2021年10月12日

洋画家・遠藤彰子の圧巻の超大型絵画作品を紹介!平塚市美術館で開催中

開館30周年記念 物語る 遠藤彰子展/平塚市美術館


開館30周年記念 物語る 遠藤彰子展 展示風景より

全国の美術館で大がかりな個展が開催されるなど、現在もっとも注目されている洋画家・遠藤彰子(えんどう あきこ)。

1947年、遠藤氏は東京都中野に生まれました。幼いころから絵が好きだったという彼女は、武蔵野美術短期大学油絵科に入学し、本格的に絵画を学びます。

卒業後、精力的に創作活動し、さまざまな賞を受賞しています。なかでも、キャンバスの最大寸法である500号を結合した1000号、1500号などの超大作は、遠藤氏の代表的な作品として高い評価を得ています。

関東圏内では久しぶりの個展の開催となる本展では、遠藤氏の超大作を中心に紹介。また、平塚市美術館開館30周年を記念する本展のために描かれた新作を含む38点の作品を展示します。

※展覧会詳細はこちら

平塚市美術館開館の経緯

1991年3月に開館し、2021年で開館30周年を迎えた平塚市美術館。

開館の経緯は、戦後まもないころ展覧会を自主的に開いていた地域の作家たちが、美術館建設を計画したことに始まります。

1960年代初めには、市への「一作家一作品寄贈運動」が始まり、学校や公民館、図書館の建設に続いて、1976年に平塚市博物館が開館。そこに美術部門が設置されました。
その後、生涯学習と美術館建設の全国的な動きと同じく、平塚でも1984年に美術館建設研究委員会が発足したことで、美術館の開館へ向けての具体的な動きが始まり、同館の開館に至りました。

画家デビューのきっかけとなった「楽園」シリーズ

1972年、遠藤氏は女流画家協会展に出品した《楽園》がマツダ賞を受賞し、画家としてのデビューを果たしました。

この1970年代に制作された作品群は「楽園」シリーズと呼ばれ、ゾウやネコ、クマなどのさまざまな動物と人間が素朴な童画風に描かれていることが特徴です。

この時期のことを、遠藤氏は「描くことが楽しくて仕方なかった」と語っています。

しかし、当時全盛期であった抽象絵画と自身の画風が大きくズレていたことにより、表現方法について試行錯誤していたんだとか。


(上から)《楽園の住人たち》1974年/《楽園》1970年 いずれも、作家蔵

ちなみに、同館が建つ平塚を含む”湘南”と呼ばれる地域には、明治時代(19世紀末)から多くの芸術家が居住し、芸術運動を展開してきました。

たとえば、日本の近代美術や文学に大きな影響を与えた雑誌『白樺』は鎌倉で、また油彩画の新しいスタイルを追求した岸田劉生の草土社は鵠沼(くげぬま)など、それぞれ湘南の地域で活動が展開されました。

遠藤氏も1968年に武蔵野美術短期大学油絵科を卒業、翌年の結婚をきっかけに相模原市にアトリエを構えました。現在も同市に在住し、精力的に創作活動を続けています。


(左から)《音楽》1975年/《楽園の住人たち》1974年 いずれも、作家蔵

これらの「楽園」シリーズは、都内から自然豊かな相模原に移ったことから誕生しました。

鑑賞しているとどこか楽しげな雰囲気になれる「楽園」シリーズ。しばらく外出が制限されて、モヤモヤが溜まった心がスッと晴れるような作品です。

遠藤彰子が、世間に知られるきっかけとなった作品


(左から)《街(たそがれ)》1982年 作家蔵/《遠い日》1985年 東京国立近代美術館蔵

1970年代後半からは、コンクリートに囲まれた無機質な都市を描いた「街」シリーズの制作が始まります。

この「街」シリーズで、1978年の林武賞や、1980年の女流画家協会賞など受賞を重ね、洋画家・遠藤彰子の名が広く世間に知られるようになりました。

写真右の作品《遠い日》は、だまし絵で有名なM.C.エッシャーのような不思議な都市風景を描いています。

遊んでいたり自転車に乗っていたり、さまざまな動きをみせる人びとには、いずれも遠藤氏自身が投影されているそう。都会に生きる人びとの不安感も表現しています。

本作は、新人洋画家の登竜門とされる安井賞を受賞し、遠藤氏の画家としての評価を決定的なものとしました。

圧巻のスケールで描かれる大作シリーズ

1989年から、キャンバスの最大寸法である500号(248.5×333.3m)の大作に取りかかり始めた遠藤氏。大作シリーズと呼ばれる本作品は、30年以上にわたり描かれています。

次から次へと湧き上がってくるイメージを表現するためには、従来のサイズでは収まらず、大画面へと展開していったとのこと。

生と死、光と闇といったテーマを根底に、構図法や動きの表現、さらには日本的な装飾性など制作しながら実験をくり返しました。


開館30周年記念 物語る 遠藤彰子展 展示風景より

2000年代に入ると、500号のキャンバスを2つ、または3つとつなぎ合わせて、1000号、1500号と超大型作品を発表。その圧巻のスケールで描かれた作品は、今もなお高く評価されています。

展示室内に並ぶ大作シリーズの正面に立ち、じっと描かれた世界を見つめていると、まるで絵の中に入り込んで冒険しているような気持ちになります。

近づいたり、離れたりしながら、深い物語性を秘めた遠藤氏独自の世界観を楽しんでみてはいかがでしょうか。

本展に向けて描かれた最新作《黒峠の陽光》

会場最後には、遠藤氏が本展に向けて制作を進めた最新作《黒峠の陽光》が展示されています。本作と並ぶ、白を基調とした《雪・星ふりしきる》は、大作シリーズの33作目です。

遠藤氏は、この二つの作品をそれぞれ「白い絵」、「黒い絵」と呼んでいます。


(左から)《黒峠の陽光》2021年/《雪・星ふりしきる》2020年 いずれも、作家蔵

「白い絵」である《雪・星ふりしきる》に着手したのは、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年の春でした。

ダイオウイカや浮遊する人物、魚や鳥などの生き物など多くのモチーフが描かれている本作。それにもかかわらず、レースのような軽やかな雰囲気も感じられます。

この「白い絵」の制作中、目まぐるしく変わっていく社会状況や日々に感じる想いが、さらなる創作活動の源となり、「黒い絵」と呼ばれる《黒峠の陽光》が制作されました。

「白い絵」と「黒い絵」、この一対の作品には、コロナ禍に直面した自身の不安やとまどい、そして未来への希望と、さまざまな感情が含まれています。

大変な状況下でも常に前向きで精力的に大作に挑み続ける遠藤氏。その姿勢と、彼女が魂を込めて作り上げた力強い作品は、私たちに勇気と希望を与えてくれることでしょう。


開館30周年記念 物語る 遠藤彰子展 展示風景より

圧巻のスケールで、独自の世界観を表現し続ける洋画家・遠藤彰子の創作の軌跡を、総合的に観ることができる本展。

本展に展示されている作品は、10点のみ撮影可能とのことです。

この大迫力の展示空間を撮って、SNSで共有してみては?投稿を見た人も、ダイナミックな空間に驚くかもしれません。

Exhibition Information

展覧会名
開館30周年記念 物語る 遠藤彰子展
開催期間
2021年10月2日~12月12日 終了しました
会場
平塚市美術館
公式サイト
http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/page14_00252.html