風刺画/10分でわかるアート
2023年3月29日
今回は、天王洲から品川エリアを巡るアートスポットをご紹介します。
「PIGMENT TOKYO」では、画材を通して、普段触れることの少ないアートの裏側を学べるユニークな体験が楽しめます。「WHAT MUSEUM」では、寺田倉庫ならではの倉庫空間を活かし、作家やコレクターから預かる現代アートを中心に多彩な作品を鑑賞できます。
さらに、「動き出す浮世絵展」では、近年注目を集める没入型展示を体験。ほかの没入型展覧会と比べながら鑑賞するのもおすすめです。また、天王洲から約20分の品川にある「キヤノンギャラリー S」では、私たちの暮らしを支えているインフラや科学など、立ち入り禁止の現場やそこで働く人々を撮影した写真展が開催されています。
なお、今回は取り上げていませんが、天王洲はパブリックアートの聖地でもあります。ぜひ、アートを巡りながら街歩きを楽しんでみてください。
「PIGMENT TOKYO(ピグモン トーキョー)」は、画材を通じて「色とマチエールの表現」を追求する、アート愛好家のための特別な施設です。画材を購入できる専門店というだけでなく、画材の使い方や技術、色彩や素材に関する専門知識やその歴史についても深く学べます。
現役アーティストであるスタッフが、企業や学校と連携しながらアートを活用した新しいアイデアの提案やプロジェクトサポートを行うなど、多彩な活動を展開しています。
PIGMENT TOKYOのエントランス
PIGMENT TOKYOでは、絵を描くための道具や技術、色彩の歴史や特性について学べる機会も充実しています。
初心者からプロまで幅広い層が参加できるワークショップが定期的に開催されており、参加者が新たな表現に挑戦できる環境が整えられています。
顔料の陳列棚。店内では約4,500色を取り扱っています
また、画材の専門店としても人気が高く、天然顔料から最新技術で生み出された画材まで幅広い品揃えを誇ります。企業との共同開発による新しい画材の提案も行っており、アーティストや絵を描く人びとの創作活動を積極的に応援しています。色彩の可能性を探る学びと創造の拠点として、多くの人びとに親しまれています。
施設名:PIGMENT TOKYO
公式サイト:https://pigment.tokyo/
「WHAT MUSEUM」は、寺田倉庫が運営するアートと文化を発信するミュージアム。
その特徴は「倉庫を開放して普段見ることのできないアートを公開する」という独自のコンセプトにあり、寺田倉庫が作家やコレクターから預かる貴重なアート作品を中心に公開することで、新しいアート鑑賞の形を提案しています。
WHAT MUSEUMのエントランス
展示内容は、平面や立体のアート作品に加え、建築模型、写真、映像、文学、インスタレーションなど、多岐にわたります。
作品を通じて作家の想いだけでなく、収集するコレクターのこだわりや背景も伝えられるため、作品に込められたストーリーをより深く感じることができます。
T2 Collection(ティーツーコレクション)は、株式会社ブレインパッド共同創業者・高橋隆史氏が約6年間収集してきた現代アートコレクション。
高橋氏は、作家と起業家には「コンセプトやビジョンを世界に発信する」という共通点があると考え、コレクションを始めました。特に、若手作家の挑戦的な作品や作家が新たな視点で取り組んだ作品を積極的に収集しています。
会場のようす
現代アートは、社会、芸術、文化、政治といったテーマを通じて、作家が自分のメッセージをさまざまな形で表現することが特徴です。同じ時代を生きる私たちがこれらの作品と向き合うことで、自分とのつながりを感じたり、新しい視点を得たりするきっかけになります。
会場のようす
本展覧会では、ベルナール・フリズをはじめ、宮島達男、名和晃平、和田礼治郎らによる36点の作品が展示され、現代アートの多様性を感じられる内容となっています。
展覧会名:T2 Collection「Collecting? Connecting?」展
開催期間:2024年10月4日~2025年3月16日
会場:WHAT MUSEUM
公式サイト:https://what.warehouseofart.org/exhibitions/t2-collection
展覧会タイトルの「Synesthesia(シナスタジア)」は、いろいろな感覚が結びつく「共感覚」を意味しますが、作家である奥中章人はこれを自分なりに解釈して作品に取り入れています。
「感じること」が自然や社会、人とつながるきっかけになると考え、作品もこれまでの形から、より自然に近い形へと進化しています。
奥中章人「Synesthesia(シナスタジア)―アートで交わる五感―」展のエントランス
今回の展覧会では、直径12メートルにもなる大きなバルーンのインスタレーションが展示されます。この作品は展示室いっぱいに広がり、色が変化するだけでなく、中には大きな水枕が置かれています。
空気や水、光といった目には見えにくい「形のないもの」を使って、人びとの感覚を呼び起こし、つながりを感じさせるのが特徴です。
会場のようす
この作品に実際に触れたり、中に入ったり、寝転がったり、五感をフルに使って体験することで、自然や社会、他の人との新しい「つながり」を感じるきっかけが生まれるかもしれません。
展覧会名:奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展
開催期間:2024年10月4日~2025年3月16日
会場:WHAT MUSEUM
公式サイト:https://what.warehouseofart.org/exhibitions/synesthesia
「動き出す浮世絵展」は、江戸時代の浮世絵を最新のデジタル技術で楽しめるユニークな展覧会です。
葛飾北斎、歌川広重、東洲斎写楽などの名作を3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングで再現し、9つのテーマに分かれた映像空間で浮世絵の世界に没入できます。
会場のようす
各映像空間では、浮世絵の情景を再構築した映像が3〜10分程度上映され、鑑賞者は実際の浮世絵作品と見比べながら新しい視点で楽しめます。
さらに、デジタル技術を使った展示だけでなく、江戸時代の実物浮世絵やその復刻版も展示されており、作品ごとにわかりやすい解説が添えられています。これにより、浮世絵の背景や江戸文化についても学ぶことができます。
会場のようす
また、「遊」の空間では、浮世絵をテーマにした魚釣りや輪投げなどの遊びが体験でき、子どもから大人まで楽しめる工夫がされています。展覧会の最後には、ここでしか購入できないオリジナルグッズが揃うミュージアムショップも併設されており、観覧後の楽しみも充実しています。
会場のようす
所要時間は、映像空間を簡単に鑑賞する場合は約30分、解説をじっくり読みながら楽しむ場合は約1時間30分、全体を満喫する場合は約2時間が目安です。
また、今回ご紹介したPIGMENT TOKYOでは、本展との特別講座として、「北斎ブルー」としても知られる「プルシャンブルー」の顔料を使ったワークショップが限定100名(要事前申し込み)で開催されます。展覧会の鑑賞特典も付いたこの企画で、浮世絵の色彩の奥深さを楽しんでみませんか?
展覧会名:動き出す浮世絵展 TOKYO
開催期間:2024年12月21日~2025年3月31日
会場:寺田倉庫 G1ビル
公式サイト:https://www.ukiyoeimmersiveart.com
特別講座:[期間限定]動き出す浮世絵展 TOKYO 特別講座『北斎ブルーをつくり、えがく』
https://pigment.tokyo/collections/workshop
品川駅から徒歩10分以内のキヤノンギャラリーSは、2003年に開設されたギャラリーで、日本を代表する写真家やアーティストによる展覧会を多数開催しています。無料で気軽に訪れることができます。
キヤノンが収集した3,000点以上の写真作品を順番に展示しており、無料で気軽に訪れることができます。
キヤノンギャラリーSのエントランス
現在開催中の写真展は、西澤丞による「超現実世界 決して交わることのない、もうひとつの世界」です。この写真展では、私たちの暮らしを支えるインフラ、科学、工業、エネルギーといった現場の「立入禁止」区域で撮影された作品が展示されています。
会場のようす
「写真を通じて日本の現場を応援したい」という西澤さんの思いが込められた作品群は、日本の工業技術や研究開発を現場ならではの視点で切り取ったもので、非日常的な世界を感じさせてくれます。
会場のようす
キャプションがついていない作品では、写真そのものを自由に楽しむことができますし、別紙の作品リストにある西澤さんの解説文を読みながら「もうひとつの世界」を探る楽しみ方もできます。
展覧会名:西澤 丞 写真展「超現実世界 決して交わることのない、もうひとつの世界」
開催期間:2024年12月19日~2025年2月4日
会場:キヤノンギャラリー S
公式サイト:https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/nishizawa-real