光陰礼讃 ―近代日本最初の洋画コレクション/泉屋博古館

新緑あふれる京都。住友コレクションの本格的な洋画を堪能しよう【読者レビュー】

2023年4月21日

光陰礼讃 ―近代日本最初の洋画コレクション/泉屋博古館

京都の泉屋博古館(せんおくはくこかん)にて開催中の「光陰礼讃 ―近代日本最初の洋画コレクション」に行ってきましたので、皆さまにご紹介します。

春は、京都を訪れるには持ってこいの良い季節です。
新緑を楽しみがてら、住友閣下(!)のコレクションを見に行きませんか?

~展覧会の構成~
第1章 光と陰の時代 -印象派と古典派
第2章 関西美術院と太平洋画会の画家たち
第3章 東京美術学校派と官展の画家

~おすすめポイント~
1. 明治時代の富豪の華やかさを感じられる
2. 印象派と古典派、それに影響を受けた日本人画家の洋画を楽しめる
3. 静かな空間でじっくり作品を楽しめる
4. 併せて寺社仏閣や別の美術館をハシゴできる

1. 明治時代の富豪の華やかさを感じられる

泉屋博古館は、住友財閥の創業者一族の美術コレクションを保存公開するために建てられました。

今回の展覧会は、住友家15代当主 住友吉左衞門友純(雅号 春翠)が蒐集した近代絵画をメインに構成されています。


クロード・モネ《モンソー公園》 1876年  泉屋博古館東京

友純のコレクションは、欧米視察中にパリでモネの油彩画2点を購入した事から始まりました。
最初に買ったのがモネだなんて、センスがありますよね。

その後も継続的に近代絵画を買い集め、須磨の別邸に飾ったそうです。なんと華やかなエピソード!

須磨別邸は残念ながら火事で消失してしまいましたが、須磨の別邸の模型が、展示室の外に飾られているので是非チェックしてみてください。
とにかく広くてモダンな建物で、住友家の当時の経済力の大きさを感じ取れます。

作品の買い付けを担ったのは、春翠が留学を支援していた洋画家 鹿子木孟郎(かのこぎたけしろう)です。
鹿子木は、パリでアカデミズムの巨匠ジャン=ポール・ローランスの下で学びながら、春翠に代わり、フランス外光派や英国ロイヤル・アカデミーの画家たちの作品を買い求めました。


ジャン=ポール・ローランス《マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち》 1877年  泉屋博古館東京

ローランスは、自分の作品を次々購入する日本の富豪に興味を持ち、春翠を気にかけていたとの解説がありました。
自国の若手アーティストの活動を支援し、海外の巨匠からも関心を持たれる・・・。

経済力のある趣味人の、あるべき姿だと感じました。

鹿子木が春翠へ宛てた手紙で、春翠のことを「閣下」と呼んでいたのが、とても印象的でした。

2. 印象派と古典派、それに影響を受けた日本人画家の洋画を楽しめる

鹿子木はサロンで入選を果たした後、帰国し関西美術院や太平洋画会、文展(文部省美術展覧会)で活躍しました。
鹿子木の作品はもちろん、関西美術院の院長だった浅井忠や、近代洋画の父 黒田清輝に師事した藤島武二らの作品もコレクションに加わりました。


藤島武二《幸ある朝》 1908年  泉屋博古館東京

今回、春翠が購入したモネから、鹿子木が買い付けたフランスの印象派や古典派、そしてフランス流の外光表現を学んだ日本人画家たちの作品を、連続して鑑賞することができます。

続けて見ると、油彩で描かれる日本の風景は、なんだか新鮮に感じられました。

3. 静かな空間で作品をじっくり楽しめる

会場はひと部屋にまとまっていて、コンパクトで見やすい展覧会です。

私は会期中の土曜日の午後に訪れましたが、とても鑑賞しやすかったです。
混雑している大規模企画展ではなかなか難しい、じっくり時間をかけて作品を味わうことができます。

東山を借景した中庭や、美しい前庭も、空いているので写真が撮りやすくオススメです。

4. 併せて寺社仏閣や別の美術館をハシゴできる

泉屋博古館の最寄駅は、地下鉄東西線 蹴上駅です。

ひとつ隣の東山駅にある京都市京セラ美術館や京都国立近代美術館とも近く、徒歩20分かからない位なので、ハシゴできます。
また平安神宮へは徒歩15分程度。もっと近くには、今年の干支であるウサギと縁が深い岡崎神社もあります。
美術展と共に、東山エリアを満喫してみてはいかがでしょうか?

Exhibition Information

展覧会名
光陰礼讃 ―近代日本最初の洋画コレクション
開催期間
2023年3月14日~5月21日 終了しました
会場
泉屋博古館
公式サイト
https://sen-oku.or.jp/kyoto/