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2024年11月1日
美術家たちの沿線物語 小田急線篇/世田谷美術館
世田谷美術館の企画展、〈美術家たちの沿線物語〉シリーズが4年目にして完結します。
“世田谷の美術”を新たな視点で紐解く試みで、世田谷を走る私鉄と沿線ゆかりの美術家たちに注目した展覧会です。
最後を飾る「小田急線篇」は、キービジュアルも小田急線を彷彿とさせる青いラインがデザインされています。
「2. 成城学園前駅から喜多見駅あたり」展示風景より
〈美術家たちの沿線物語〉シリーズは2020年度の「田園都市線・世田谷線篇」を皮切りに、2022年度の「大井町線・目黒線・東横線篇」と続きもので展開しました。
今年2023年度に同時開催となる「京王線・井の頭線篇」とあわせて完結篇を迎えます。
都内でも随一の広さと人口を誇る世田谷区は、私鉄3社8路線が走る地域。中でも小田急線は区の中央部を大きく東西に横切り、沿線の在住作家数は最多となります。
「1. プロローグ:小田急小田原線について」展示風景より
本展では、1927(昭和2)年に新宿〜小田原間で開通した小田急小田原線を取り上げます。
出品作家数は50組以上に及び、シリーズ過去最多のボリュームです。
作家のラインナップには画家の横尾忠則、写真家の荒木経惟など有名な美術家も。油彩や彫刻など多彩なジャンルを、横断的につなぎつつ俯瞰します。
(右上)《沿線案内 小田急電車》1936(昭和11)年6月 小田原急行鉄道株式会社
(右下)《沿線案内 新宿小田急電車》1939(昭和14)年7月 小田原急行鉄道株式会社
いずれも、世田谷区立郷土資料館蔵
かつて世田谷は、歌枕で月とススキ野原に象徴される「武蔵野」でした。1923年に関東大震災が起き、復興とともに住宅地が広がったエリアです。
震災の4年後に小田原急行電鉄が開業し、昭和初期以降の街の歩みに大きく影響しました。
本展では小田急線を軸に見た、まちづくりの歴史がわかります。
「3.祖師谷大蔵駅から千歳船橋あたり」展示風景より
今は東急田園都市線が通る「田園都市」に対して、成城は「学園都市」として発展しました。古くから由緒あるこの街は、映画の街としても歴史があります。
1933年に東宝スタジオができ、美術家は仕事を求めて街に集まりました。
「ゴジラ」や「ウルトラマン」など国民的映画も多く製作され、カルチャーの一大拠点に。展示には当時の資料もあり、邦画や映画史が好きな人の目を楽しませます。
同じくカルチャーの発信地となったのは、演劇の街・下北沢。
複数の劇場が作られたこの街は小劇場演劇の聖地となり、音楽・古着・本などドープなサブカルチャーの中心地となって今に至ります。
「5. 梅ヶ丘駅から世田谷代田駅あたり」展示風景より
「白と黒の会」展示風景より
経堂から豪徳寺界隈で集った「白と黒の会」、成城界隈の「砧人会(ちんじんかい)」など、“小田急沿線に住んでいる”ことを共通項として、美術家たちは分野を超えて交流しました。
絵画や写真から立体物まで、作品がジャンルを問わず集結するさまは、まさにアーティスト同士の和やかなつながりを想起させます。
(前)土方久功《猫犬》1974(昭和49年) 世田谷美術館蔵
「6. 下北沢駅から東北沢駅あたり」展示風景より
「7. 代々木上原駅から新宿駅まで」展示風景より
「美術家たちの沿線物語」シリーズ全4回分の小冊子を封入
シリーズ完結を記念し、会場では全4回分の小冊子を無料配布します(※数量がなくなり次第配布は終了)。
小冊子(A5判16頁)の内容は、展示解説や作家ゆかりの地をまとめたマップなどです。特製タトウ入りセットで用意しています。
特製タトウの内側にもご注目
2F展示室の案内
本企画展のチケットで、2階のコレクション展も観覧できます。京王線・井の頭線「のりかえ」の表示がある階段が目印です。
京王線・井の頭線の濃いブルーとピンクが印象的
世田谷区の北端を走る京王線と、渋谷から吉祥寺までをつなぐ井の頭線は、いずれも小田急線と近しい時期に開業しました。
この沿線にも美術家や文学者、建築家などの文化人が住み、展示からはそれぞれに交流を持っていたようすが窺えます。
展示風景より
美術や近現代史が好きな人はもちろん、世田谷に住んでいる人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
自らが暮らす街の歩みを知れば、愛着が湧くきっかけにもなるはずです。
世田谷とは何か?という問いを、私鉄沿線史とアートの領域から、世田谷の土地で紐解いて見せる。まさに世田谷美術館らしい展覧会で、同館のコレクションを新たな切り口で見せている面白い企画です。
会期前半は砧公園の梅が咲く頃、美術鑑賞とあわせて世田谷の街を歩いてみませんか。