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2025年3月26日
生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―/横須賀美術館
ピンと跳ね上がった口ひげにギョロリと見開いた大きな目。フィリップ・ハルスマン撮影の大きなポートレートが入り口で訪問者を見つめています。
スペイン出身の代表的なシュルレアリスト、サルバドール・ダリの展覧会「生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―」が横須賀美術館で2月8日から4月6日まで開催中。
今年はダリ生誕120周年、そしてシュルレアリスムの創始者アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」出版100周年の節目の年を祝うタイミングでもあるそうです。
関東で唯一の開催地となる横須賀美術館を取材しました!
第1章展示風景より
本展は、ダリのコレクションで名高い福島県の諸橋近代美術館から80点、ほか10館から関連作家の約40点を合わせた約120点を全国5館で巡回するものです。
第1章「若き天才のペルソナ」では、ダリの若い頃の作品や、継続して描いたモチーフを紹介します。
シュルレアリスムに開眼する前の初期の作品が並んでいて、いわゆるダリらしい、シュルレアリスムの作品を期待して来られた方は拍子抜けするかもしれません。
しかし、敬愛する母ファリパや最愛の妻ガラ、別荘地の海岸など、その後何度も作品に登場するダリの原風景をここで確認し、本人や作品への理解を深めることができます。
《ガラとロブスターの肖像》は、ダリを語る上で欠かせないパートナー、ガラの左向きの横顔を描いた油彩画です。
頭に赤いロブスターを載せ、鼻先に飛行機が飛ぶ風変わりな構図ですが、ダリは甲殻類に鎧のイメージを持っていたそうで、ロブスターは弱い者を守る象徴として描かれています。
ガラは広報活動など公私にわたってダリを支え、擁護者的な存在だったようです。
スペインの地図(展示パネル部分)
サルバドール・ダリは1904年スペインのフィゲラスで誕生しました。地図の北東、フランスとの国境近くにあるカタルーニャ地方にある小都市です。
父はフィゲラスの公証人で、町の有力者でした。ダリが幼少期を過ごした別荘があったカダケスや近くのポルト・リガトの海岸には変わった形をした奇岩があり、後の作品に何度も登場します。
第2章展示風景より
第2章「シュルレアリスムの新星」では、マックス・エルンストやジョアン・ミロなど、ダリと一緒に活動していた作家たちの作品が登場します。
マドリードの王立美術アカデミーで学び、問題行動で追放処分となった後、ダリはパリで詩人アンドレ・ブルトンを中心とするシュルレアリストたちのグループと接触します。
ブルトンのグループでは革新的な若手として歓迎され、頭角を現していきました。特に同郷だったミロはダリを高く評価し、画家になるのを反対する父親の説得までしたそうです。
展示はここからシュルレアリスムの世界に入っていきます。
第2章展示風景より
第3章展示風景より
ニューヨークの画廊主ジュリアン・レヴィの招きにより、ダリは1934年に初めて渡米しました。その後アメリカに拠点を移し、一躍時代の寵児となります。
飛躍的に知名度を上げたダリは、美術にとどまらず雑誌編集やデザイン、映画や舞台美術にまで活動の幅を広げていきました。
3章「進化と拡張の芸術家、ダリ」では、絵画や彫刻作品に加え、ジャンルの枠を超えてダリが取り組んだ、さまざまな作品をとおしてダリの多様な側面を紹介します。
背後から見た人間の頭のようなイメージが手前、中間、奥と3つ並んだ《ビキニの3つのスフィンクス》は、手前と奥の人の、頭髪に見える部分が核実験のきのこ雲になっている、ダリお得意のダブル・イメージの作品です。
ほかにも数多く作られた版画、そして写真家フィリップ・ハルスマンとの協働で撮影されたトリック写真も見どころです。
《ダリ・アトミクス》は室内で家具や水、ダリ本人、3匹の猫など全てが宙に浮いている、無重力を表した作品です。デジタルカメラがない時代、撮影は全て手作業で行われたため、この写真も完成まで26回撮り直したそうです。
26回も放り投げられた猫たちは気の毒でしたが、世界中で鑑賞される誉れを得ました。
第3章展示風景より 多数の版画作品にも注目
第3章 作品の紹介ビデオ上映
会場に向かう時に、年配のご婦人に美術館への道を聞かれました。「初めて来たものですから」と恐縮したようすでしたが、ダリ展を追いかけて三浦半島の端までやって来た人を見て、改めて天才ダリの人気を実感しました。
横須賀美術館の工藤香澄学芸員は「渡米以降の広告や映画など幅広い活動を見ることができるので、ダリファンの方にも、初めてダリ展を観る方にも楽しんでいただけると思います」と話します。
溶けた時計などのおなじみのイメージにとどまらず、周辺の人びとや幅広い活動をとおしてダリの全容が分かる本展。ダリ初心者にも、ダリ展リピーターにもおすすめです!