アートな街歩き(上野〜谷中編)昭和の名建築を巡りながら、アートや昭和の懐かしい雰囲気を楽しみます

2023年6月29日

アートな街歩き(上野〜谷中編)昭和の名建築を巡りながら、アートや昭和の懐かしい雰囲気を楽しみます

アートな街歩き第二弾は上野から谷中へ。

上野公園はミュージアムがたくさんある場所で、寺町でもある谷中は、ギャラリーや手作りの小物屋が点在していて、休日にブラブラ散策するには最適なエリアです。

そんな上野から谷中でおすすめのスポットをいくつかご紹介していきます。

〈上野公園内〉
「色彩の魔術師」の異名を持つアンリ・マティスの回顧展

スタートは、東京都美術館。通称トビカンともよばれる日本初の公立美術館です。

1926年に落成された東京”府”美術館は、秋に展覧会が多く開かれたことから、「芸術の秋」の由来の一つともされます。ただ、この初代東京都美術館は、照明が暗かったり、経年劣化により床のきしむ音がしたりと評判はよくなく、さらには、入館者も増えたことにより、耐震性の不安から、1960年代後半に建て直しが決定。設計を担当したのはモダニズム建築で知られる前川國男。ル・コルビュジエのアトリエで学び、上野公園内の国立西洋美術館の施工管理や、東京文化会館の設計での実績がありました。新館が1975年に竣工、その後大規模な改修工事を経て、2012年にリニューアルオープンしました。

東京都美術館では、大規模な展覧会や公募展など、さまざまな展示が行われており、都内でも有数の美術館となっています。

現在、同館ではアンリ・マティスの20年ぶりの大規模な回顧展が開催されています。この展覧会は、パリのポンピドゥー・センターとの緊密な協力のもとで行われています。

展示の見どころは、「色彩の魔術師」と称される所以ともなった赤い部屋の作品や、彼が72歳で始めた切り紙絵などです。さらに、彼の集大成であるロザリオ礼拝堂関連の展示もあります。

この展覧会では、初期から晩年までのマティスの画業を一望することができる、まさに大規模な回顧展となっています。


会場内1階には、「色彩の魔術師」たる所以のカラフルな絵が並びます

展覧会名:マティス展 Henri Matisse: The Path to Color
開催期間:2023年4月27日~8月20日
会場:東京都美術館
公式サイト:https://www.tobikan.jp/

〈上野公園12丁目〉
明治期洋風建築を体現した国立の子ども図書館

東京都美術館の裏側から谷中方面に歩くと、東京国立博物館の敷地の角に「旧博物館動物園駅 博物館口跡」という建物があります。かつて京成電鉄で使用されていた駅で、現在は電車は停まりませんが、地下を通って走っています。

2019年には構内を使ったアートイベントで建物が公開されたことがありました。その際には、昔の雰囲気が残っており、再度公開されることを心待ちにしています。


交差点角に、「旧博物館動物園駅 博物館口」の入口が残っています

散策を再開します。向かいの上島珈琲店の手前を右折すると、すぐに国立国会図書館国際子ども図書館(以下、国際子ども図書館)が見えてきます。この図書館は、国立の児童書専門図書館であり、子ども向けの本が集められています。

建物は歴史あるもので、明治時代の洋風建築でルネサンス様式を取り入れ、1906年に帝国図書館として完成しました。かつては「上野の図書館」として親しまれ、戦後には国立国会図書館支部上野図書館に移管されました。そして、全面的な改修が行われた後、2000年5月5日の子どもの日に現在の国際子ども図書館として開館しました。建物内には、安藤忠雄氏によってレンガ棟(旧館)の中庭側を覆うように新設された廊下のおかげで、かつて外壁だった白い化粧レンガを至近距離で見ることができます。

現在の蔵書は約33万冊であり、児童書専門図書館としては、日本でも最高水準の蔵書を誇っています。


ルネサンス様式を取り入れた国際子ども図書館の正面の外観

3階にある本のミュージアムの部屋では、国際子ども図書館の建築の歴史を紹介する展示が行われています。帝国図書館時代に行われた展示会の品々が展示され、帝国図書館の存在そのものに焦点が当てられています。

通常は撮影が禁止されている本のミュージアムの部屋ですが、展示会期間中は自由に撮影することができます。


国際子ども図書館の内装意匠

展覧会名:「東洋一」の夢 帝国図書館展
開催期間:2023年3月28日~7月16日
会場:国立国会図書館国際子ども図書館
公式サイト:https://www.kodomo.go.jp/

〈上野公園12丁目〉
藝大のさまざまな学部・学科の作品が展示されるギャラリー

上島珈琲店の方に戻り、向かいにある「藝大アートプラザ」は、東京藝大のキャンパス内にあり、年に6本前後の企画展が開催されています。

特徴的な点は、東京藝大の学生、卒業生、教員など、藝大に関わる作家たちの作品が展示されていることです。展示されている作品は、油絵や日本画はもちろん、彫刻や工芸、デザインなど、さまざまな学部や学科の出身者によるもので、一つのテーマに対して異なったアプローチが見られるのが魅力です。


ギャラリー外では、テーブルでオープンカフェを楽しめます

現在開催されている展覧会は「神」をテーマにしています。神話を基にした創作や神を具現化した作品、また神々の存在についての疑問を探るなど、さまざまな視点から神々の物語にアプローチしています。

前期では、イケメン仏画で知られる木村了子や、今年の資生堂ギャラリーの「shiseido art egg」で注目を浴びた岡ともみの作品も展示されていました。7月1日に始まる後期より展示替え予定となります。


ギャラリー内では、さまざま学部・学科出身の作品が一同に閲覧できます

展覧会名:藝大神話ーGEISHIN
開催期間:2023年6月3日~7月23日
会場:藝大アートプラザ
公式サイト:https://artplaza.geidai.ac.jp/

〈上野桜木〉
昭和レトロな古民家で、のんびりした時間を過ごす


築100年を超える「カヤバ珈琲」では、昔ながらの日本の喫茶文化を味わうことができます


2015年に昭和13年築の日本家屋をリノベーションした集合施設「上野桜木あたり」

カヤバ珈琲を眺めながら、さらに谷中方面へ進むと、右手少し奥に昭和13年築の日本家屋を利用した集合施設「上野桜木あたり」があります。

ここでは、素材と製法にこだわったパン屋「Think」や、オリジナルのクラフトビールが楽しめる「谷中ビアホール」、そして個性的な雑貨が溢れる「カタテマ」など、昭和レトロを感じる空間が広がっています。


素材と製法にこだわったパンが並ぶ「Think」の店内の様子


オリジナルのクラフトビールが楽しめる「谷中ビアホール」の店内の様子

上野桜木あたり
公式サイト:https://uenosakuragiatari.jp/

〈谷中6丁目〉
外観は昔ながらの銭湯、一歩中に入ると現代アート作品が


スカイザバスハウスの外観は200年の歴史を持つ由緒ある銭湯

「スカイザバスハウス」は、現代アートに特化したギャラリースペースです。200年の歴史を持つ由緒ある銭湯「柏湯」を改装し、内装は一部手を加えつつも、番台や湯船の高い壁の構造は昔のままです。

ホワイトキューブの白い壁面が広がる空間では、神谷徹の繊細な色のグラデーションが特徴的なアクリル絵画が展示されています。高さ6メートルに及ぶ細長い作品を含め、10数点が展示されており、白い壁面との相まった環境で、時を忘れて作品を楽しむことができます。

展覧会名:神谷徹「息/瞼の裏/なぞる」
開催期間:2023年5月9日~7月23日
会場:スカイザバスハウス
公式サイト:https://www.scaithebathhouse.com/ja/

〈谷中7丁目〉
彫刻作品やアトリエ、芸術家の住まいまで楽しめるスポット

「台東区立朝倉彫塑館」は、朝倉彫塑館通りを直進すると右手に現れます。この建物は彫刻家・朝倉文夫のアトリエ兼住居で、彼自身が1935年に設計しました。朝倉文夫の亡くなった後、建物は一般公開され、1986年には台東区立朝倉彫塑館と名付けられました。

建物自体は2001年に国の有形文化財に指定され、敷地全体は2008年に「旧朝倉文夫氏庭園」として国の名勝に指定されました。保存修復工事によって、朝倉文夫の生前の姿を再現し、彼の日常を追体験することができます。


朝倉文夫自身が1935年に設計した朝倉彫塑館の現在の正面玄関

高さ8.5メートルのアトリエに陳列されている彫刻の数々、建物中央の贅沢な景観の五典の池と呼ばれる庭園、生活を感じさせる和室、自然をこよなく愛した朝倉が作り上げた屋上の空中庭園と見どころは盛りだくさんです。

注意点としては、館内は土足禁止になってますので、裸足でのご入館が禁止されています。これからの季節、サンダル履きの方は、靴下持参で訪館されるようお願いします。


館内で唯一撮影可能な部屋「蘭の間」には陳列された猫の彫刻たち

展覧会名:【常設展示内】特集「関東大震災と朝倉文夫」
開催期間:2023年6月3日~9月3日
会場:台東区立朝倉彫塑館
公式サイト:https://www.taitocity.net/zaidan/asakura/

〈谷中3丁目〉
下町情緒が味わえる商店街でメンチなど名物グルメを食べ歩き

朝倉彫塑館を出てセブンイレブンを左折すると、すぐに「谷中銀座商店街」が現れます。この商店街は昭和20年ごろに誕生し、全長約170mにわたり雑貨屋、パン屋、酒屋、総菜屋、お土産屋など、さまざまな店舗が60軒ほど軒を連ねています。

昔ながらの下町の商店街の雰囲気を楽しむことができる場所であり、外国人観光客にも人気の観光地となっています。特に谷中メンチやお団子、ジェラートなどの名物を味わいながらの散策は楽しいものです。

また、石段の上から商店街を越しに夕陽を見ることができる夕焼けだんだんは是非日没の時間に行ってみてください(晴れている場合に限ります)。

なお、帰り道は、日暮里駅か千駄木駅が近いので、こちらからそのまま帰路に着かれることをおすすめします。


名物の「谷中メンチ」を歩きながら食べるのも楽しみのひとつ


晴れていれば「夕焼けだんだん」と呼ばれる石段からは日没時には夕陽が見られます。

谷中銀座
公式サイト:https://www.yanakaginza.com/

さいごに

今回のルートは、谷中銀座までの約3kmの道のりです。1日かけて、美術館に立ち寄ったり、さまざまなお店を巡るにはちょうどいい距離です。

谷中にはお寺だけでなく、古民家カフェやギャラリー、手作りの小物などのお店も点在しており、昔ながらの文化とアートを一緒に楽しむことができるコースです。

特に夏場は熱中症対策をしっかりと行いながら挑戦してみるのも良いでしょう。涼しい風景を楽しみながら歩きましょう。