ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ/アーティゾン美術館

アーティスト・カップルが生んだ20世紀前衛芸術の足跡【アーティゾン美術館】

2025年3月12日

アーティスト・カップルが生んだ20世紀前衛芸術の足跡【アーティゾン美術館】

20世紀を代表するアーティスト・カップル、ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプを紹介する展覧会が、アーティゾン美術館にて好評開催中です。

2名の刺激が生んだ前衛芸術

19世紀以降、女性のアーティストが増加したことで、アーティスト・カップルが名を残すようになりました。

その中でもトイバー=アルプとジャン・アルプは、20世紀前半の前衛芸術の最前線で活躍したアーティスト・カップルです。

本展では、トイバー=アルプとジャン・アルプの創作活動、カップルだったからこそ生まれた創作の可能性について紹介。

あわせて、この時代の女性アーティストの立場、芸術ジャンルの移り変わりなど、20世紀の美術についても考察します。

トイバー=アルプの生き方

ゾフィー・トイバー=アルプは、テキスタイル、家具デザイン、建築設計、絵画などさまざまな創作に取り組んだ人物です。

当時、女性でも受け入れられていた応用芸術の分野からキャリアをスタート。

のちに、前衛芸術の分野で男性アーティストと肩を並べるまでになります。

彼女の生き方からは、当時の女性アーティストの新しい可能性、そして歴史的な意義も感じることができるのではないでしょうか。

*応用芸術・・・美術を日用品や行事などへ応用した分野のこと。例えば、家具や洋服などがそれにあたります

近年再評価が進みつつありながら、夫ジャン・アルプと比べると日本でほとんど紹介されてこなかったトイバー=アルプ。

その創作活動がまとまった形で日本で紹介されるのはとても貴重な機会ですよ。

ジャン・アルプの伸びやかな表現

ジャン・アルプの創作でよく知られるのは、有機的なフォルムの彫刻作品ですが、彼の創作活動は絵画と詩から始まりました。

しかし、カンヴァスに油彩で描くといった「普通の手法」ではなく、平面と立体を融合させたレリーフの形式を生み出したり、イメージやコラージュといった表現に関心を向けていました。

ルールに縛られない、自由な創作を愛したジャン・アルプ。

マルセル・デュシャンが「アルプその人がアート」という言葉を残していることからも、当時の芸術ジャンルの中で自由な立ち位置だったことが分かります。

デュオ形式の作品5点も来日

本展では、ドイツとフランスのアルプ財団を中心とした国外コレクションから、両者の作品88点を展示します。

古くから、美術の制度では男性側の評価が先行してきました。

しかし、トイバー=アルプとジャン・アルプそれぞれの歩みを見ると、それぞれの表現の形式は違っても、理想を共有しながらお互いを尊重した関係だったことが分かります。

さらに2人のユニークな試みとして、デュオ形式で制作している作品があります。

本展では、1939年に制作された《デュオ=デッサン》を5点紹介。

対等な関係で制作された本作を手がかりに、2人のパートナーシップについても紐解くことができますよ。

女性アーティストの新しい立ち位置を確立したトイバー=アルプと、規範にとらわれない表現を求めたジャン・アルプ。

最高のアーティスト・カップルの競演をお見逃しなく。

同時開催「硲伊之助展」

5階展示室では、同時開催の「硲伊之助展」が開催中です。

硲伊之助(はざま いのすけ)は、画家、陶芸家であり、コレクターとしての側面も持つ人物でした。

日本で初めてマティス展を開いたのも彼だったそう。

本展では、アーティゾン美術館が所蔵する作品の中から、硲の作品はもちろん、彼と関わりの深い作品もあわせて約100点紹介します。

硲の回顧展は、東京では初開催ですよ!

どちらの展覧会も会期中はさまざまなプラグラムが開催予定なので、こちらもチェックしてみてください(https://www.artizon.museum/program/)。

Exhibition Information