タイムトリップ 江戸から東京へ/千代田区立日比谷図書文化館

身近な歴史を楽しむ。江戸から東京への推移を郷土資料で読み解く展覧会

2021年11月16日

タイムトリップ 江戸から東京へ ~資料で綴る千代田の風景~/千代田区立日比谷図書文化館

将軍・徳川家康によって江戸城築城が始まったのが、今からおよそ400年前のこと。江戸城は現在の千代田区に建てられましたが、江戸城跡や城下町跡、考古資料など、多くの文化財が維持され、現在も残されている場所でもあります。

そんな千代田区がこれまで収集保存してきた郷土資料を中心に、江戸から東京への移り変わりを紹介する展覧会が、千代田区立日比谷図書文化館で開催中です。

展示風景

本展は今も守られる歴史遺産や資料を展示。身近な場所の歴史を楽しむヒントがつまった展覧会となっています!

※展覧会情報はこちら

江戸城から皇居へ 千代田の移り変わり

展示は千代田の町の成り立ちや、江戸から東京への風景の変化を示す俯瞰図、江戸図をもとにした江戸のまちづくりの紹介から始まります。

展示風景より左「大江戸鳥瞰図」文久2(1862)年頃 千代田区蔵

鳥瞰図(ちょうかんず)とは、上空から地上を見下ろしたような、パノラマ技法で描かれる地図のこと。

「大江戸鳥瞰図」は幕末の江戸御府内を、江戸図や屋敷図、写真などをもとに描かれたものです。江戸城を中心に町が築かれていたことが良く分かる図となっています。

江戸城は徳川幕府のものでしたが、明治時代へ入ると、天皇が江戸へ移ってきて皇居となります。江戸の町は引き続き日本の中心として発展しました。

天皇が最初に入城した西の丸御殿は明治6(1873)年に焼失し、同21(1888)年に明治宮殿が完成します。当時の宮殿の貴重な写真や、色鮮やかな錦絵も展示されます。

「鳳凰御鏈 新皇居御出門之図」明治22(1889)年 日比谷図書文化館特別研究室蔵

「鳳凰御鏈(ほうおうぎょれん) 新皇居御出門之図」は、再建された皇居に出発した明治天皇と皇后の姿を描いた錦絵です。

奥には同じ明治21(1888)年に作られた皇居正門石橋と鉄橋も見ることができます。

文明開化東京

幕末の混乱で荒廃しきっていた東京。明治政府は当初、江戸を政府の所在地とすることは考えていませんでした。

しかし、近代郵便制度の創設者である前島密(ひそか)の進言により、引き続き江戸が中心になることが決まったのです。

展示風景

江戸の町は建物が密集しており火災が多かったことは有名です。それに加えて人口密度の高さから疫病がたびたび起こっていました。東京は、江戸時代以来の都市問題を引き継ぎ、都市の不燃化や新たな道路整備を急速に進めることとになります。

明治20年代には近代的都市設計が計画され、東京の街並みは大きく変わっていきました。そんな明治20年代に建設された有名なランドマークがニコライ堂です。

展示風景

駿河台のニコライ堂は現在も地域の顔として、時には観光地として親しまれています。

展示室には明治20年代のニコライ堂からのパノラマ写真(下段)と幕末の屋敷図等をもとに復元した。コンピュータグラフィック(上段)の360゜パノラマドームを設置。江戸の面影を残しつつも、近代化が進んでいった文明開化の風景を紹介します。

ニコライ堂からの展望写真(江戸パノラマCG制作 (株)フジテレビジョン[Time Trip]プロジェクト)

当時ニコライ堂は、駿河台の最も高い位置に建っており、江戸の町を見渡すことができました。

昭和40年代頃からは周辺に高層ビルが建ち始め、建物を望むことがだんだん難しくなっていきました。

名所めぐりで観光気分

江戸の町は参勤交代制度により多くの大名や家臣が訪れていたので、名所巡りが盛んに行われていました。明治時代になると、鉄道が整備されるようになり、全国への旅行が一般的に。

名所案内や絵はがき、絵すごろくなどから、江戸と東京の観光名所を紹介します。

「東京名所案内壽語録」明治39(1906)年 日比谷図書文化館特別研究室蔵

絵すごろくは、江戸時代から昭和まで広く親しまれた遊具のひとつで、戦前は正月の遊びとして多くの家庭で行われていました。

「東京名所案内壽語録(すごろく)」は東京の名所をたどるもので、千代田区内では帝国ホテルや御茶ノ水など、いわずと知れた名所が並びます。ゴールは真ん中に描かれた上野の博物館。今でも変わらぬ姿を、昔のすごろくで見つけるのも楽しいですよ。

風景の記録を残すということ

大火事や河川の氾濫などに見舞われながらも少しずつ発展してきた江戸ででしたが、文明開化後の大正12(1923)年の関東大震災、昭和20(1945)年の東京大空襲、戦後の再開発による現代都市化などで、それまでの風情ある風景はほとんど消えてしまいました。

展示風景

当時の震災のようすを収めた絵はがきも展示されています。

古き良き街並みが消え、現在千代田区に残されているわずかな痕跡は、主要な街道と濠との交点にあった江戸城御門の一部などです。

こうした残された痕跡をただ記録するだけでなく、維持し、活用していくには? 人びとに忘れられないためには?

まちづくりを改めて考えるきっかけになる展覧会です。

古い資料を調べたり、実際に千代田区内を歩いてみたり。古き良き江戸の風景に想いをはせてみてはいかがでしょうか?

Exhibition Information