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2024年11月1日
佐伯祐三 ―自画像としての風景/大阪中之島美術館
2023年2月2日に開館1周年を迎えた大阪中之島美術館。開館1周年特別展として「デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン」とともに、「佐伯祐三 ― 自画像としての風景」が開催中です。
現在の大阪市北区に生まれ、わずか4年あまりの本格的な画業のなかで、独自の芸術を見つけ出した洋画家・佐伯祐三。彼が生涯において制作した作品を一挙に展示する、この大規模な回顧展は、大阪では15年ぶりの開催となります。
本展では、自画像や風景画、静物画などを、佐伯が作品を描いた土地「大阪と東京」「パリ」「ヴィリエ=シュル=モラン」の3章にわけて紹介。
佐伯が描いた対象、場所、色彩などから「彼は何を描こうとしたのか」「どのような精神性を持っていたのか」と、作品から“画家”に想いを馳せる展示となっています。
佐伯祐三(1898-1928)は、「大阪」「東京」「パリ」の3つの街に生きた洋画家。短い生涯のなかで追求し続けた「繊細で跳ねるような線で都市の風景を描く」独自の画風は、今も人びとを魅了し続けています。
そして、そんな佐伯祐三作品の寄贈が、本展が開催されている大阪中之島美術館誕生のきっかけとなったのです。
美術館にとって原点回帰ともいえる本展のタイトルは『佐伯祐三 ― 自画像としての風景』。佐伯が自分を表現する対象を「自画像」から「風景」に移したことから、このタイトルが付けられました。
佐伯といえば、わずか4年あまりの本格画業のなかで独自の風景画を確立させたことから、その「天才伝説」がクローズアップされがちです。
しかし、本展では少し違う角度で、佐伯の「内面」に着目。描かれた街の風景から、“その先”に思いを巡らせるより、佐伯が街に見出したもの、表現しようとしたものを感じ取りながら、作品から画家を理解する鑑賞体験が提供されています。
作品を描いた街ごとに章が構成されている本展をまわりながら、画家の深い精神性に想いを馳せてみてください。
美術館における展示構成は「年代順」がもっともオーソドックスですが、本展では「佐伯が何を成そうとしたのか」を考えるきっかけになればと、あえて年代が組み替えられています。
展覧会風景 1章 | 大阪と東京
第1章「大阪と東京」では、パリからの一時帰国時に描いた作品も含めて、日本で描いた風景を展示。
パリでの時間を挟まずに見ることで、これまでは「一時帰国時の作品には力がない」とあまり重要視されてこなかった作品の見え方も変わってくるかもしれません。
また、第2章のパリ時代は「線のパリ」と「壁のパリ」にわけて展示されています。
展覧会風景 2章 | 線のパリ
展覧会風景 2章 | 壁のパリ
特徴的な線で表現された街並み、壁から浮かび上がってくるように描かれたポスターなど、「線」と「壁」の両作品の共通点や違いから、ここにも佐伯の芸術の新たな魅力と出会えるでしょう。
たとえば、パリの街角が独特のタッチで描かれている《エッフェル塔の見える街角》からは、普通なら通り過ぎてしまうような、一見絵画映えしないようなところに美を見出す佐伯の感性が伝わってきます。
一方の「壁のパリ」に展示されている《ガス灯と広告》は、読めない文字で埋め尽くされた色彩のあるポスターが印象的。
佐伯祐三《ガス灯と広告》1927年 東京国立近代美術館
絵の具や筆、ナイフで直接描いた勢いのある画風からは、自分の芸術を見つけようと必死にキャンバスと向き合う佐伯の姿が思い浮かぶよう。
このように描いた街ごとに、また同じ街でも描く対象やタッチが異なるので、一つの作品を十分に堪能した後は、ぜひ他の作品と比較しながら鑑賞してみてくださいね。
本展は年代順が組み替えられた展示構成に加えて、同じ対象を描いた作品を横一列に並べた展示も特徴の一つです。
(左から)佐伯祐三《コルドヌリ(靴屋)》1925年頃 茨城近代美術館/佐伯祐三《コルドヌリ(靴屋)》1925年 石橋財団アーティゾン美術館
佐伯が一つの対象にこだわって何点もの作品を描いたことはよく知られており、どの作品も比較的かっちり描いたものと、少し崩して描いたものが混ざっています。
このスタイルは「技法の一つとして速書きを取り入れたのではないか」とも言われているそうですが、その確かな理由はわかっていません。同じような作品が複数並ぶ展示に、「佐伯祐三はなぜ同じ対象を描き続けたのだろうか」と想像を掻き立てられますね。
そして1928年2月、佐伯が写生旅行として最後に訪れた農村『ヴィリエ=シュル=モラン』での作品を展示した第3章。
展示会風景 3章 | ヴィリエ=シュル=モラン
こちらでも、ヴィリエ=シュル=モランから3㎞ほど離れた場所にあるサン=ジェルマン=シュル=モランにある「サン=ジェルマン教会」をモデルとして描いた《モランの寺》が壁一面に複数展示されています。
佐伯がサン=ジェルマン教会を訪れたのは寒さが厳しい冬。体力を奪われながらも必死で描き切ったこの作品群は、佐伯の最後のまとまった制作となりました。
命を削りながら描かれた《モランの寺》は、どれも角度を変えると、これまでは気がつかなかった色彩や線づかいが見えてきて、また新たな魅力を発見できます。訪れた際はぜひ、正面だけでなく、右や左にも動いて鑑賞してみてください。
会場でレンタルできる音声ガイド
本展は作品の説明はもちろんのこと、章ごとに壁のカラーが変えられていたり、自画像や静物画などジャンルでまとめられていたりと、直感的にもとても理解しやすい展示になっています。
音声ガイドの貸し出しもあるので、より理解を深めたい方はレンタルしてから鑑賞するのがおすすめです。ちなみにナビゲーターは、佐伯祐三と同じ北野高校(大阪)出身の有働由美子さんが務めています!
描かれた作品から画家の思想に想いを馳せる本展。他にはない切り口と展示方式で、最後まで新鮮な気持ちで「佐伯祐三」という一人の画家に向き合える展示でした。