
テーマは『世界の終わり』。ホラー体験が楽しめる展覧会が7月開催!【六本木ミュージアム】
2025年6月19日
ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。/ホーユーヘアカラーミュージアム
ミュージアム外観
ドラッグストア等でおなじみ、ずらり並んだヘアカラー商品。かつては「ヘアカラー」というと白髪染めでしたが、いろんなカラーバリエーションを楽しむ人が増え、いまや女性の8割近くが髪を染めているそう。
今回訪れたのは、ヘアカラーに特化したホーユーヘアカラーミュージアム。
「ビゲン」「シエロ」「ビューティーラボ」などでおなじみ、ヘアカラー製品トップシェアのホーユー株式会社が、創立100周年記念の一環として2023年に名古屋に開館しました。徳川美術館が目の前という閑静なロケーションです。
常設展入口
さて「ヘアカラーのミュージアム」っていったいどんな展示なのでしょう。最初に入った2Fの常設展示室は、日本のヘアカラーの歴史が学べるエリアです。
展示風景 平安時代のヘアケア
いにしえの時代から「艶やかな黒髪」は若さと美しさの象徴。
奈良時代には中国伝来の艶出し髪油、平安時代の洗髪料や植物由来ヘアオイル。平安時代中頃の日本最古の医学書には、毛生え薬や白髪染めなどの処方が記されていたそうです。
日本人は「黒」の色みにこだわり、「漆黒」「墨染」「濡羽色」などと使い分けました。艶やかで青みがかった黒い髪を「烏の濡れ羽色」という誉め言葉もありますね。
展示風景 浮世絵に描かれた江戸時代の白髪染め「美玄香」
日本人の黒髪信仰は江戸時代も続きます。
町人文化が盛んになった元禄期、大衆にも化粧が広がりました。白髪を隠す「美玄香」は大ヒット。浮世絵にもその広告が描かれるほどでした。
展示風景 明治時代のヘアカラー剤
時は流れて明治維新。文明開化で西洋の製品が日本に入ってきました。「毛染め」も例外ではなく、化学染料の毛染剤が輸入され後に国産化されます。
さてパッケージに「白髪染め・赤毛染め」とありますが、赤毛って何でしょう?
実は日本人の髪には赤色の色素が多く含まれていて、髪が赤っぽく見えるのを避けるためにわざわざ真っ黒に染めていたそうです。
展示風景
日本人の髪色に対する価値観が大きく変わったのは戦後から。和装から洋装に移り、テレビなどのメディアもカラーでビジュアル化。白髪染めも真っ黒でなく、茶褐色や栗色など、より自然な色が求められるようになりました。
1985年の男女雇用機会均等法で女性の社会進出が加速すると、髪色もより軽く明るく変化して、いわゆる茶髪が流行。一気にヘアカラーブームとなります。
髪へのダメージが少ない商品も登場し、自己表現を安心して楽しめる時代になりました。
展示風景 ホーユー展示室
ヘアカラーの歴史を観た後は、「ホーユー展示室」を覗いてみましょう。ヘアカラーのトップメーカーとなったホーユーの、創業以来の歩みを観ることができます。
お侍の格好をしているのは、創業者の水野増二郎氏。大ヒットした新染毛剤「元禄」のネーミング「元禄侍」に扮しているのです。
大ヒット商品「元禄」
1921年発売、高品質で低価格の「しらが赤毛染め 元禄」は、大正・昭和・平成をまたぐロングセラー商品になりました。
ちなみに戦後大ヒットし、現在まで続くブランド「ビゲン」の由来は、「美人元禄」の略「美元=ビゲン」からなのだそう。
当時の看板
1923年、新会社「朋友商会」が設立されました。
会社や得意先との「朋友」関係をさらに強い絆にという思いが込められているそうです。「ホーユー」は「朋友」の意味だったんですね。
金箔が貼られた当時の立派な商品看板は、歴史と誇りが感じられます。
現在のヘアカラー商品展示風景
ホーユーの歴史は、ヘアカラーによる「髪が傷み」や「かぶれ」への心配を払しょくする安全性追求の歴史でもあったといいます。
現在、私たちが髪色を楽しめる陰には、表からは見えない地道な研究がありました。
展示風景 ヘアカラーの魅力体感エリア
ミュージアムで一番人気のエリアがこちら。さまざまなシミュレーターを使ってヘアカラーに関する体験ができます。
この体感エリアのためだけに来館する人もいるんだそう。
AIシミュレーター
ピアノの鍵盤を模した混色シミュレーターや、マイクロスコープを使ったスタッフによる毛髪観察などのアトラクションを体感できますが、特におもしろかったのが、いろいろな髪型や髪色を疑似体験できるAI画像シミュレーター。
カメラの前に立つと顔が撮影されて、普段できないような髪型や髪色を AIが6種類提示してくれます。ピンクの髪や、金髪カールの自分が映されてビックリ!あなたもチャレンジしてみてください。
企画展「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」
企画展「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」も開催中です。
人はなぜ髪を染めるのか。ヘアカラーの種類、どんな仕組みで染まるのかなど、図表を交えてわかりやすく解説されています。
企画展展示風景
驚いたのはヘアカラーリング剤の市場規模。シャンプーよりヘアカラー剤の方が出荷金額が多いんですって。女性の染毛率は、白髪用の50~60歳代で8割。黒髪年代の10代後半の女性も、85%が何らかのカラーリングをしているそうです。
ミュージアムグッズ
ロビーでは、商品のパッケージデザインをあしらったTシャツやトートバッグなど、レトロユニークなミュージアムグッズも販売中。来館の記念にいかがでしょう。
「髪を染める」行為は、日本で千年もの歴史があることを知って驚きました。
歴史を学びつつヘアカラーを身近に体感できる楽しいミュージアムです。名古屋を訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてください。