいテクノロジーが「実用」の手前で、まず「アート」として試されていくようすも感じられます。


久保田晃弘+QIQB《Quantum Computer Art Studies》

『かんそく』
ーーみえないときも つきは あるの

さまざまな状態が『重ね合わせ』になった量子は、『観測』することによって状態が定まります。これは、鑑賞によってアート作品が作品として成立したり、作品を観ることで世界の見え方が少し変わったりすることにも似ています。

古澤龍さんによる《Mid Tide #3》は、観る方法を変えることで、身近なものの観え方が大きく変わる作品です。

海の波を記録した映像ですが、波が突然水平方向に長く伸びていくように見えたり、氷のように硬く見えたりと、その様子が変化していきます。

通常、映像は画像が時間軸に積み重なっていきますが、この作品では、映像を時間も含めた立体のように扱い、別の角度から切り出して見せています。普段私たちの目に見えているのとは違った世界の捉え方を体験できる作品です。


古澤龍《Mid Tide #3》

量子の性質や宇宙のようすをゲームや体験で伝える、体感型の展示が多いのもこの展覧会の魅力です。

江渡浩一郎さん+アラレグミによる《波動と粒子の性質を制御するシミュレータ》は、「見る/見ない」で世界が変わる量子のようすをゲームとして遊べる作品です。

シューティングゲームのように、敵の攻撃やスリット(障害物)が現れますが、目を閉じると無敵モードになり、攻撃を避けてスリットもすり抜けられます。そんな現実ではあり得ないようなルールで、波でもあり粒子でもあるという量子の性質を、楽しみながら体験できます。


江渡浩一郎+アラレグミ《波動と粒子の性質を制御するシミュレータ》

まとめ

少し難しそうにも見える宇宙や量子の世界。本展は、その日常の常識からは少し離れた世界の面白さを、アートになぞらえながら体験できるような展覧会でした。

会期中は、参加アーティスト・研究協力者・学芸員によるトークやワークショップが開催予定のほか、2月21日(土)~23日(月・祝)には中高生・専門学校生・大学生の入場が無料となる「学生無料デー」、3月1日(日) ~4月5日(日)には18歳以下(2007年4月2日以降生まれの方)は入場無料となる「Welcome Youth 2026」なども開催されます。

サイエンスとアートの交わる視点から、ふだんとは違ったものの見方の世界に触れてみませんか?


「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」展 参加アーティストと担当学芸員