塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
お雛さま―岩﨑小彌太邸へようこそ/静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)
2022年10月に、世田谷岡本から東京丸の内に移転した「静嘉堂文庫美術館」。重要文化財建築、明治生命館(昭和9年〈1934〉竣工)1階に移転後、新美術館開館記念展を2回開催してきました。
その第3弾となる展覧会「お雛さま―岩﨑小彌太邸へようこそ」が、2023年3月26日まで開催中です。
五世大木平藏「岩﨑家雛人形のうち内裏雛」昭和初期(20世紀)静嘉堂文庫美術館蔵
本展では、静嘉堂コレクションの礎を作った岩﨑小彌太(こやた/三菱第4第社長・1879-1945)が孝子(たかこ)夫人のために特注したお雛さまを展示。
さらに、初公開となる川端玉章(ぎょくしょう)などの作品をお雛さまと合わせて紹介します。
3月3日の「雛まつり」は、女の子の健やかな成長を祈る“桃の節句”として、江戸時代に広がりました。
本展の序章では、岩崎家に残された絵画や工芸品から江戸時代の雛まつりを紹介します。
立雛(次郎左衛門頭)江戸時代(18世紀~18世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
こちらの立雛は、宝暦年間(1751~64)に京の雛屋次郎左衛門によって作られた「次郎左衛門雛」と呼ばれる様式の作品です。
この様式の立雛は、丸い頭(かしら)に小さな目鼻が特徴とのこと。豪華な衣裳には、能の演目である「高砂(たかさご)」が描かれています。
岩﨑家のお雛さまは、岩﨑小彌太が昭和の初め頃、孝子夫人のために、京都の丸平大木人形店に特注したものと言われています。
(奥)五世大木平藏「岩﨑家雛人形のうち内裏雛」
(手前)五世大木平藏「岩﨑家雛人形のうち三人官女」
いずれも、昭和前期(20世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
「お内裏さま」と「お雛さま」と聞いて思い浮かべるのは、成人した男女の姿ではないでしょうか。小彌太が特注したのは愛らしい子どもの姿をした雛人形でした。
皇太子御成婚を設定した衣装や、お内裏さまとお雛さまの小さな口からチラリと見える象牙の歯など、贅を尽くした岩﨑家の雛人形。当時の技術の粋が集まった本作は、昭和初期の美術工芸の名品として広く知られています。
(上段)五世大木平藏「岩﨑家雛人形のうち五人囃子」
(下段)五世大木平藏「岩﨑家雛人形のうち随身 、右大臣(右近少将)」
いずれも、昭和前期(20世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
岩﨑家の雛人形は、昭和4年(1929)に竣工した小彌太の麻布鳥居坂本邸(現:港区六本木、国際文化会館)の客間で披露されました。
本展では、岩﨑家の雛人形一式を、3mにもおよぶ川端玉章の巨大な「墨梅図屏風」の前に飾り、邸宅の大広間に飾られていた姿に近い形で、岩崎家の雛人形が楽しめますよ◎
川端玉章「墨梅図屏風」明治時代(19~20世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
実は本作、世田谷岡本の静嘉堂文庫美術館では大きすぎて展示することが難しかったとのこと。天井の高い「静嘉堂@丸の内」への移転をきっかけに、本展で初公開となります!
小森忍「冝均釉獅子」昭和3~9年(1928~34)静嘉堂文庫美術館蔵
さらに本展では、鳥居坂本邸を彩った屋敷のタイルや、小森忍「冝均釉獅子(ぎきんゆうしし)」なども展示しています。
小森忍は、中国の古陶磁を研究し日本の窯業技術の発展に尽力した人物です。また、釉薬研究の第一人者でもあり、小彌太はその研究を支援したといいます。
本作は小森が昭和2年(1927)、愛知県瀬戸市に開いた山茶窯(さざんよう)で制作されたと考えられています。
岩崎小彌太の邸宅であった鳥居坂本邸の豪華な雛まつりを味わうことができる本展。
隣接するミュージアムショップでは、お内裏さまとお雛さま、そして三人官女のマグネットが販売されています。
おうちで手軽に岩崎家のお雛さまを飾ることができますよ◎また、お子さんへのお土産にもおすすめです。
今年のお雛さまは「静嘉堂@丸の内」で堪能してみては?
国宝《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12世紀~13世紀)静嘉堂文庫美術館蔵
また、本展では静嘉堂の顔とも言える国宝《曜変天目(稲葉天目)》も展示されています。こちらもお見逃しなく!