PROMOTION
クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
もじ イメージ Graphic 展/21_21 DESIGN SIGHT
ポスター、書籍、ウェブサイトなどで、私たちが毎日のように意識することなく触れているデザイン。
こうした、文字や絵を使ったデザインに注目した展覧会「もじ イメージ Graphic 展」が、21_21 DESIGN SIGHT(東京・六本木)で始まりました。
21_21 DESIGN SIGHT 外観
本展は「グラフィックデザイン」に注目した展覧会です。
展覧会のポスターのデザインも「グラフィックデザイン」です。(「もじ イメージ Graphic 展」展示風景)
「グラフィックデザイン」は、文字やイラスト、写真や色づかいといったビジュアル要素を組み合わせ、メッセージを視覚的に表現する手法のこと。
書籍やウェブサイトのデザインや、展覧会の告知チラシやポスターなど、私たちは身近で毎日多くのグラフィックデザインに触れています。
街のなかで目にするショップのパッケージも。(「もじ イメージ Graphic 展」展示風景)
会場の21_21 DESIGN SIGHTはデザインを通じてさまざまなできごとやものごとについて考え、発信し、提案を行う展示施設ですが、意外にも「グラフィックデザイン」そのものにフォーカスした展覧会は、2007年のオープン以来、今回が初めてとのこと。
今回の展覧会はその中でも特に、デジタルツールを使ってデザインを行う「DTP(デスクトップパブリッシング)」が主流になった1990年代以降のグラフィックデザインを俯瞰することをテーマにしています。
日本の「文字とイメージ」の歴史を記録してきた書籍のライブラリー(「もじ イメージ Graphic 展」展示風景)
展示は大きく2つの部屋に分かれており、ギャラリー1では日本語のなりたちからDTP以前のデザインの歴史的な展開を紹介。
ギャラリー2では、DTPが主流となった1990年代以降の国内外の54組のグラフィックデザイナーやアーティストの作品を13のテーマに沿って紹介しています。日本のグラフィックデザインを文字とデザインの関係からたどる展覧会です。
会場風景(ギャラリー1)(撮影:木奥恵三)
ギャラリー2に入ると、まずその展示物の物量に圧倒されます!
複数の壁で仕切られた広い展示室の壁面と展示台を埋め尽くすように、多くのデザインがテーマごとに紹介されています。
「もじ イメージ Graphic 展」展示風景
現在ではデジタルツールをつかったデザインは当たり前のものになっていますが、その手法はデザインの世界にどのように取り入れられ、発展し、今後どういった方向に向っていくのでしょうか。
13のテーマ展示から、一部を見てみましょう。
DTPが登場した90年代、新しいデジタルテクノロジーにいち早く向き合ったグラフィックデザイナーたちがいました。
戸田ツトムは、70年代から先鋭的なデザインを展開し、DTPの登場にともないデザインの体系を問い直したデザイナー。
1989年に手がけた「森の書物」は、日本におけるフルDTPの草分け的存在です。展示では「森の書物」を含む多くのDTPによるデザインを紹介しています。
戸田ツトム 展示風景
また、立花ハジメ、羽良多平?と、DTP黎明期のデザイナーたちの仕事も紹介されます。
2000年代には、グラフィックデザインは完全にデジタルに移行していきます。
菊地敦己、仲條正義、服部一成 展示風景
グリッド的な平面の中にシステマティックに情報を整理していく傾向の中、それに抗うように存在感を発揮する文字や図形を自由に配したグラフィック表現が登場しました。
50年代から活躍し、若い世代に「再評価」された仲條正義や、服部一成、菊地敦己の手掛けたポスターや雑誌のデザインは、現代に見ても独創的な力強さが感じられます。
服部一成がアートディレクションを手掛けた雑誌「流行通信」
2010年代に注目されるのは、記号性の高い人物イラストレーションを使ったデザインです。
例えば、フリー素材サイトの「いらすとや」のイラストは、日常でもよく目にしますよね。展示では、このイラストを手掛けるみふねたかしの創作活動にも注目します。
みふねたかし 展示風景
また、Noritakeや寄藤文平など、一目で印象に残る親しみやすさとメッセージ性をあわせ持ったイラストに、囲まれて暮らしていることにも気づきます。
Noritake(左)、寄藤文平(右) 展示風景
デジタルのフォントによって文字デザインが均質化する中、土地や時代といった固有の文化を反映したDTP以前の ”味のある” オリジナルフォントの再評価も進みます。
廣田碧 展示風景
廣田碧は、単にレトロな文字デザインを現代に取り入れるのではなく、街の景観など、それが置かれる環境との関係を考慮し、現代のデザインと接続しています。
上堀内浩平 による「サイン・看板」のインスタレーション
DTP技術の進歩によって、現代ではデザイナー以外でもコンピュータ上でかんたんにデザインを行えるようになってきました。
一方で、デザイナーには、クライアントを持たずに自らが情報発信をし、プロダクトを生産するという道も開かれます。
2021年の衆議院議員総選挙の際、投票率を上げることなどを目的に、平山みな美、惣田紗希、岡あゆみが発起人となって立ち上げられた「投票ポスタープロジェクト」には、インターネット上の呼びかけで、有志で100名以上のデザイナーらが参加しました。
投票ポスタープロジェクト 展示風景
このテーマからは、広告やパッケージデザインに留まらない、「グラフィックデザイン」の新たな展開の可能性が感じられます。
書籍やポスターなどで、ふだん何気なく目にするグラフィックデザイン。その技術や歴史を知り、新たなデザインの展開の可能性も感じる展覧会です。
書籍の表紙にも独創的なデザインが取り入れられています
今回の展覧会のタイトル「もじ イメージ Graphic 展」には、ひらがな、カタカナ、アルファベット、漢字が混ぜられています。
そうした日本ならではの多様な文字から生まれる独自のリズムに気づくと、身近なグラフィックデザインもより楽しく感じられそうですね。
「もじ イメージ Graphic 展」は、2024年3月10日(日)まで開催されています。