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2024年11月21日
月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~/ホテル雅叙園東京
こんにちは!美術館巡りが趣味のかおりです。
10月ともなるとさすがに長袖の服を着ることも多くなりました。
朝晩が肌寒くなるこの季節になると、どこか感傷的な気分になってきますよね。
いつもより感性が研ぎ澄まされる秋から冬にかけての季節に、ぜひ訪れていただきたいのがこちら。
ホテル雅叙園東京にある東京都指定有形文化財「百段階段」で開催される展覧会、「月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~」です。
現代の日常とは少し離れた、現実と虚構が混じり合うような心地もするこの空間で、さまざまな作家たちが織りなす作品群が作り出す幻想的な空気感の中、一味ちがったお月見を堪能できます。
1935(昭和10)年に建てられ、「昭和の竜宮城」と呼ばれた華やかで趣のある木造の7部屋と、それらをつなぐ99段の階段。
建物自体が作品性をもつ会場で、月岡芳年の「月百姿(つきのひゃくし)」や現代作家の作品の数々が展示されます。
豪華な装飾の施された建物で見る月の世界はいったいどんなものなのでしょうか。入り口からすでに華やかで蠱惑的な雰囲気に満ちていてワクワクします!
続く階段を上っていくと、途中に7つの部屋があり、それぞれの部屋に作品が展示されています。下の階から順に見ていきましょう。
最初の部屋「十畝の間」には、幕末〜明治期に活躍し「最後の浮世絵師」と呼ばれた月岡芳年の浮世絵シリーズ「月百姿」が展示されています。
「月百姿」は、月岡芳年が月をテーマに描いた100枚の錦絵からなるシリーズもので、芳年の晩年の集大成と評価されています。
月にまつわる日本や中国の歴史上の逸話や物語、歌などを題材として、武者絵、役者絵、美人画、歴史画、動物画など、バラエティ豊かな揃物となっています。
この部屋では、100ある「月百姿」から前期/後期の展示替えでそれぞれ5点ずつ展示されます。
床の間に展示された錦絵は、やわらかな黄色い光に照らされて、ぐっと味わい深い雰囲気を醸し出していました。
ダイナミックな構図に鮮やかな色彩、それをより立体的にする、版画とは思えぬ細やかな線と繊細な色遣いに魅了されます。
続く漁樵の間は、豪華絢爛!
色とりどりの鮮やかな色彩が施された、彫刻と日本画の数々が部屋を彩ります。
また、室内はすべて純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられたというから驚きです。
この部屋の展示テーマは、水と月「石山月」。
月百姿には「石山月」という作品があり、紫式部が石山寺にこもっているときに『源氏物語』の着想を得たという伝承をもとに描かれました。
そこでこの部屋では、この「石山月」を彷彿とさせる作品が展示されています。
平安時代の人びとも、色とりどりの衣装に身を包みながら、それぞれの思いを胸に月を見上げたのでしょうか。
『源氏物語』の執筆にのぞむ紫式部や、物語の登場人物たちの心象風景が見えるようです。
そして次の部屋、草丘の間には、まさにお月見の光景が広がります!
小さく響き渡る虫の音に、かさかさとゆれるススキに埋め尽くされた会場。そこには大きなまるい月がでています。
月にはプロジェクションマッピングが投影され、ゆっくりと変化していきます。
最後にはうさぎが登場するので、ぜひ最後まで見届けてください!
すすきの間は道が作られていて歩けるので、お月見気分で散歩するように歩いたり、写真撮影したりして楽しめます。
次の静水の間では、入ってすぐにある、月の掛け軸が目を惹きます。
岩谷晃太さんの「月と稲妻」です。
真っ暗な夜空に、輝く月と走る稲光。
岩絵具で描いているのに、なぜか光ってみえる不思議。
静かにあかあかと輝く月と、真っ黒な夜を切り裂く稲光。
洋の東西を問わず神格化される月と雷を描いたこの絵を前にすると、どこか神聖な気持ちになってきます。
ぜひ会場でじっくり見てみてください。
さらに奥に進むと、月百姿の「月明林下美人来」をテーマにした展示があります。
「月明林下美人来」は、中国の故事をもとにした作品です。
描かれている女性は羅浮仙(らふせん)という梅の精です。
ある男が梅の名所である羅浮山を訪れると、美しく芳しい女性にお酒の席に誘われます。
お酒を飲み交わしているうちに寝てしまい、目を覚ますと女性の姿はなく、そばに大きな梅の木があったという不思議な話です。
この故事を再現するように、「月明林下美人来」のとなりには食卓のセットが配されています。
梅の精との酒宴の席、あるいはかつてこの場所で行われた宴を連想させます。
星月の間では、「夜の礼拝 ーWORSHIP OF THE NIGHTー」と題して、伊藤咲穂さんの作品が展示されています。
月と地球の交感。遠く離れていながらも、互いに影響し合うさまが表現されています。
和紙という素材に広がる水飛沫のような、粒子のようにもみえる作品の数々は、祈りにも似た静謐さと激しく渦巻く感情という相反する双方を感じました。
あなたはどんな感情を抱くでしょうか。
作品の前に立って、自分の感情のゆらめきを感じてみてはいかがでしょうか。
そして清方の間。その名のとおり、美人画で人気を博した鏑木清方の絵が飾られた一室です。
天井の扇面形杉柾板に描かれた四季草花図、欄間の四季風俗美人画は鏑木清方による筆。
華やかさと落ち着きがしっくりと調和した茶室風の室内に、月岡芳年の「月百姿」から選ばれた5作品が並びます。
実は清方が入門した水野年方は、月岡芳年の門下ということで、鏑木清方は月岡芳年の系譜に連なるという縁があるのです。
この部屋では、そんな鏑木清方と月岡芳年の師弟の共演が見られる贅沢な場となっています。
会場でしっかりと目に焼き付けてください!
最上階となる頂上の間では、高橋工房による「月百姿」の復刻木版画が展示されています。
高橋工房は、安政年間の創業から160年あまりの歴史をもつ浮世絵版画工房です。
古版木を修復して、現代に復刻させたのだそうで、驚きです! 江戸時代から、明治、大正、昭和、平成、令和と脈々と続く浮世絵文化がひしひしと感じられました。
そして、これまで各部屋に展示されていた月百姿のすべてが縮小版の複製として展示されています。
歴史上の武将や貴族、遊女、妖怪や物語の登場人物たちが織りなす月にまつわる場面の数々をひとつひとつみていくのも想像が膨らんでおもしろいものです。
これまでは7つの部屋とその中で展示されている作品を中心にみてきましたが、各部屋をつなぐ階段もとても趣があるので、最上階から降りてくるときにはぜひ階段自体もたのしんでください。
つややかな木の素材感だったり、ちょっとしたところにある自分なりの「いいな!」のポイントを見つけられるはずです。
もちろん、これまで見てきた部屋のおかわり鑑賞もいいですね!
何度でも上り下りしたくなる文化財「百段階段」です。
深い没入感とともに趣向を凝らした「お月見」を愉しむ日本では月を愛でる習慣が今日まで続いています。
月の美しい姿を眺めるだけでなく、歌を詠んだり、楽器を奏したり、菓子や食事を楽しんだり、物語の一場面となったり。
そんなお月見を、豪華絢爛で意匠を凝らした、ホテル雅叙園東京の文化財「百段階段」で愉しむ。
この秋は、時空を超えて「月」のもとに集った作品と世界観を肌で感じてみてはいかがでしょうか。
それでは愉しいアートライフを!