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2024年11月1日
特別展「法華経絵巻と千年の祈り」/中之島香雪美術館
重要文化財《法華経絵巻》鎌倉時代 香雪美術館蔵
釈迦如来(しゃかにょらい)の教えである「法華経」は、生きとし生けるものが永久に滅することのない仏になれると説き、古くから現代まで多くの人たちの信仰を集めてきました。
重要文化財『法華経絵巻』は、鎌倉時代中期に法華経の教えを絵巻として描いた香雪美術館の所蔵品です。近年、修理が完了したことを記念して、特別展「法華経絵巻と千年の祈り」が開催されています。
「如是我聞」(にょぜがもん)の言葉から始まる「妙法蓮華経」(略して「法華経」)は、釈迦如来の教えをたとえ話などを用いて語り口調で綴られています。
香雪美術館蔵の重要文化財『法華経絵巻』は、法華経の教えを二十八章の巻子とした大規模なものであったと考えられ、物語を墨と淡彩で描いた鎌倉時代中期(13世)の貴重な作品です。経年により、巻き跡であるシワができたり、彩色に使われている金属によって紙が痛んだりしていた部分を3年の年月をかけて修理し、2023年3月に完了しました。
重要文化財《法華経絵巻》鎌倉時代 香雪美術館蔵(上下とも)
『法華経絵巻』は墨と朱、緑で彩色され、法華経に関する美術品の中でも、二十八章の内容をこれほど詳細に表した作品は他にはありません。また展示室には、具体的にどの部分にどういった修理をされたかや、法華経のお話を解説したパネルなどもあり、さらに理解が深まりました。
また、前期と後期で展示替えがあり、国宝4件、重要文化財11件を含む合計42件の他、後期には京都国立博物館所蔵の法華経絵巻が展示に加わります。
仏教経典の代表格である法華経では、五種類の修行法とその功徳が示されており、書写もその一つです。中でも二十八章(二十八品)を一章(一品)ずつ巻子とした法華一品経は最も善の行いとされ、金銀で飾り華麗な彩色を施したものも多数現存します。
藍色で染めた紺紙に金銀泥を用いて書写した紺紙法華経は、日本では11世紀以降に盛んに制作されました。
京都府指定有形文化財≪法華経≫のうち巻第一 朝鮮・至元5年(1339年) 京都・妙顯寺蔵【前期】
紺紙に金銀泥で描かれた法華経宝塔曼荼羅は、法華経の経文で宝塔を細かく描き、その塔内には一仏ないし二仏を安置し、塔の周囲に法華経の物語を描いたものです。作成することで複数の功徳を得られると考えられています。
堺市指定有形文化財≪法華経宝塔曼荼羅≫巻第七 鎌倉時代 13世紀 大阪・妙法寺蔵
時の権力者などもこぞって書写し、平清盛などの平家一門により書写され広島・厳島神社に奉納された「平家納経」は有名で、大正から昭和にかけて模造した平家納経模本(益田本)が展示されています。
また、金属製の筒に写経や仏画を入れて土中に埋納することにより、経典を後世に残そうとしたと思われます。
《経筒》平安時代嘉承3年(1108年) 香雪美術館蔵
祈りを込められた法華経二十八品などの写経や絵巻を奉納する箱もとても立派で美しいものが使われました。これらの箱は納めるという意味だけでなく、傷みやすい紙を守るという役目や時代が下がっても貴重な経典であると認識させる意味合いが伺え、大切な法華経の教えを後世に守り伝えようとした人達の気持ちが伝わってきます。
長谷寺の経箱は、梨子地、沃懸地(いかけじ)、切金(きりがね)、金貝(かながい)などの各種技法を併用して作られ、巻物の軸を表現しているような丸文を散らすことでより斬新な印象を受けます。
さらに『片身替わり』のように左右で地の柄を変えてあり、凝った意匠になっています。他にも美しい漆の経箱や、白木に彩色された経箱などが展示されています。
国宝《丸文散蒔絵経箱》室町時代15~16世紀 奈良・長谷寺蔵【前期】
《黒漆梨子地蒔絵経箱》鎌倉時代13~14世紀 和歌山・廣八幡宮蔵
《昭和荘厳経のうち外箱》絵・生田花朝 昭和38年(1963年) 大阪・四天王寺蔵
市中の山居のようなで場所でありたいと作られた中之島香雪美術館は、大阪の中心地である中之島にあり、ホールやホテル、新聞社などの入るフェスティバルタワーの中の静かな美術館で、朝日新聞創設者の村山龍平氏のコレクションを中心に展示してあります。
また、もてなしの空間として、草庵形式の茶室藪内家「燕庵」を本歌とする写し「玄庵(げんなん)」を忠実に再現した本格的な茶室「中之島玄庵」が併設され、茶室をバックに写真撮影ができる場所もありました。
室「中之島玄庵」
ミュージアムショップには、今回の展示に合わせて、仏像の付箋やはんこ、マスキングテープ、仏教の本などが並んでいるほか、茶席で使う数寄屋袋や菓子切りなどの小物も置いてあります。
大陸から伝わった仏教の教えを描いた絵巻には、アジアを思わせる景色や人物が描かれており、救いを求める気持ちと同時に未知の文化への憧れを感じました。
仏の教えの絵巻物を作ったり写経をすることは、徳を積むこととされ、千年前の信仰心をこの目で見られるのは感慨深いです。美術館の雰囲気も大人っぽく、落ち着いていて心静かな時間を過ごせそうです。