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2024年11月1日
白井美穂 森の空き地/府中市美術館
1980年代後半から大規模なインスタレーションを精力的に発表し、注目を集める美術家・白井美穂(1962-)。
作家初となる美術館での個展が、府中市美術館にて2024年2月25日まで開催中です。
美術家 白井美穂
本展では、1990年代前半に発表された貴重な立体作品を約30年ぶりに展示。
また、2000年代から展開する絵画を中心に、映像やオブジェを交えて構成し、知られざる美術家・白井美穂の活動の全貌を明らかにします。
白井美穂は、1962年京都府に生まれの美術家です。7歳のときに東京へ移り、東京西部に暮らしました。
吉祥寺の中学・高校で学生生活を過ごしたのち、東京藝術大学美術学部油画科へ進学します。
当時の藝大の油画科の教員には、国際展などで活躍する美術家の榎倉康二(1942-1995)が在籍していました。
また、来日したドイツの美術家ヨーゼフ・ボイス(1921-1986)の特別講義を受けるなど、リアルタイムで動く現代美術の刺激を肌で体感してきた白井。自身も美術家を目指して大学院に進み、1987年からは銀座の画廊で作品を発表し始めます。
白井美穂 《永い休息/立ち入り禁止》 1989年 佐藤春喜氏(ギャラリー古今)
白井の作品は既製品などの物を使い、ことば遊びをしているところが特徴です。
こちらは、1989年に彼女が初めて画廊企画の個展に挑んだときに発表した作品《永い休息/立ち入り禁止》。ロープを使った結界が、形状を変えて2種類置かれたものです。
美術館のロビーに展示された本作は、展覧会タイトルにも使用されている言葉「空き地」をイメージしているとのこと。
「3つ並んだ結界は「空間」を意味していて、一つでも移動させるとその空間は消える、あるいは別の空間となる」と、報道内覧会の中で語った白井。
それは、ミュージアム(空間)は変わらないのに、展示(結界)の形が違えば別物・・・毎回さまざまな展示で、各時代の作家や作品を紹介する「ミュージアム」という空間も、一種の「空き地」であることを思わせるようです。
作品の中に込められた白井のことば遊びを考えながら鑑賞すると、見え方が違ってきて面白いですよ。
白井美穂 《Table》 1992年 千葉市美術館
「白井美穂 森の空き地」展は、作家の約35年の活動を紹介する展覧会です。
1989年から1996年までの初期作品14点と、2005年以降の作品14点の計28点で構成する本展。
作家や所蔵家の手元に長く大切に保管されていた初期作品を、約30年の時を超えて展示します。
白井美穂 《前へ前へバックする》 1989年 佐藤春喜氏(ギャラリー古今)
展覧会準備について、報道内覧会の中で担当学芸員と白井は「まるでタイムカプセルを開けるようなドキドキワクワクする気持ちであった」と話しました。
約30年前に一度時を止めた作品たち。展示作品には、それぞれの時代の空気感があります。
それらが一堂に会すことで、今の世の中だからこそ、見えてくるものがあるのかもしれません。
府中市美術館の展示会場で体感してみてください。
「白井美穂 森の空き地」展示風景
2024年1月13日と2月12日には「白井美穂映像作品上映会とアーティストトーク」、2月18日にはアーティストトーク(対談)「豊嶋康子と見る、白井美穂展」などの関連企画の開催が予定されています。
それぞれの詳細は、展覧会公式サイトをご確認ください。
「白井美穂 森の空き地」展示風景
美術家・白井美穂の約35年の創作活動の全貌に迫る「白井美穂 森の空き地」展。
貴重な初期作を再構成し、最新作とあわせて美術家・白井美穂の「現在」を知る展覧会でした。
作品が持つもともとの意味と、自分が作品を実際に観て感じた意味を比べてみると、また新しい発見ができるかもしれませんよ。