美人画 麗しきキモノ/太田記念美術館

江戸の小粋な着こなし「キモノ」を浮世絵で紹介【太田記念美術館】

2023年9月4日

美人画 麗しきキモノ/太田記念美術館


展示風景(前期展示)

太田記念美術館にて、主に「美人画」に描かれた魅力的な「キモノ」を紹介する展覧会が開催中です。

本展では江戸前期から昭和初期にかけての作品を、前後期あわせて約130点を展示。

美人画の歴史が通観できることはもちろん、時代とともに変化する流行や着こなし、そして吉祥文様や古来愛された意匠についても紹介します。

時代を代表する浮世絵師たちによる
「美人画」が大集合!

江戸前期から昭和初期にかけて約250年にわたる浮世絵の美人画を紹介する本展では、各時代を代表する浮世絵師の貴重な作品を観ることができます。


喜多川歌麿《冨本豊ひな》寛政5年(1783)頃 前期展示

美人画の名手である喜多川歌麿が描いた本作。描かれている女性は、吉原玉村屋お抱えの芸者で、富本節で名声を得た富本豊雛(とみもととよひな)です。

髙島おひさや難波屋おきたと並び評判の美人であった豊雛を、当時歌麿が積極的に取り組んでいた「美人大首絵」で描いた本作。

背景には、雲母(うんも)という鉱物の粉末を一面に用いた「雲母摺(きらずり)」を施しています。

キラキラとした背景が、豊雛の姿に華やかさをそ添えています。展示会場で、ぜひ背景の輝きもご覧ください。


展示風景(前期展示)

大正時代に、渡邊庄三郎が提唱した「新版画」も展示。

伊東深水や樋口五葉などの有名な新版画の絵師のほか、大阪を中心に活躍した女流画家の島成園(しませいえん)の作品も紹介しています。


(左)島成園《新浮世絵美人合 七月 ゆあがり》大正6年(1917)5月
(右)山川秀峰《赤い襟》昭和3年(1928)2月 いずれも前期展示

約250年にわたる浮世絵の美人画を一気に観ることができる本展。

浮世絵が好きな人はもちろん、これから浮世絵に触れるという人も楽しめる展覧会です。

江戸っ子のオシャレを堪能!
キモノに描かれた模様にも注目

キモノには、さまざまな模様があしらわれています。

本展では、模様の意味についても掘り下げ、浮世絵に描かれた女性たちが、キモノの模様の美しさだけでなく、それぞれの模様が持つ物語も身近に感じ、楽しんでいたようすも紹介しています。


菱川師房《美人遊歩図》元禄期(1888-1704)頃 前期展示

こちらは、菱川師房(ひしかわもろふさ)による肉筆画《美人遊歩図》。遊女とその妹分である禿(かむろ)が、歩いているようすが描かれています。

師房は、東京国立博物館が所蔵する国宝《見返り美人図》の作者、菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の息子です。


菱川師房《美人遊歩図》(部分)元禄期(1888-1704)頃 前期展示

遊女の雅な佇まいに華やかさを添えるのが、鮮やかな赤色の振袖を着た禿です。

禿の振袖と遊女の帯に注目。どちらも桜の模様が描かれています。

禿が着るキモノは、遊女から贈られるものが多いのだそう。遊女は自分の妹分である禿を着飾り、自分の地位を示していたといいます。

そのため、遊女と禿が描かれた作品では、帯やキモノの模様がリンクしたコーデが楽しめます。


(左)鳥居清長《三囲参詣の往来》天明7年(1787)頃
(右)喜多川歌麿《扇屋内瀧川 男なみ 女なみ》寛政期(1789-1801)頃 いずれも前期展示

どこがお揃いになっているのかを確かめながら、浮世絵を鑑賞してみると新しい発見があるかもしれません。

オシャレは男子だって!
江戸の和装男子コレクションも

女性だけではなく、江戸時代の男性たちも装うことに情熱を傾けました。

浮世絵には暗い色味のキモノに赤い帯をあわせる「腹切帯」と称される独特の着こなしや、輸入品である金唐革を使用した煙草入れなど男性たちの小物へのこだわりも、浮世絵の至るところに描かれています。


歌川豊国《十二ヶ月之内 卯月 初代市川団十郎 初鰹のさらはれ奴僕》文化11年(1814)5月 前期展示


歌川国貞(三代豊国)《御あつらへ三色弁慶》万延元年(1860)6月 前期展示

青・赤・黒の三色に分けられた弁慶縞模様(*)を背景に、当時の若手人気俳優を描いた《御あつらへ三色弁慶》。

役者たちは、短い縞を縦横に配した「三崩(さんくずし)」や「二崩(にくずし)」の総模様をあしらった浴衣を、小粋に着こなしています。

女性の着こなしとは違う、男性ならではのワイルドな着こなしにも注目です。

*弁慶縞模様:の二種の色糸を、経(たていと)・緯(よこいと)双方に使用し、格子形に織ったもの。山伏姿の弁慶の舞台衣装が名前の由来とされている。

 

 

最新のモードをまとった女性を描いた「美人画」から、日本文化の豊かさを紹介する展覧会「美人画 麗しきキモノ」。

肉筆画も数多く展示されているので、見ごたえばっちりです!

本展の見どころを担当学芸員が開設する「学芸員によるスライドトーク」も、会期中に開催。

【学芸員によるスライドトーク 日程】
9月12日(火)、9月21日(木)、10月3日(火)、10月11日(水)、10月19日(木)
各回11:00より 約30分程度 定員50名(当日10:30より美術館受付にて整理券を配布)

もっと「美人画」について知りたい方は、こちらのスライドトークにも参加してみてはいかがでしょうか。


展示風景(前期展示)

Exhibition Information

展覧会名
美人画 麗しきキモノ
開催期間
2023年9月1日~10月22日 終了しました
会場
太田記念美術館
公式サイト
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
注意事項

前後期で全点展示替え
前期:9月1日~9月24日
後期:9月30日~10月22日